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「すれ違った後で」第10話-二人(最終話)

こちらの画像はぱぱいあ日記(仮)】さとうかずみさんからお借りしました♪  
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―真夜中の星
 真夜中の星


「おい、何かあったのか?辛気臭い顔して。」
 
 迎えに来てた男が弘夢に問いかけるが、今は何も話す気になれない。じっと窓の外を見つめてなるべく頭の中身を空にする。
 
 しばらく走っていると、1通のメールが届いた。淳平からだった。あいつは優しいから、フォローでも送ってくれたのだろう。もう、二度と会えないのに、辛すぎる。
 メールを見ないで消去してしまおうかと思った。でも指が動かない。
 携帯を閉じたまま家に着いた。あんな事を言って、俺の気持ちがあの時からずっとあった事が伝わって、今までの俺の態度とかが全てそういう気持ちの裏があっての事だと分かった筈なのに、淳平はまた会おうと最後に叫んでくれた。
 もうそれだけで十分だ。

 ベッドに腰掛けて、カチッと携帯を開ける。
 淳平からの最後の言葉・・これを見て最後にしよう。
 
 メールを開けてみた俺は、きっとさっき俺が見た淳平の凍りついた顔と同じ表情をしていたに違いない。



『弘夢へ

俺もお前に謝ることがあったんだ。
あの修学旅行の夜、疲れて先に寝ちまった俺は、
早朝に目が覚めて、隣に眠るお前にキスをした。
俺も黙っていてごめんな。』


「ぉ・・・ぉ・・」
 さっき、もう二度と会わないと決めて別れてきたんだ。

「うううぅ・・・ううぉぁ・・」

 同じ想いを抱えていた。それが分かった瞬間だった。

 押さえられない声と共に哀咽した。次から次へと溢れ出て雨の様に膝や床に降り注ぐ。
 嗚咽する声は、心の奥底から淳平の事をひたすら想い続けていた小さな自分が声を出して泣いていた声だった。


―淳平!・・淳平!!淳平!!淳平!!



「あああーッ!!」

 俺は腰を折り、膝に顔を押し付けるようにして、口を両手で押さえながら声を上げて泣いた。


END


<<前へ      第二部へ>>



<あとがき>
最後までお読み頂きましてありがとうございましたm(_ _)m
引き続き、第二部の方へ続いて参ります。
続きをリクエストして下さった方々にお礼申し上げますm(_ _)m


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「すれ違った後で」第9話-二人

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―真夜中の星

真夜中の星

「おい、お前目が赤・・」
「あの修学旅行の時、俺、お前が寝た後にさ・・お前にキス・・したんだ。」

俺は・・いや、お前は俺の事を言っているのか?
いや、今お前は、お前が俺にキスをしたと、そう言ったんだ・・。
何でお前が俺にキスをしたんだ・・?
俺はお前が好きだったからキスをしたんだ。

もしかして・・お前もあの時から俺の事・・

俺は身体中が沸騰するような感覚に襲われたのと同時に、背筋に大きな氷柱が刺さるような感覚に襲われた。

もし・・もしそうだったとしたら・・俺は・・何てことを・・俺たちは・・

「あ・・あ・・悪い。あの、だから悪かったなあん時は・・ってお前は知らなかったんだろうが。とにかくそれだけ言いたかったんだ。」
「お・・おい。お前それ・・」
「急に変な事言って悪かった。じゃ、俺もう帰るから。」
 凄い速さでまくし立てて、俺の顔も見ず振り切るようにして家を出て行った。
 俺は慌ててそれを追いかける。
「弘夢!!待ってくれ!!」

―聞いてくれ弘夢!俺もあの時・・!

「おい!!弘夢!!俺の話を聞け!!」
 後から叫ぶが、弘夢は振り返らない。そのまま待たせてあったのか、知らない男の車に乗り込もうとする弘夢がいる。

―このまま行っちまう!せめて、せめてもう一度逢いたい!!

「またっ・・また会おう!!弘夢!!」
 
それしか言えなかった。
 弘夢は車のドアを開けるとゆっくりと振り返り、笑顔を向けてゆっくりと首を左右に振った。
そしてそのまま走り去って行ってしまった。

 涙がアスファルトに濃い染みを作っていく。俺は地面に膝を付き、涙を零して見送った。
 



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「すれ違った後で」第8話-淳平

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―真夜中の星
      真夜中の星


俺はいつでもお前を想って、お前を想像してイっている。自分の女房にですら、目を瞑り、時には明美の口を押さえて声を抑えるようにしてお前を想像しながら果てることもあった。
 お前の声を思い出したかったから。お前の喘ぐ声を想像したかったから。
 一人でする時には必ずあの写真を見て、あの時感じたお前の唇の感触を思い出して、お前の名を口に出して射精する。一瞬の幸福感。そしてその後の虚無感。

―今でもこんなに好きなのに・・どうして逢えないんだ。

 我慢が限界に達した。食事も取る気になれず随分と痩せた。
 
―息が出来ないんだ、弘夢。助けてくれ。逢いたいんだよ、お前に。頼む・・

 想いを込めてメールを打った。どうか、返事が来ますように。
 その日はとうとう返信は来なかった。もう、このまま一生逢えないのかと思った時、ふと頭の中の回路が狂った気がした。
 だが、次の日弘夢から返信が届いた。家に来てくれると分かった時は逢える喜びと安堵で布団に顔を押し付けて咽び泣いた。

 そしてとうとう約束の日に、玄関のチャイムが鳴った。
 急いでドアを開けると、そこには夢にまで見た愛おしい人の顔が覗いていた。思わず泣きそうになるのを堪えて笑顔で招き入れた。

 明美が食事の支度をしている間、俺は離れていた間を埋めるように弘夢を見つめた。
 相変わらず気を利かして土産を持って来たり、明美の手伝いをしようと席を立つ。俺の好きな拡は変わっていなかった。そして何だか益々色香が増したように見える。

 少しやつれた感じもする。その感じがまた影のある艶にもなっていてドキリとさせられる。
 これを機会に、また家へ来いと誘ってみる。どうしても逢いたかったから。更に、痩せた心配をしてみてもあまり反応を示さないので、週末にでも家に来いと誘うが明美に嗜まれてしまった。

 どうにか二人きりになりたかった俺は、あの写真を思い出し、今日渡してみようと思いついた。
 強引に部屋に連れて行き、写真を渡す。
「これ、ずっと渡しそびれてて・・。」
 するとお前は何故か震える手で写真を掴んだ。
 呼吸も震えている。

 その写真・・まずかったのか。何か怒っているのだろうか。でも顔色が真っ青だ。
 「おい・・弘夢、大丈夫か?どうした?」
 弘夢が突然震える呼吸で深呼吸をすると、一気にまくし立てるように話し始めた。
 
「俺さっ・・お前に謝んなきゃなんねー事があってさ・・」
 俺を見た弘夢の目は真っ赤で、今にも泣きそうな顔で笑いながら話していた。
「おい、お前目が赤・・」
「あの修学旅行の時、俺、お前が寝た後にさ・・お前にキス・・したんだ。」




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「すれ違った後で」第7話-淳平

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―真夜中の星
真夜中の星空

それからは俺を気遣ってか、弘夢は少し距離を置くようになった。
 それは、俺にとっても少し有難い事だったんだ。お前の側にいたら、あの女がお前に触れたんだという想像をして何をしでかすか分からなかったから。
 そしてお前はその後、その女を彼女だと俺に会わせてきた。俺はやっぱりな、という想いで笑顔を作り「よろしく」とその女に言った。
 弘夢には「よかったな」とお世辞を言ったんだが、あの時俺は普通の顔が出来ていたんだろうか。 

 俺は付き合っていた女とは別れて、また別の女と付き合った。そんな事が繰り返されたが、そんなのは弘夢とこれからも今まで通りに一緒にいられるカムフラージュにさえなれればどうでも良かった。
 実際、しばらくするとまたお前と元通りに仲良くなっていった。
 でも俺は、暴走しそうになる自分の気持を殺して押さえつけて日々を過ごした。
 
 お前は相変わらず俺と違って、一人の女とずっと付き合っているようだった。だから、俺もこれから先ずっととっかえひっかえするのであれば、いっそ一人に決めてしまった方が楽な上にお前も安心して俺の側に居てくれるんじゃないか。そう、思ったんだ。
 
 その頃丁度、学部の違う女と付き合っていたんだがその子がとても気立てが良く、家庭的で温かみがある子だった。気の利いたところや、笑い方がほんの少し弘夢に似ていたから、その子に決めた。
 俺は酷い奴だ。皆に嘘をついている。弘夢にも、その子にも、俺自身にも。
 苦しくて時々上手く息が出来なかった。それでも弘夢の顔を見る時は、酸素が吸えた時のように生き返った。

 そして俺は卒業する時にお前に伝えたんだ。
「俺、結婚する」
 お前は驚きからか、しばらくボーっとした顔をしてた。けど、そのうちボロボロと大粒の涙を流し出した。

「結婚して、嫁はいるけど俺にとってお前も同じかそれ以上大切な親友だ」

 お前は何だかぐらぐらと揺れて倒れ込んできたので、思わず抱きとめてしまった。
 華奢な身体だった。俺よりも頭一つ低い背のお前を初めてしっかりと抱きしめた。狂わしい程愛おしい。
 胸元でしきりに掻き消えるようなか細い声で、「オメデトウ、オメデトウ」と泣いていた。
 そんなに泣いて喜ばれると、胸が痛い。オメデトウと言われる度に胸に突き立てられるナイフの痛みを幾度も幾度も受けていた。
 俺は耳元で「ありがとう」と何度も弘夢の「オメデトウ」が消えるまで言った。そんな中、俺は弘夢を抱きしめていられるその時間を永遠にしたいと願っていた。
 
 だがお前は就職をすると完全に俺の前から姿を消した。
 忙しいのか、それともやっぱり迷惑だったのか。あんなに泣いて喜んでいたお前は殆ど連絡をくれなかった。
 俺はどうしたらいいか分からなくなった。俺から連絡をしていいものなのか、待った方がいいのか。嫌われたくなかった。お前にとって、俺は一体何だったんだろうか。

―逢いたい・・逢いたいよ弘夢・・




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「すれ違った後で」第6話-淳平

でも俺にとってはあの時が一番幸せだったように思う。
 高校に入ると皆彼女を作る事に躍起になっていた。その流れに乗ってか、女子の方からも告白めいたものを何度かされたが、俺には付き合う気なんてサラサラ無かった。それよりも、弘夢を見て可愛いなどと妙にスキンシップを図ってくる奴らに神経を尖らせていたんだ。
 弘夢は少し中性的な外見だったから変に男にも人気があったのを知っている。実際、俺が一番仲がいいと知って相談にも乗らされた事もあった。だが、俺は尽く無理だから諦めるように説得したんだ。
 かといって、女子にも何人か告白されてたようだったが、それについてはその結果を聞くのがいつも怖かった。

 でも、ある日クラスの奴らに俺たちがデキてるんじゃないかと茶化された時に、見る見る弘夢の顔が赤く染まって目が少し潤んだように見えて俺はそいつらに怒った。
 弘夢はとうとう涙を流した。恥じをかかされた弘夢を労しいと思ったのもあるが、正直、悲しみとショックの方が大きかった。分かっていても、それだけ俺との仲を勘違いされて泣き顔を見せられたら・・やっぱり望みは無いのだと暗い穴の下底にまで叩きつけられたようだった。

―ごめんな、弘夢。迷惑・・だったよな。お前は優しいから・・。俺に付き合ってただけだったんだよな。

 そのあと少し経ってから、たまたま買い物に出た俺は街でお前を見かけたんだ。見た事のない女と、その友達カップル二人と歩くお前を。
 いつの間に彼女なんて作っていたんだろうか。何で俺に言わなかったんだろうか。つい、4人の後をつけるような真似をしてしまった。

―俺はバカだったんだ。明らかにダブルデートだって分かってるのに後なんてつけるから・・見なくてもいいものを見るハメになったんだ。

 弘夢はたまに女の肩に手を掛けたりして仲の良さそうな雰囲気を醸し出していた。それすら腸が煮えくり返りそうだった。だから4人は2組ずつに分かれてそのままホテルに入って行ったのを見た時は、もう限界だった。その場をすぐに走り去って、そのまま休日の学校のグラウンドを何周も何周も、身体が疲れきって頭が働かなくなるまで走った。
 
 それからしばらく経って、俺はたまたま告白してきた女と付き合う事にした。




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「すれ違った後で」第5話-淳平

今俺の隣で一生懸命授業のノートを取っているこいつは、桜井弘夢(さくらい・ひろむ)。
 いつも真面目に講義を受けているその横顔をたまにちらりと覗き見るのが俺は好きだった。
 自分では色白で線が細くて嫌だと言っていたが、ふとした時にすぐ顔を赤らめるお前が可愛くて、わざと持ってる消しゴムを隠して近づいて貸してもらったり・・。
 クリッとした瞳と、笑うと少し見える八重歯が可愛くて。俺はいつも隣に座ってお前の細くて白い指先がペンで一生懸命文字を書く様子を横目で見ていたんだ。

―でも、お前は知らない。俺が昔、お前が寝てる時にそっとキスをした事を。

 中学2年の時の修学旅行で、夜中まで騒ぎ立てていた他の奴らはあっという間に寝ちまって、俺は嬉しくてたまらなかった。二人きりでお泊りしているような気分で。
 弘夢と近づいたツーショットが欲しい、そんな想いでノリに見せかけて寝転がって撮った写真は今でも宝物だ。
 出来上がった写真のお前の顔があんまり色っぽくて可愛くて、何だか恋人同士の写真みたいだった。だから、俺の下心が丸見えのようなその写真は何となく渡せられないでいた。
 俺はずっと布団の中で弘夢の顔を見ながら話していたのに、前日に興奮しすぎて寝不足だったらしく、いつの間にか寝てしまった。
 ふと目が覚めて、しまったと後悔したが、隣で早朝の光が仄かに写したお前の寝顔は、まるで天使のようだった。

―まつ毛・・長いなぁ。

 そっと近づいて上から覗くともう、我慢が出来なくなった。そっと頬にキスをしてみた。マシュマロみたいにフワリとして気持ちが良かった。それでも起きないのを確認すると、ドキドキしながらぷっくりとした唇に口付けをした。頬よりもふわぁと柔らかい弘夢の唇はこの上なく気持ちがよく、何より幸福感で一杯になった。

 俺は親友という立場を利用して中学から大学まで一緒の場所を選んできた。
 初めて会った時から気が合って、俺を一番理解してくれた。一緒に居ると楽で穏やかな気持ちになれた。とても気が利いて思いやりがある優しい奴。
 たまに見せる嬉しそうな笑顔は、そこらの女よりずっと可愛くて俺をドキドキさせた。野球部の試合後に差し入れを持ってきてくれた時のお前はきっと太陽の熱で暑かったのだろう。頬を桜色に染めて俺を見る度に、俺の胸を締め付けた。

―なぁ、弘夢。俺がどれほどお前の事を好きか・・知らなかったんだろうなぁ。

 

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「すれ違った後で」第4話-弘夢

玄関のドアが開かれると、一瞬泣きそうな表情を見たような気がしたが直ぐに満面の笑みに変わって愛おしいお前が歓迎してくれた。

「弘夢!!久しぶりだな!よく来たなっ。さぁ、入れよ!」

―ああ・・。本物の、淳平だ。淳平の顔、声、肌、笑顔・・。見れただけで泣きそうだ。

 少し痩せただろうか。頬に影が見える。仕事が忙しいんだろう。家庭を持つ一人前の男としての風格が少し出て前よりも男っぽく少し色気も出てきてドキドキする。
 
 小柄で可愛らしい奥さんは家庭的なようで、せっせと料理を運んでくる。手伝おうとすると久しぶりなんだから、と言って気を利かせてくれた。俺は、土産のワインを渡すと久しぶりに食べる家庭料理の味に、素直に美味しいと所感を述べた。

 持って来たワインを二人で空けると少し酔いが回る。
「お前、ちゃんと飯食ってんのか?痩せただろ?顔色も悪いし。たまにでもいいから家に来て飯でも食ってけよ?」
「あ、ああ。」

―それは、ないよ淳平。今日が、最後なんだから。

「忙しいなら週末でも・・」
「あなた!そんなに無理強いしたらダメよ!弘夢さんだって忙しいんだから。」

―アナタ・・・ねぇ。

 ドクドクドク・・。
 まだ限界までもう少し我慢できる。だからあと少しだけ一緒に居させてくれ。俺の傷。

「な、ちょっと書斎に一緒に来てくれないか?渡したいもんがあるんだ。」
「え・・」
 強引に部屋に連れて行かれると淳平が何やら引き出しから一枚の写真を持って来た。

 いきなりのシンとした部屋に二人きりになって鼓動が速くなる。
「これ、ずっと渡しそびれてて・・。」
 そう言って淳平が渡してきた一枚の写真には、あの中学の修学旅行の時のものだった。
 二人で皆が寝た後に、こっそり寝転がりながら頭を寄せ合って写真を撮った。その時のものだった。

 その頃の気持ちがドンッと内側の壁を蹴ってきた。ヒビだらけの心の壁からは11年間の想いがその隙間から噴出してくる。
 写真を受け取る手が震える。写真がカタカタ手の振るえを露にすると淳平が心配そうに問いかけてきた。
「おい・・弘夢、大丈夫か?どうした?」
 震える呼吸で深呼吸をすると、一気に喋った。
「俺さっ・・お前に謝んなきゃなんねー事があってさ・・」
「おい、お前目が赤・・」
「あの修学旅行の時、俺、お前が寝た後にさ・・お前にキス・・したんだ。」

―ずっと好きだった、いや。今もずっと好きなんだ。好きなんだよ、淳平お前が!!

 顔を上げると、そこに凍りついた表情の淳平がいた。

「あ・・あ・・悪い。あの、だから悪かったなあん時は・・ってお前は知らなかったんだろうが。とにかくそれだけ言いたかったんだ。」
「お・・おい。お前それ・・」
「急に変な事言って悪かった。じゃ、俺もう帰るから。」
 振り切るようにして玄関まで急ぐとリビングにいる奥さんに簡単な挨拶をして家を出た。

「おい!!弘夢!!俺の話を聞け!!」
 後から叫ぶ淳平に俺は振り返らない。そのまま待たせてあった男の車に乗り込もうとすると淳平が間に合わないと思ったのか、叫んだ。

「またっ・・また会おう!!弘夢!!」

 俺は車のドアを開けるとゆっくりと淳平に振り返り、笑顔を向けてゆっくりと首を左右に振った。そしてそのまま走り去った。




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「すれ違った後で」第3話-弘夢

「弘夢、俺、結婚するんだ。」

 耳鳴りがした。

―よく聞こえないよ、淳平。耳がキーンてうるさくて・・。

「結婚、するんだ」

 まるで水中からお前の口の動きを読んでるみたいだった。視界が水に揺れて、ボーっとお前の声がして。
 正直、あの時の事はあまり覚えていないんだ。覚えているのはお前の腕の温かさと、耳元で何度も言われた「ありがとう」という声だけ。
 俺はお前に抱きしめられたんだよな。最初で最後の熱い抱擁だった。
 俺はただ、お前のがっしりとした力強い腕がその瞬間だけは自分だけのものである幸福感を味わっていたんだ。全ての恐ろしい事を忘れて。
 だから死ぬほど辛くて、凄く幸せな思い出。

 あの日、お前を失った。
 こんなにも唐突に起きるなんて思わなかった。もう、一番は俺じゃなくなってしまった。
 心はずっと喪神していた。だが俺は就職先で仕事に没我する事で自分を保っていた。 
 俺は銀行に、お前は商社に勤め営業マンになった。お互い、就職してからは連絡は殆ど取っていなかった。

 心に負った傷口からは、就職して1年経った今でも尚、未だ深紅の血を流している。
 いくら他の男に抱かれてもお前を思い出して、お前の代わりにしか出来ないでいる。
 射精する時には無意識に必ずお前の名前を叫んでいる。それが原因で関係を持った男に殴られる事もあったが、無意識なんだ。仕方が無かった。
 イク瞬間はいつもたった一度、お前の寝てる隙に奪ったお前の唇の感触を思い出して、一瞬の幸福感を味わうんだ。空しい・・のかな。それとも悲しいのかな。いつも涙が溢れ出る。

 就職して一年、そろそろ仕事のノウハウが何となく分かってきた頃、それまで無かった淳平からのメールが届いた。
『久々に飯でも食おう。家に招待するから来いよ。』って。
 メールで淳平の名前を見ただけで、信じられない思いと嬉しさで鼓動が早くなる。
 逢える・・のか?

―逢いたい・・逢いたい逢いたい

 でも会わないのがベストなのは分かっている。淳平は既に家庭持ちで新居に俺を招待している。今でもこんなにも色鮮やかな淳平への想いを胸にそんな場所に行く事は、後に掛かる自分への副作用と後遺症がはっきりと想像できる。

 そして、俺は今、淳平の新居の前にいた。
 例え血の滴る傷口に杭を打たれても、焦げ痕を残されても俺は、淳平に会いたかった。
 淳平の顔が見たかったんだ・・・。

 きっと、これが最後になるから。



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「すれ違った後で」第2話-弘夢

―淳平。あの時、お前が付き合ってるって噂を聞いた時、俺は金槌で頭を殴られたような感じがしたんだぞ?


「なぁ、弘夢!淳平の奴すげーよな!あんな綺麗な子と付き合ってさ!あの子の友達紹介してもらえるように頼んでくんねぇ?」
「え・・・なに・・?」
 きっと頭が理解する事を拒否したんだと思う。相手の言葉は耳に入って頭で反復しているのに、納得ができない。

 一緒に帰る帰路で、俺は意を決して聞いた。
「な・・ぁ、淳平・・さ。付き合ってる子・・いるの?今日山野たちがそう言ってて・・」
 心臓の揺れで声が一緒に震える。手の先がヒンヤリと冷たく感じた。
「・・ああ。彼女、出来たんだ。言うの遅くなってゴメン。」
 金槌で横から誰かに殴られたのかと思った。こんなにショックだったとは思わなかった。
俺との仲を勘違いされた事がそんなに嫌だったんだろうか。

 それから俺はしばらく距離を置いた。不自然にならない程度に距離を置いた。
 何故なら目を見て話す度に、その目であの女を見つめたのかとか、腕を見る度にその腕に抱いたのかとか、そういう負の念しか渦巻いてこないから。

 俺はその頃にはもう自分が男しか愛せないのだと気付いていた。だから、サイトで出逢ったレズの子と擬似恋人をする約束をした。
 初めはその子とはチャットで出逢って、自分はレズだが素性を隠したいから嘘の恋人役をして欲しいと頼まれて何度か外でも会った。
 実際、ダブルデートの相手役までしてホテルに入った事もあるがそれもお芝居。俺達は相手のカップルがエレベータに乗るのを見送ると、サッサと先にホテルを出て帰った。
 だが、今回からは長期的な契約みたいなものを交わした。
 
 後に淳平にも紹介したが、答えは案の定、笑顔で優しく挨拶をして「よろしく、良かったな」と言われてまたショックを受けた。

「お互い・・辛いね。」
 その子がボソッと言った。その子も似たような境遇だったからだ。
「本当・・。」
「でもさっ。結婚してる訳じゃないんだし、まだ誰のものになった訳じゃないじゃん!」

―俺はバカだったんだろうなぁ。その言葉に「そりゃあそうだ」って納得して結構楽になれて・・。でもそのお陰でまた少し前みたいに淳平と近づけるようになったんだ。たかが彼女なんて別れちまえばそれっきり。長年親友の俺の方が断然有利だって。

 俺は、淳平と出来れば恋人同士になりたかったが、それは先ずありえないと判断したのでとにかく誰のものにもしたくないという想いだけが強まっていった。切実な祈りのような想いだけを日々隠し持ちながら。

 淳平は実際、その女とは半年程で別れてまた別の奴と付き合いだしていた。
 俺はそうやってしばらくの間自分に猶予のようなものを与えられた気がして、淳平と今まで通りに付き合っていったんだ。それで今は十分だった。先の事なんてまだ考える余地はなかったから。


 でもお前は大学卒業する時に、言ったんだ。最も辛辣な言葉を俺に、言ったんだ。



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「すれ違った後で」第1話-弘夢

 今隣で一緒に授業を受けているこいつは、岩波淳平(いわなみ・じゅんぺい)。
 俺はこいつの隣に座ってるだけで全神経がこいつに集中しちまう。カリカリと授業の内容をメモする音や何気なくつく溜息に耳をそばだてる。
 ノートを見ているフリをして視界を少し右側に向けて、淳平のペンを持つ血管の浮き出る手を見る。

―お前は知らない。俺が昔、お前が寝てる時にそっとキスをした事を。

 中学2年の時の修学旅行で、夜中まで騒ぎ疲れた俺達の周りはあっという間に寝入ってしまった。そんな中、俺とお前は隣同士の布団で夜遅くまでヒソヒソと話してたけど、お前はそのうち寝ちまった。
 そっと身体を揺すっても起きなかったから、指先でお前の唇を触ってみたんだ。あんまり柔らかいからびっくりして・・。そしてドキドキしながらキスをした。

 中学の時からずっと親友で高校も、大学まで一緒の場所を選んできた。
 いつも大らかで明るくて、俺を一番理解してくれて・・。
 すごく気が合って男らしくて、野球部に入っていた高校の時はその日焼けした肌にキラキラと流れる汗を見てドキドキした。

―なぁ、淳平。俺がどれほどお前の事を好きか・・分からないんだろうなぁ。

「なぁ、弘夢。消しゴム貸してくんね?」
 スッと上半身を近づけてコッソリと話しかけられる。
「あ、ああ。ほらよ。」
「さんきゅー。」
 
―俺自身にはコントロール出来ない心臓を、お前はたった一言で早くしたり遅くしたりも出来るんだ。全く・・。

 弘夢が初めて淳平に出会ったのは中学1年の時だ。
 初めて同じクラスになって、初めて話をするとすぐに気が合った。
 思えば中学時代が一番幸せだった。お互いくんず解れず常に一緒に居ても、誰にも干渉されず、女といるよりも男同士でバカやってる方がずっと楽しいというスタイルが通じていた。

 だが高校に入ると皆女に対して異常に興味を持ち、我先にと彼女を作り出した。
 もちろん、ガタイも良く優しく、そして男前の淳平はモテていた。
 俺は淳平が告白を受ける度に、その後の結果を受験の合格発表の時よりも緊張して聞いていた。
 淳平は告白をいつになっても断っていた。俺は内心とても嬉しかったし、安堵していたんだ。
 淳平がどうして彼女を作らないかなんて、理由は聞かなかった。そんなのは別にどうでも良かったんだ。面倒くさい、とぽつりと呟いたその言葉を信じていたかったかもしれない。

 でも、ある時周りの奴らが茶化してきたんだ。お前らいつも二人で居て、彼女もいないしデキてんじゃねーかって。
 俺は正直嬉しかった。そう言われて、そう見られて一瞬淳平と恋人同士の雰囲気を味わったようで少し恥ずかしくてドキッとした。
 そんな一瞬の些細な擬似恋愛を感じた俺はバカだったんだ。本当は怒れば良かったんだ。
 そっと淳平の顔を見上げると、顔を赤くして今までに見たことのない様な怒ったような困ったような顔をしてそいつらを睨みつけていた。

―そうだよな。普通は喜ぶんじゃなくて怒るところ・・だよな。

 俺は目が潤んできた。
 涙は俺の意思とは関係なく流れ落ちてきた。周りの奴らが焦って謝ってきたので涙の訳をそいつらのせいにした。

 それからしばらく経って、淳平はモデルのような綺麗な子と付き合いだした。




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05:08 | すれ違った後で | comments (7) | trackbacks (0) | edit | page top↑
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