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アネモネ 13最終話

 アネモネの花は相変わらずいつも綺麗な状態でいられるように、雅人がこまめに購入してきていた。
 あれから随分と抱かれるようになったが、雅人が新しく買ってくるアネモネを見る度に思い知らされるような気分になった。
 ――儚い期待や夢を持ってはいけないよ
そう言われているような気がした。
 
 透はふと雅人があの花をどこで手に入れているのか気になって、学校帰りに家の近くの花屋を探してみた。
 花屋なんてあったかな、と人通りの多い方へ向かってみると、意外にも駅のすぐ側にあった。
 気にしないで通っていると、気付かないものだ。小ぶりだが店の外にまで綺麗に花を置いているのを見ると、相当な種類を扱っているようだった。
 すると中から見知った顔が出て来てドキリとした。丁度雅人が新しい花を買って出てきたところだった。遠くから見てもスラリと背が高く落ち付いて色気のある面持ちが見て取れる。
 きっと外にいる沢山の人が雅人に見惚れているに違いないと思うだけで、嫉妬心がざわついた。
 雅人の姿が見えなくなるのを確認すると、透は自分も花屋へと足を踏み入れた。
 
「いらっしゃいませ」
 若い女性店員の綺麗な声がして透は少し笑顔を向けて会釈をすると、店員はほんのりと頬を赤らめた。
 店内を見渡すと、沢山の花々がスゥッとした甘い香りと青々とした香りを放っていた。
 その中で、透は毎日見るアネモネに視線を縫いとめた。
 そこにはいつも見る赤いアネモネの他に、白や紫や青やピンクなど様々に取りそろえられていて透は驚いた。
 
「お客様もアネモネにご興味がおありなのですか?」
 自然とそう聞かれてつい「はい」と返事をしてしまった。
「今日はアネモネが人気です」
 店員は何か嬉しそうに表情を明るませながらそう言った。
「さっき出て言った人も、この花買ってましたよね」
 透は何となく自分から雅人の行動について第三者に振った。

「あ、見てらしたんですね! あの方はここ最近いつも赤いアネモネを買って下さるんです」
「そうですか」
 透の少し寂しげな表情に気付かない店員は頬を赤くして話を続けた。
「アネモネの花言葉って知ってます?」
「はい……はかない恋とか……そういう感じですよね」
 透は気分が沈む。

「ええ。まぁそうなんですけど、アネモネは色によって言葉が違うんですよ」

「え?」

「赤のアネモネは、“君を愛す”なんです」

――君を愛す。

 どういう事だろうか、と今までの透の考えが少し狂い始める。

「あの……彼はその花言葉を知っているんですか」
「ええ。私がそれを言ったら、あの方赤いアネモネだけを買うようになったので、私つい聞いてしまったんですよね。どなたにですか?って」
 透は店員の思わぬ話の展開に心臓は高鳴る事も忘れて、店員の言葉を聞きたくない、と脳だけが拒否していた。

「そしたら彼、弟にです、って言ったんですよ。ご兄弟想いなんですねぇ」
 店員は普通の仲の良い兄弟としか思っていないようで勘違いしながらうっとりと話していた。
 だが透の心臓は体内で眩しい光を放ったように感じた。そして一つ、トクンとゆっくり鳴り響く。

(弟に……って、俺に? 何で……何でだ……)

 時間にすればほんの5,6秒だっただろう。だが透の時間では随分とゆっくり今までの雅人の言葉や行動を思い返していた。
 好きだと言われた事、兄ちゃんと呼んで欲しいと懇願していた事、それらが本当に自分に向けられた想いだった。
 確かに一番初めは武として抱かれたのは間違っていない。雅人自身も謝っていた事だ。
 だがここ最近、優しく抱かれていた日々は、全て憧れていた自分に向けていたものだったのだ。

(俺は、ちゃんと兄ちゃんに抱かれていたんだ……俺自身が……ちゃんと抱かれていた……)

 透は鼻の奥がツンとして涙が溢れそうになった時、店員が続けて話し出したので拳をギュッと握って堪えた。
「他にもアネモネの花言葉がありまして、こちらの色なんかは……」
 店員は得意気に色々と説明してくれた。一通り店員の説明を聞き終えた透は一つの花に向けて指を差した。

「じゃあ、これ下さい」



 いつもと変わらず夕食を済ませ、雅人と透はそれぞれ自分の部屋に入ってくつろいでいた。
 雅人は寝る前に水を飲もうとリビングへ行くと、テーブルには今日自分が買った赤いアネモネではなく、紫のアネモネが飾ってあった。

(透……か?)

 暫く立ちつくすようにその花を見ていたが、雅人はハッとしてネットでその意味を調べる為に踵を返して部屋へ戻った。
 店員がアネモネには色によって意味があると言っていたのを思い出したのだ。だが、紫が何だったか忘れていた雅人は急いで色別の意味の載っているサイトを開いた。



――アネモネ。(紫)『あなたを信じて待つ』

 雅人は口元に手を当てた。

(――透!!)

 ガタッと勢いよく立ち上がると急いで透の部屋へ向かった。
 寝ているかどうかなど気遣う事も考えられていない雅人はガチャッと大きな音を立てて透の部屋のドアを開けた。

「早かったね。兄ちゃんっ」

 そう言って透はニッと悪戯っ子のような懐かしい笑みを向けた。

END


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最後までお付き合い下さいましてどうもありがとうございました!!
こういう形でのハピエになりました!!良かったです。
一時はどうなるかと…(汗)
本編はこれで完了ですが、スピンオフで二人のその後、
そして潤たちと4人でどこかへ行くのもいいな、なんて思ってます!
そしてこの最終話でちょうどランキングが最後です!
今まで沢山の応援を本当にどうもありがとうございました!!
そして記事ですが、日本でネット繋げたら雑記なんか書きつつ書き貯めしつつ…。
続きものを書かなくてはいけないものが山ほど溜まっているのでそちらも進めたいと思っています(笑)
長編のスピンオフとか(笑)まだ不幸のままの子もいますし(笑)
とにかく、一旦区切りという事で御礼申し上げます。
またこれからもどうぞ宜しくお願い致します♪♪

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アネモネ 12話

☆18禁です

 何度も柔らかく、それでいて弾力のある雅人の唇が角度を変えて透の唇を愛おし気に啄ばんでくる。
 優しく優しく、雅人は心を撫でるように透の頭を撫でてキスをした。
 雅人がそっと舌で透の唇を舐めると、透もそれに応えるように甘い舌を出してきた。
 雅人がそれを絡め取るのと、ゆっくりと透をベッドに押し倒すのは同時だった。
「好きだよ。透」
 雅人は直接透の体内に潜む、本当の透へその想いを届けるように透の口内から言葉を入れ込む。

(兄ちゃんは本当に優しい……)

 透は、雅人がこうして自分にも気遣ってから、武として抱くのではないかと少し嬉しさが込み上げてきた。

――これがもし本当に自分へ向けられている言葉だったら。

 最初に武として抱かれた時よりもずっと、初めて見た武と雅人のキスのようなこの優しい感覚に透は酔いしれた。
 そして傷を癒す獣のように雅人に全身を隈なく舐められて、透の身体も限界がきた。
 優しく時間を掛けて指を後孔に入れ込まれて解されるが、雅人の指が絶妙な動きをする度に悶える程の快感が透の内部を襲った。
 透は変に声を上げてはいけないと我慢するが、その堪える声と表情が不謹慎にも雅人を夢中にさせた。

「透……透……綺麗だよ。抱いてもいい?」
「いい……けど……俺、あっ……僕の名前呼ばないでっ」

「もう、武の代わりにならなくていいから。俺はお前を抱きたいんだ。お前が好きなんだよ、透」
 そう言って仰向けの透と視線を絡ませながら雅人に熱い塊を後孔に押し付けられると、「あっ」と小さく高い声を上げて、透の手が助けを求めるように雅人へ伸びた。
 その手を取った雅人が透の指を絡め取りベッドへ押しつけ、同時にペニスも力強く入れ込んだ。

「んああっ……あっあっ……んんっ」
 透の、その唇を噛みながら声を抑える姿が色っぽくて、雅人は全身が総毛立つくらいに興奮した。
 ゆっくりと腰を前後に動かし出すと、吸いつくような内部の感触に雅人の下半身は溶けてしまいそうになった。

「はあっ……透、気持ちいいよ……すげ……ハァ」

「まさ……とぉ」

「違う、兄ちゃんって呼べ!」

 つい力を入れて腰をぐっと奥へ入れ込むと、「ひああッ……ああんっ」と透は思わず叫び声を上げた。

「お願いだ……兄ちゃんって……言ってくれ……」

 雅人の胸は苦しくて縋るように真下にいる透の身体を背中から抱きかかえて再び腰をゆっくり動かした。



「兄ちゃんは……俺を抱く筈がないんだよ」



 耳元でそう言われた透の冷めた声に、雅人は涙を堪えた。
 雅人は自分が透をこうした事は分かっていた。無くした信頼を得るにはその何倍もの時間と努力が必要な事も分かっていた。

「透っ……透っ……俺を見て!」
 雅人は透を刺激するように、腰をうねらせながら透のペニスも同時に扱いた。

「あっあっ……雅人っ……だめっ! イっちゃうっ」

「好きだよ、透! ……兄ちゃんって言ってくれ! その言葉でイきたいッ」

 雅人はせり上がる射精前の陶酔するような快楽の中で必死に想いを伝えようとする。
 透の快感を逃がそうと絡めた指に入る力が心地良い。
 雅人の興奮が絶頂へ近づくが、透は決して自分を出す事も、“兄ちゃん”と呼ぶ事もなかった。
 雅人が自分の動かす腰の動きで前後に揺れる透に堪らなくなり、その硬く尖った乳首に吸いついた。

「やああっんっ」

(言えッ……兄ちゃんって呼べよッ)

 コリコリと甘噛みをしながら腰の動きと透のペニスを扱く手の動きを速める

「やっやっ……イクっ、出るっ……ま……さとぉぉっ」

「透―ッ!!」

 雅人は顔を透の胸元から離すと、グンと仰け反るようにして中にその液体を放った。
 それと同時に雅人の握った手の中でも透のトロっとした熱い液体が溢れてきた。


 自分で処理をすると言った透を無理矢理雅人が手伝った。
 時間を掛けて後処理を終えて自分の部屋に帰って寝ようとする透を、雅人はやはり無理矢理自分の部屋に連れ込み抱きかかえて眠った。



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次回最終回です!
ランキング、20日になった時点で抜けますので
実質19日までという事でした(>_<)スミマセン~~っ
なので、丁度抜けると同時に最終回です!
なのにポイント反映が今メチャメチャ狂っているんですよね^^;
でもあと二日応援して下さると嬉しいです!宜しくお願い致しますm(_ _)m

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アネモネ 11話

(兄ちゃん、ここのところ毎日花を飾ってる……。花なんて趣味あったのか)

 リビングに飾られた深紅の花は、花びらが大きくその色を鮮やかに彩っていた。
 モノトーンでスタイリッシュな部屋にはその生きた赤が異質でお洒落で透は好きだった。

(何て花だろう……綺麗だな。……武さんが、好きだった花なのかな……)

 透は、雅人が自分を武の代わりにしている事への罪滅ぼしで武に花を生けているんじゃないかと思いながら花の水を取り替えてやった。
 透は夕ご飯を作り終え、雅人がシャワーから出て来るのを待ちながらそんな事をしていた。
 
「お、悪いな」
 後ろから冷蔵庫を開けながら水を取り替える透に話しかけると、透は振り向いた。
 雅人はその流される艶っぽい目線に身体が熱くなるのを感じて視線を逸らしドアからも手を離すと、冷蔵庫特有の密着度の高い閉まる音がする。
「兄ちゃん。これ、何て言う花?」
「ん? それはアネモネの花だよ」
 冷蔵庫からビールを取ってプシュッと音を立てた。

(アネモネ……)

 素敵な響きの花だと思った。だが、毎日飾る理由は何だか怖くて聞けなかった。
 
 寝る前、透は何となくインターネットでアネモネを検索した。アネモネは直ぐに沢山出てきた。
 そこには花言葉も載っていた。
 透の目に飛び込んできたのは、「期待」「はかない夢」「薄れゆく希望」「はかない恋」といった羅列の花言葉だった。
 雅人は自分が武になる事を期待しているのだろうか。それははかない夢だとでもいうのか。それとも透の恋心が儚い恋だと、薄れゆく希望だと諭しているのだろうか。
 
(兄ちゃん……優しいから。きっと直接言えなくて花で伝えているんだろうな)

 透は花言葉が徐々にぼやけていくのを見ていると、そのままそこから熱い雫が頬を伝って流れ落ちた。
 透自身もそんな事は分かっていた。だが自分で選んだ道であり、雅人を好きな以上こうする他道がないように思えた。
 あれから一切触れて来ない雅人に日に日に不安を募らせる透だったが、幻滅でもされたのではと恐ろしさに身ぶるいした。
 
 透は毎日花の水を取り替え、花瓶を洗って世話をした。花が萎れてしまうと決まって雅人が新しいアネモネを買って来た。
 透の憂鬱な想いも胸に詰め込み過ぎて息が切れそうになってきた。

(武さん……どうして逝っちゃったんだよ……兄ちゃんをこんなに苦しめてさ。俺、もうどうしたらいいか分かんないよ)



 そして透は夜雅人の部屋の電気が暗くなると、その部屋に忍び込んだ。
 透はウトウトと寝始めの雅人の布団を剥ぐと、その上に跨った。
「透!? お前何してんだ!」
 驚いた雅人が透の腕を掴むと、直接肌の感触が伝わってドキリとした。腕から肩へ、そして胸元へ暗い中で手を這わせると、途中ツンと尖ったものに当たった。
「は……ん」
 透の女よりも艶っぽい声が出て雅人の身体に熱い衝撃が走った。そしてゆっくり身体を触って透が全裸だと知った。

 昔の透ならば積極的にねだり、自分にも色々としてきただろう。だが透は決して自分からは誘わなかった。
「ちょっ……待て、何のつもりだッ」
 焦った雅人はブラインドを急いで上げると、街灯の光が部屋に明るさを届けて透の妖艶な裸体が美しく浮かび上がった。
「っ……!」
 今まで何度も見てきた透の裸体にも関わらず、一段と美しく色っぽく見える。雅人は息を飲んでそれに魅入ってしまっていた。
 その悲しげで憂いを含んだ表情でさえ、透自身も気付かない別の魅力を引き出させていた。
「明かり、ないほうがいいよ」
 透はそう呟いて街灯の光を避けるように顔を窓から背けた。

 雅人は身体を起こし、透の頬に手を添わせると顔を真正面に向けた。
「透……好きだよ」
 そう言って雅人は透の唇を塞いだ。
「名前、間違ってるよ」
 唇を少し離して透が言うと、「合ってるよ」と言って雅人が再び透の唇を塞いだ。



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雅人の想いよ、通じろ(>ω<)!

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アネモネ 10話

☆一部18禁

 そして雅人は無意識に透を身体を強く引き寄せていた。改めて透の身体を腕の中に感じると、温かくてしなやかで気持ちが良かった。
「兄ちゃん……そんなに嬉しいの? 俺がご飯作るのが」
「違う。いや、嬉しいけど、これは別だ」
 雅人が更にギュッと力を入れて抱きしめると、透がそっと雅人の背中に手を回した。

「したいの?」
 透のその言葉に、雅人は息を飲んで身体をゆっくり離した。頭一つ低い位置で、綺麗な透の顔は優しくも何かを無くした瞳の色をした透が優しく微笑んでいた。
「いいよ。これからは兄ちゃんがしたかったら、いつでも俺を武さんの代わりに抱けばいい」
「お前……何言って……」
 透は来ていたシャツのボタンをゆっくりと外し出した。
「俺、やっぱり兄ちゃんの事、心底好きみたいなんだよね。諦めようと思ったんだけど、無理みたいだからさ、こうして役に立てるだけでいいから……出来ることなら他の人じゃなくて、武さんの代わりに抱くのは俺にして欲しい……なんて我儘かな。ごめん」
 ボタンを外し艶やかな肩をスルリと出す透の手首を雅人は、制するように掴んだ。そしてもう一度強く抱きしめる。

「兄ちゃん?」
「そんな事、言うな。あの時酷い事して悪かった。本当にすまない、透。俺……どうかしてたんだ」
 雅人は顔を透の首元に掛るサラサラの髪に埋め、絞り出すような声で謝った。
 透は雅人の広い背中に手を回して優しく抱きしめ返した。
「もう、いいから。大丈夫だから……だから……しよ?」
 雅人が欲情したのかと思った透は自分から誘う。その方が雅人にも気兼ねなく抱いて貰えると思った。
 雅人は何て言えばいいのかが分からずにじっとその一色だけ抜け落ちてしまったような透の瞳の色を見つめた。
 ここで抱かないと言えば透は拒否されたと思ってきっと傷つく。だが抱いたとしてもきっと武の代わりだと思って傷つく。
 雅人は一旦シャワーを浴びてくると言って間を取った。きっとその間に透は色々と準備しているだろう。
 シャワーから出た雅人はスウェットに白いシャツを羽織っただけの姿で出てきた。濡れた髪から夜露のような雫が落ちて、開けた胸元へと流れ落ちる。

「兄ちゃん……」
 透の白くてしなやかな手が雅人の肩に置かれると、雅人は透の身体をダイニングテーブルの上へ押し倒した。
「じっとしていて」
 雅人は透のジーンズを脱がせると、既に下着は履かれていなかった。
 まだ眠っているかのように柔らかな透のペニスを雅人は口に含んだ。
「ああっ……そんな事っ……俺……僕がっ」
 わざと口調を武に似せようとしているところに、雅人は複雑な想いが過る。
 あっという間に大きく硬くなった透のものを扱きながら亀頭を強めに吸ってやると、透の腰が浮いた。

「ひあっ……雅人ぉ」
 余程強く印象に残っていたのか、口調も言い方も武に良く似ていて一瞬胸が痛くなる。
「透、雅人って呼ぶな。兄ちゃんでいい」
「ど……して? 兄ちゃんは、俺を抱かないよ。今兄ちゃんがしてるのは、武さんだよ」
 雅人は頭がクラッとした。
「違う! 俺が今してるのはお前だ、透!」
 雅人が強く言うと、ふっと優しい笑みを向けて透が言った。
「そうだね……ありがとう」

(信じてない……)

 雅人は血の気が失せていった。もしかしたら自分は取り返しのつかないものを失ったかもしれないと雅人の心臓が低いドラム音を鳴らした。

「止めよう。飯にしよう」

 スッと手を引いた雅人に縋るように不安気に透は上半身を起こした。
 透は今の言い方が武に似ていなかったのが、雅人の気を冷めさせてしまったんじゃないかと心配になった。
 だが雅人は怒っている風でもなく、穏やかで優しい表情をしていた。

 それから雅人は殆ど透に触れなくなった。だが今までと別段変った訳ではなく、至って普通の生活の中で傍から見ればそれはまるで普通の兄弟のように接していた。
 透自身は勿論雅人に抱かれたいし触れられたかった。だが、武なら自分からはいかない気がして動かなかった。
 透はいつの間にか、武に託された想いを何か別の事とすり替えてしまっていた。武という人物になりきり、それを利用して触れられる事に喜ぶ小さな本当に自分が胸の奥底にいた。
 透はそれを卑しいと感じていた。



 雅人は武と透を重ねて見ていないという事を分かって貰うために少し距離を空ける事にした。
 日常ではいつもと変わらない風だったが、透が自然と武に似せようとするのに胸が痛んだ。だが、ふとした瞬間に出る透自身のドジな部分や色っぽい仕草を見付ける度に胸をギュッと掴まれる感じがした。
 気がつけばいつも透の事ばかりを考え、何回透自身の笑顔が見られただのと数える自分に驚いていた。
 透は気付いていないが、雅人は落ち着いた面持ちの裏で、透の横に座るだけで少し緊張と胸の高鳴りを感じるようになっていた。
 「雅人」ではなく、「兄ちゃん」と呼ばれる事に思わず抱きしめたくなる程嬉しくなる。


(武……許してくれるか? 俺に好きな人が出来ても……)


 そして雅人はリビングにいつも赤いアネモネの花を花瓶に飾るようになった。



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お返事遅れてます。スミマセン(>_<)

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アネモネ 9話

 暫く身体の様子を見る為に、という理由で雅人は無理矢理透を自分の家に置いた。
 身体を診ると言って透の胸元を開け度にまだ色濃く残る無数の赤いキスマークに、雅人は透の胸の痛みを感じた。
 透は一度も痛いという言葉を発しなかった。
 心の中が痛すぎて身体の痛みなど感じていないかのように見えて、雅人は日に日に罪悪感で押し潰されそうになっていった。
 だが透は少しでも心配かけまいと敢えて言葉を発さなかったに過ぎなかった。確かに行為の最中は幸せと絶望と痛みを一度に味わってどうにかなってしまいそうだった。
 だが雅人の痛みを感じた透は、自分がどうこうよりも雅人の傷を癒して包み込んでやりたいとしか考えられなくなった。
 そして「愛してる」の言葉を聞いて悟った。決して武には叶わない、そして雅人は一生武だけを愛するのだと。

 
 身体もすっかり良くなった透は再び父と暮らす家から学校へ通い出した。
 部活も終わり帰宅しようと門を出ると、そこには雅人の押さえた赤色のアルファロメオが停まっていた。
 雅人に迎えに来たから乗れと助手席へ促された透は右側へ回った。

 ふと運転する雅人を横目に見ると、銀縁の潔癖そうな眼鏡を掛けて真面目なエリートにさえ見えた。透は少し可笑しい気持ちになって口角を上げた。
 雅人はそれほど目が悪い訳ではないが、運転する際や映画を観る際には掛けていた。
 心地よいエンジン音が響く中、雅人が口を開いた。
「透、うちに住めよ。父さん、相変わらず殆ど家にいないだろうし」
 そう言った雅人の言葉を透は素直に受け入れた。
 
 雅人が透に罪悪感を感じている事は透自身にも分かった。透はそれを拭い去りたいという気持ちもあって雅人の家に行く事にした。
 マンションに着いて、薄暗い駐車場に停めてエンジンを切ると、途端に不気味な程の静けさに包まれた。
 ふと雅人と視線がかち合った透はドキリとした。その無意識の心臓の反応に思わず苦い顔をする。
 もう諦められると思っていた矢先だった為少し動揺したが、いつもよりも少し多めに空気を吸い込んで、気のせいだと自分に言い聞かせた。

 そして二人の生活が始まった。
 
 雅人が朝起きると、既に朝食は用意され、あっという間に洗濯や掃除も手際よく行われていた。
 いつの間にこんなに大人になっていたのか、雅人は透の知らない一面を見たようで驚いていた。
 記憶の中にあるのは自分に頼るばかりのイメージだったが、雅人は日に日に色んな事を思い出すようになった。
 雅人が武を失ってから、身の周りの事は全て透がこなし、励まし、そして慰めてくれていた。
 今頃になってそんな事をポツリ、ポツリと思い出すなんてどうかしていると感じたが、一つ一つを思い出す度に胸が締め付けられていった。
 今までどれ程無意識に武の死に囚われて周りが見えなくなっていたかを思い知る。

 週末になるといつもと同じように早起きしてご飯を作る透に、雅人は慌てて飛び起きて駆け寄った。
「透! お前、週末は俺がやるから寝てろって言っただろう!」
 振り向いた透は一瞬雅人の頭に視線を上げると、クスッと笑い、そして声を出して少し笑った。
「兄ちゃん、髪型がアトムみたいになってるよ」

 雅人はその笑われた寝ぐせに手を当てるが、視線は透の笑顔に絡め取られていた。
 雅人は正直に透の笑顔を可愛いと感じ、そして笑ってくれた事が信じられない程嬉しかった。
 いつもどちらかというと妖艶な雰囲気で挑戦的に笑う透が、こんな風に笑うのは初めて見たかもしれなかった。
 雅人の心臓が途端にドクンッと跳ねた。

(何だ……?)

 どこかで感じた事のある感覚だった。
 それはもう二度と味わう事のないと思っていた感覚だった。



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アネモネ 8話

☆18禁です。一部ほんの少し痛い描写あります。

 透が「雅人」、と武の真似をして呼んでみると、唾液ごと唇を吸い尽くされた。
 ネットリと熱く、蕩けそうなキスを受けて透は頭が真っ白になる。
 キス一つでもこうまで違うのか、武はいつもこんなキスを雅人に受けていたのかと思うと、透の心は悲鳴を上げそうになった。
 雅人が今キスをしているのは自分ではなかった。武に、だ。そして透の体内ではち切れそうに膨張する雅人の肉棒を感じて身を捩った。
「武ッ……ふっ……武ッ」
 雅人が先程までよりも更に激しく腰を動かしてきた。
 さっきまでの透を気遣うような動きとは違う、完全に雅人自身も快楽を感じている動きだった。薄らと額に汗をかいて、透の上で切羽詰まったような表情が色っぽかった。

――そう、これだ。この顔が見たかったんだ。

 透は後孔の痛みを飛び越え、嫉妬も胸の傷も別の次元へ飛ばした。
 ただ胸に溢れたのはあまりに優しく穏やかな愛おしむ気持ちだけだった。

(もう、いい。十分だ。俺はきっとこの瞬間だけを愛して生きていく)

 今までで一番愛しく感じる雅人の熱い頬に手を伸ばして触る。

――俺、兄ちゃんの事……愛してるなぁ。
 
 透は「愛してる」と心の中で言うだけで涙が出てきた。

「武ッ……あっ、あっ、タケッ……ルっ…ああっ」
 片目を瞑りながら気持ちが良くて仕方のない様子の雅人は、まるで高校生のようだった。
「イきそうなの? イってもいいよ」
 透が優しく問いかける。
「中でッ……中に出してもいいか?」
 雅人は腰の激しい動きをそのままに、甘えたように透の首元に唇を寄せて懇願する。
「いいよ。雅人の、頂戴。一杯出して、僕の中に」
 透がそう言って雅人の頭を優しく抱えると、「うぅっ」と声を上げ、透を抱きしめるというよりもしがみつくようにしてメチャクチャに腰を打ちつけてきた。
 透の後孔の入り口は痺れて感覚がなかったが、内部では四肢で感じるのとは違う感覚ではっきりと、その熱くて乱暴な生き物の動きが感じ取れていた。


「愛してる」


 耳元で呟かれたその言葉はずっと前に聞いた、嘘みたいに優しく武に囁いていた言葉と同じ響きだった。
 それを聞くと、透の心は漆黒よりも暗く冷たいものに覆われていった。
 心の感覚は身体に響き、透の今まで反応していた下半身も元の小さな姿へと戻った。
 そして体内に雅人の過去を含んだ熱い液体が放たれた。


 全ての行為が終わった後、二人は放心状態になった。荒い息遣いだけが薄暗い部屋に響く。
 ムクリと起き上った雅人が、ハッとして泣きそうな顔で透の方を振り向いた。
「ごめ……」
 そして雅人が見たのは、紛れもなく自分がグチャグチャに心を傷つけた後の弟だった。

 無表情なのに口元だけに微笑みを残して、天井を見つめながら涙を止めどなく流す透を見て、雅人は背中から冷たい汗が流れ落ちたのが分かった。
 雅人は掌にじっとりと嫌な湿気が帯びてきた。

 透は確かに自分を好きだった。その気持ちは雅人が武を好きになった気持ちと同じものだという事を認めた時には、もう遅かった。
 たった今武と同じ微笑みをくれた透を、武の代わりに愛を囁き抱いた。
 透の内股からは少し血が流れて来ていた。初めての透に対して武にしたように抱いた事で、透の身体をも傷付けた。
 起き上ろうとする透に、慌てて洗面所に走りタオルやお湯、そして薬などを用意して手当てをした。
 
 そっと温かなタオルで身体を拭いていると、小さな声で「ありがとう」と聞こえて雅人の胸は締め付けられた。
 いつまでもただの弟だと思っていた。そんな透が自分の行き場のない想いごと受け入れてくれたのだ。そして雅人は我を失って溜め込んでいた想いを全て透にぶつけた。
 こんな事をした後で初めて透の愛の深さを痛い程感じる事が出来た。それは、漸く凍て付いた雅人の心が溶けて正常な感覚に戻ったから感じる事が出来たからかもしれなかった。

(ごめん……ごめん、透……ごめん)

 口に出せばその気持ちの重みが軽く伝わってしまいそうで、雅人は何度も何度も心の中で謝り続けた。



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こんな形ですが雅人の止まっていた時間が動き出しました。
そして数話程度と考えていたのですが、延びています…(汗)

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00:00 | アネモネ(東城兄弟) | comments (16) | trackbacks (0) | edit | page top↑

アネモネ 7話

☆18禁です

 ソファの下に組み敷かれた透は、肌触りの良い絨毯を直接肌に感じる。
 雅人はむきになった表情で透の服を剥いた。泣きながら恥ずかしがるような素振りを見せても容赦なく唇を塞ぎ、透の舌を蹂躙した。
 透が上手く息出来なくなると、雅人は唇を漸く離してそのまま首筋をきつく吸った。
「痛っ……あっ……ん」
 首筋がギュッと摘ままれたような痛みが走る。それは何度も左右や喉辺りにも行われた。
 真っ赤な烙印のように透の白い肌にはキスマークが幾つも付けられた。
 雅人は両手で透の乳首を捏ねまわし、きつく引っ張りながら顔はその更に下へと移動した。
 痛みは今の透には寧ろ心地よかった。いっそ、もっと酷くしてくれたら嫌いにでもなれるだろうかと考えてみる。

「やっ……もっと」
 その言葉に雅人は更に透の乳首を強く摘まみ上げた。
「ひっ……ああ!」
 そして同時に既に立ち上がった透のペニスを噛みつくように咥えた。透の一番敏感な亀頭を甘噛みしてやると、クンッと息を止めて仰け反った。
 雅人は慣れた手つきで指に唾液を絡ませると、それを透のアナルに這わせた。
 その現実的な近い未来を予想して透は少し臆病になる。雅人の意地の悪い表情とは裏腹に、その指の動きはとてもゆっくりで丁寧だった。
 そんなに痛みも感じる事なく、あっという間に射精させられた透の精液をアナルに塗ると、指を増やし、そして後ろを向かされた。

 途端に透は不安になった。されるなら、雅人の顔を見ながらが良かった。
 グッと物凄い大きな肉の塊が弄られていた場所に当てられると、透は自然と尻を突き出してしまう。
「ま、待って! 後ろからは……イヤだっ」
「後ろからの方が楽だから。少し我慢しろ」
 ググッと有り得ない大きさのものが侵入してくると、透は思わず何かに縋るように手を伸ばすが、空気を掴んだだけで何の意味もなさなかった。
「あっ…無理っ……入らない! 痛っ……いよぉ」
「お前が犯せって言ったんだろうが」
 透はハッとして理性を少し取り戻した。涙を拭って深呼吸をする。そしてグッと自分から尻を突きあげて雅人のペニスを少し飲み込んだ。

「んあッ」
「うッ……きっつ」
 誰も知らない透のその場所は抵抗するのを諦めたように自分から雅人のモノを自然と引き入れていった。
 そしてその大きさにも慣れた頃、漸くゆっくりと雅人が腰を振り出した。
「あっ……う……あっ」
 雅人が透の細い腰を掴み、透の身体が前後に揺れ出すと、セックスをしているという実感が湧いてきた。
 透はこんな形でも身体が繋がった喜びでボロボロと涙が零れおちた。
 雅人は暫く透の身体を気遣いながら機械的に腰を振っていたが、弟の喘ぎと泣き声を聞いた雅人は妙な気持ちになった。
 透を満足させてやればそれで全てが解決するように思っていたのが、その切ない叫び声と何かに必死に耐えるような姿に心が少し震えた。

 雅人はクルリと透の身体を仰向けにして顔を見た。

「あ……兄……ちゃん……」

 そう呟いて、汗ばんだ透は真綿のような笑顔を向けた。

 ドクンッと雅人の心臓は低い音を立てて動き出した。それはまるで今漸く動き出したような音だった。

「武……っ!」

 雅人の顔が歪んだ。
 雅人の体温が上昇するのが繋がった場所からも伝わってきた。雅人は貪るよう透の奥まで掻き分けて入り込もうと身体にしがみついた。
 唇も激しく塞ぎ何度も耳に「武」と心を打ち砕く名前を呼ぶ。
 それでも透は雅人の求める人の代わりになれたようで嬉しかった。

「まさ……と。……雅人」

 透は武がかつてそう呼んでいたように呼んでみた。



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アネモネ 6話

 雅人に拒絶されてから透は臆病になった。どこかで透の心に曇天のような諦めのような気持ちが覆いかぶさっていた。
 医者となった雅人は大きな病院よりも学校などの小さな場所で働く事を好んだ。
 それは武のような患者と触れ合う事を避ける様にも見えた。そして同時に学生だった武を探すようにも見えた。

 そんな時、透は久耶と出会った。始めは雅人と顔は似ているのに興味を持ち近づいたが、全く違う性格と面持ちをしていたのに惹かれた。
 性に関してオープンで緩い自分と正反対の久耶は、とても可愛くそして男らしく強く感じた。
 そんな久耶にどこか安心感を感じたのだろう。透が合宿中に悪ふざけをし過ぎて男たちに悪戯されて困っていると、誰よりも自分を真っ先に助けてくれた久耶にときめいた。
 久耶の性格に惹かれている筈なのに、同時に雅人の面影を久耶に追い求めてしまうのが嫌だった。
 そして本気で付き合おうと決意して告白までした。
 だが久耶には潤という可愛い弟がいた。
 結局想いは通じなかったが、二人の関係を見ているうちに自分も雅人を好きなら思い切りぶつかってみよう、そう思える勇気が持てた。

 そんな折、雅人のマンションのドアを開けようとすると中から若くて可愛い男が頬を赤らめながら出てきた。
 大学生くらいのその男の存在で、透の決意は不安定にグラリとバランスを崩して倒れてしまいそうになる。
 透は愛想笑いをする男を無視して、透は乱暴にドアを閉めて中に入った。

「何を怒っている」

(怒っている? 当たり前だ! あんな……あんな武さんに似ても似つかない人を連れこんで)

 そんな風に考えた自分に対してハッとした。悔しさで唇をグッと強く噛み締める。
「また連れこんでたの」
「お前はヤキモチ妬きだな」
 雅人は大人っぽい笑みを口元に作ってリビングの方へ歩いて行った。

(好きなんだ……妬いて当然だろう。バカ兄貴っ)

 雅人の後を睨みつけながら洗面所へ行くついでに雅人の部屋を覗くと、ベッドのシーツがぐちゃぐちゃにシワになり、布団も激しく折れて半分床へ落ちていた。
 何より、部屋に籠る汗の混じる生々しい匂いでさっきまで情事があった事を物語っていた。
 透はグッと胸に走る鈍痛に、歯を食いしばって耐えた。

「紅茶、入れたぞ」
 窓から差し込む夕日と同じ茜色の紅茶から視線をソファに座る雅人へ移動させる。
 ボタンが少し広く開いた白いシャツの中に見える雅人の鎖骨を見て、透はゴクリと唾を飲み込んだ。

(もう我慢、できないよ……)

 透はソファに座っている雅人に近づき、透は無言で雅人の膝の上に向かい合うように座った。
 透は雅人の顔の前でゆっくりと着ていたTシャツを脱ぐと白く滑らかな肌を雅人の前に晒した。雅人のネットリとした視線が透の身体を這っていく。
 透が雅人のシャツのボタンを外して、鎖骨に吸いつくと、雅人の色っぽい吐息が漏れて透を興奮させた。

「兄ちゃん、俺、振られちゃった……だから慰めてよ」
 つい口実を言ってしまうのは、また傷つくのが怖いからだ。無意識に防衛本能が働いているようだ。
 雅人はペロペロと鎖骨を舐める透の顎を持って上に上げる。
「抱いて欲しいって事か?」
 雅人は欲望の色を滾らせた鋭い視線を向けてくる。

(気を持たせるような事を言いやがって……ずるいよ)

「そう。久耶に振られたから、久耶に似ている兄ちゃんに抱かれたいんだよ」
 そう言って透は無理矢理自分の舌を雅人の舌に絡みつかせた。雅人は抵抗もせずにそれに応える。
「兄ちゃんがっ……いけないんだからねっ……んんっ」
「透。俺はお前とセックスはしないと言っただろう?」

 ズキンッ、と胸に長刀の切っ先が差し込まれたような痛みが走る。昔雅人に言葉で刺された場所からまた鮮血が流れ出す。

「うるさいッ……抱けよッ……犯せよッ」
「お前、タチだから……ここ、まだバージンなんだろう? だったら大切に……」
 雅人の指先がそっと透のアナルをボクサーパンツの上から触れる。

「兄ちゃんの事がずっと、ずっと好きだったから! してくれたら……多分諦められるから……だからお願い……もう、俺を解放して……」
 好きで仕方が無かった。こんなに苦しい想いをするなら、いっそ嘘でもいいから抱かれて解放されたら楽になれるような気がした。
「好きっ……今だけでいい。あの人の代わりでもいいからっ……抱いてっ」
 抱かれるなら、せめて自分を武の代わりに抱かれたかった。ただあの眼差しが見たかった。
 
(俺に見せてよ……あの優しい眼を。愛してるって言ってよ……嘘でもいいから)

 雅人は眉間にシワを寄せると、いつもの飄々と余裕のある表情を消して、少し怒るように乱暴に透を持ち上げ、床に押し倒した。
「あいつの話は、するな。そんなに犯して欲しいなら、してやるよ……後悔、しないな?」

 透は寂しい気持ちと切なさで涙が止まらなくなった。それでもコクッと頷いて雅人の首にしがみついた。



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アネモネ 5話

「一緒に看取ってくれてありがとな、透」
 雅人は帰宅してからそんな言葉を掛けた。
 大人な事を言っても、生気を失った雅人の顔を見れば、何も言葉を掛けられなかった。
 案の定、暫くの間雅人は殆ど口も開かず食事にも手を出さなかった。そんな中、根気強く透は生活のリズムを戻させようと世話を焼いた。

 食事も睡眠もろくに取らなくなったせいと、精神的なショックで雅人は熱を出し、風邪をこじらせた。
 このままでは雅人まで逝ってしまうような気がした透は祈るように看病をし、学校を休んで雅人に附き切りになった。
 朝になると、ボーっとした雅人の手を引きトイレに行かせ洗面所へ連れて顔を洗う様に促し、朝食を取らせて熱を測る。
 雅人は促されるままに、口では「ありがとう」や「ああ」と言った無意識の受け答えはするものの、精神と身体が追いつけないでいた。

 だが、そんな看病と学校の両立も出来る訳がなく、透もやがて風邪を引いて倒れてしまった。
 雅人は漸く我に返ったように倒れた透を抱きかかえて泣き出した。
「お前まで俺を置いて行くな……透……一人にしないで」
 まるで子供のように泣く雅人を熱を持った熱い手でその無精ひげの生えた整った顔を包み込んだ。
「俺は兄ちゃんを置いていかないってば」
 透の微笑みを見て、雅人は涙を乱暴に袖で拭った。

「待ってろ。今すぐ治してやるから」

 大分痩せた身体でも、軽く透を抱きかかえてベッドへ運んだ。それから雅人はキッチンに向かうと思い切り食べ物を胃の中に入れた。
 久々に大量の食事を取った身体は驚いたように受け付けず、吐き気が起こった。それでも気力を振り絞り、体力を付ける為に食べた。
 そして少しずつ勉強していた知識を使って適切に透の看病をした。お陰で透の風邪も悪化する事なく良くなった。
 顔色のよくなった透を見た雅人は、その日から再び医者になるべく勉強を始めた。
 
 それから変わった事と言えば、雅人は武と逢う前のような生活に戻ったという事だった。
 いつの間にか雅人の携帯には頻繁に電話やメールが掛って来るようになり、透はそれを見て心をざわつかせていた。
 それは昔と同じようにまた手当たり次第、雅人の心に出来た巨大な空洞を埋めたくて人肌や表面だけの愛の言葉に縋っているようだった。
 透にはそれが痛々しく感じた。
 武を助けたいという目的を失った雅人は、それでも地道に医者になるべく勉強は続けていた。
 ただ、武がいた時のようなあの優しい心からの笑顔は見られなくなった。

 透は悔しかった。
 自分にあの笑顔を向けられないのは何故なのか、考えた時にあまりに簡単な答えが浮かび上がった。
 雅人に武と同じ恋人として見て貰えばいい、そんな安易な答えを胸に、雅人の部屋へと飛び込んだ。

 透は勢いよく雅人に抱き付くと、無理矢理唇を塞いだ。
「んっふ……んっ……んっ」
 激しく攻め立てる透とは裏腹に、落ち付いた雅人はゆっくりと透の細い腰を抱きしめた。
「どうした、透。激しいな。溜まってるのか?」
 透はその雅人のクールな表情が憎たらしかった。
 あの時武に見せていた切羽詰まったような表情が見たかった。腕の中に相手を入れているのに、それでも足りなくて足りなくて必死になる雅人が見たかった。
「ねぇ、俺を抱いてよ!」
 その言葉に雅人はふっと窘(たしな)めるような笑みを浮かべて透の唇を吸った。
「んっ」

「俺はお前は抱かないよ、透」

 透は大地の亀裂に突き落とされたような感覚に陥った。

 ただ寂しさを埋めるだけに抱くような相手にも劣る存在なのだろうか。
 抱いて貰う以前の、ましてや恋人として見て貰う事以前の問題だった。透は自分という存在がどれだけ雅人にとって役に立たない矮小な存在かと実感した。
 透はその場に崩れ落ちると、雅人が優しく脇の下に腕を入れ込んで抱き上げてくれた。

「慰めてくれるつもりだったのか?」
 透はどうしたらいいのか全く分からなかった。
「兄ちゃん、武さんの事、忘れたの?」
 ふと何を思ったのか、口をついた透のその言葉に雅人の表情が凍りついたのが分かった。
「あいつの話しはするな」
 透は分からなかった。武をあれ程愛していたのに忘れようと他の人に縋る雅人が、どんどん寂しそうな顔をするのを敏感に感じ取っていた。

 他の人に触れる事で簡単に埋める事の出来ない愛が武との間にはあったはずだった。
 雅人もきっとそんな事は知っているが、それでも応急処置にもならない、下らない疑似恋愛のやりとりや簡単な身体の付き合いをしないと足場を失いそうだった。
 雅人は昔からそうやって寂しさを埋めてきた。そういう方法しか知らなかった。



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アネモネ 4話

 雅人がある日を境に急に勉強し出したのを、透はよく覚えていた。
 必死に何か繋ぎ留めるように苦しそうに勉強をしていた。
 武が病気だったのは分かったが、雅人は病院先まで勉強一色を持って出掛ける事が多々あった。

 武はただただ静かに雅人が真横で勉強している姿を愛おしそうに見ている事しか出来なかった。
 自分の為だけを思って一身にその若い勢いは芽を伸ばすべく勉強に精神力を注ぎ込んでいた。

 武にはそれが全て自分の命を早急に繋ぎ留める為だという事が分かって嬉しかった。
 武の横でウトウトと眠りこける雅人に、自分の羽織っていたカーディガンを掛けたり、覚えた単語や質問事項を出題する手助けをする事が何よりの幸せだった。

 だが一方で武は自分の容態が日に日に悪化する事を感じていた。
 それでも愛おしげに見つめる雅人の眼差しが、依然と何ら変わりない事に永遠の至福を貰えた気がした。


――もう、十分だ――。


 武は、たまに雅人について見舞いに来る弟の透の視線が、ただの弟としての視線ではない事は直ぐに分かった。
 まだ青い嫉妬心が剥き出しに突き刺さってきて、それだけにどこかで安心感のようなものすら芽生えた。


――透くんなら、雅人を愛してあげられる。


 そして一年も経たないうちに武の意識は遠くなり、目線も定かではなくなってきた。
 少し前までのはつらつとした武とは打って変わって、ボーっとして理解力も薄れてきた。
 それを悔しげに勉強する雅人の姿に、透は心打たれた。

 雅人は気が違いそうな程焦り、勉強すれど心配するあまりに付きそう時間も長くなり、食事も喉を殆ど通らなくなっていった。
 この時ほど雅人と透の距離が離れたことはなかった。

 この時は愛する雅人が少しでも気が休まるようにと必死に透もお弁当を作ったり家事を必死にこなしたりと躍起になっていた。
 


 そして事態は余りに急に変化した。武の容態が急に悪化したのだ。
 雅人の目の前で穏やかに試験の問題を出題していた武が苦しみだし、緊急治療室へと運ばれていった。
 そして数時間が経過し、医師が治療室から出てきた。

「ご家族の方は中へ――」

 雅人を迎えに来ていた透はその時の事を鮮明に覚えていた。

 顔面蒼白になった雅人はふらふらと、まだ病院へ辿り着かぬ両親よりも先に一人で部屋へ入っていた。
 視線が定まらなかろうが、自分をちゃんと感じていなかろうが、雅人は構わず前と同じように武に優しく口付けをして抱擁を交わした。
 武は骸骨のようにやせ細り、視線も別の何かを見据えているように空の一点だけを見つめていた。
 そんな武の少なくなった髪を、雅人は愛おしげに梳いていた。

「武……武……愛しているよ……すぐにまた良くなる。俺が治してやるから……もう少しだけ待ってて……もう少し頑張ってくれ……お願いだから……俺から離れないで……お願いだから……」

 雅人は無意識に涙を流して武の痩せこけた頬を撫で、窪んだ眼もとにキスをした。
 すると殆ど意識朦朧としていた武がふと生気の宿った視線を雅人に向けた。

「まさ……と……」

「武!?」

「雅人……愛して……る……」

 透はこの時の事を生涯忘れないだろう。

 言葉を失った雅人が急に離れて行く母親に縋るように何かを喚いて、武を繋ぎ留めるように抱き締めた場面と、抱き締められた武が自分に向かって“雅人を頼みます”というような目を向け、シワシワになってしまった手を自分に向かって伸ばしてきた情景を。

 透は咄嗟にその想いを受け止めるように武の手を取った。
 武の手は人形のように冷やりと冷たくて小さくて、そして力強かった。
 そして透は雅人の背後で、武の冷たく皺がれた手に無意識に優しい口付けをした。その時にふと最初に見たあの真綿のような笑顔を向けられて思い知らされた。

――叶わない

 と。

 そしてその日の朝方、真夜中から意識を失った武は静かに息を引き取った。



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死は遠いようですぐ傍にあるものだと思っています。
この先の兄弟を見守って頂けたらなと思っております。

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アネモネ 3話

☆一部18禁です 

 雅人が物心ついた頃に、母は病死した。
 父は祖母に頼んで家の事を何でもできるように雅人に教えて欲しいと、暫く祖母と一緒に住まわせた。物覚えの良い、器用な雅人は赤ん坊の透の面倒を見ながらも祖母と一緒に暮らし、生活のノウハウを学んでいった。
 大きくなって透も聞き分けのいい子に育ち、父親が居ない時でもきちんと面倒を見ながら家事もこなした。

 まだ幼い透はそれが当たり前のように受け入れ、そして寂しくなったら自分に甘えてきた。
 雅人は透が寂しくない様に常に人肌を感じられるように触れていた。雅人自身も、自分の中に感じる空洞がヒューヒューと風が抜けるような音を感じる度に透を抱きかかえてきた。

 透が大きく育ってくると、すぐに自立するようになった。
 雅人の中の空洞は再び風を受けると廃墟の間を吹き抜けるような音を奏で始めた。
 初めて透以外の人に触れた時は、自分の事を好きだと言ってくれた女の子を触った時でもあった。自分を好きだと言ってくれる事に少し満たされる何かを感じたのだった。

 他人を触れてみると、それはいとも簡単に泥で空洞を蓋をするように満たされたように感じた。だが、簡単な泥の蓋は吹き続ける風を受けてカラカラに乾き、バラバラと壊れてしまうのが難点だった。
 その度に雅人は自分に近寄る人を抱いて、触れて冷えた穴を埋めていった。

 そんな事をして日々を過ごしていると、クラス替えの時に初めて武と出会った。
 気が強くて芯がしっかりしていて、それでいて笑ってしまう程に人を浄化する力を持った人だった。
 雅人はやましい心で近づいても、癒されて安心する武の持つ橙色の温もりのようなものに触れる事が目的になっていった。
 不思議な人だと思った。母親にも似た大らかで包み込むような雰囲気に、いつしか虜になっていった。
 武の全てが愛おしくて欲しくて堪らなくなった。

 初めて放課後想いを伝えて抱き締めた時、雅人の胸が震えた。そして武も細い方を震わせていた。
 “愛している”。
 初めてそんな言葉が自然と呼吸をするように浮かび上がった。それを口に出すと、武は綺麗な瞳に涙を浮かべた。
 一生守っていきたい。雅人は心からそう思った。
 武の微笑み一つで、あの寂しい胸の渇きはオアシスに変わっていくのを感じた。

 初めて家に呼んだ時も、透がいるのであまり深く触れない様にしなくてはと思ったが、それも幾度も繰り返す度に我慢も限界に達した。

「ああっ……ダメったら……雅人っ……下には透くんがっ……やあっ」
 そう言って抵抗する武のしなやかな腰を抱えて熱い舌を後ろから首筋に這わせ、そして耳の中へと侵入させた。
「大丈夫だから」
 そっと囁いてベッド脇にあるオイルで指を濡らした。

「いやああっ……入れちゃっ……ダメぇっ」
 武とは既に何度も身体を繋げていた。その日も武のそこは既に帰ると言い出す前に弄って解してあった。
「もう、入るよ……ほらッ」
 グゥッと自分の大きく膨れたペニスの先を小さな武のアナルに押し込む。
「ああああんッ……!!」
 高い声が部屋に響いた。
 そこからはもう愛する人と快楽に溺れて夢中になった。

「愛してるよ、武。愛してる」
「雅人ぉ……雅人ぉっ」

 身体を繋げる度に心も身体も堪らなく温かな温もりと安心感に包まれて幸せになれた。
 そういう関係が、一生続くと信じていた。


 暫くすると、武は学校を休んだ。担任によると、風邪をこじらせたらしいという事だった。
 一日も早く逢いたいのに、二日経っても三日経っても武は学校へは来なかった。
 そわそわと落ち着かない気持ちで武の家に電話を入れても誰も出る気配がなかった。それでもしつこく夜まで電話を掛けていると、ガチャリと受話器を取る音が聞こえて心が晴れた。

「武!?」
 だが電話の声は女性の低く枯れた声だった。
「あの……どちらさま?」
「あ、すみません。同じクラスの東城と申しますが、武くんが風邪を引いたと聞いて……」
 女性は沈んだ声で話し出した。
「そうですか。わざわざすみませんね。武ね、ちょっと今入院してるのよ」
「え……」

 武は風邪とは違う明らかな酷い症状で倒れ検査をしていた。
 自分もお見舞いに行かせて欲しい、そう言った熱意が伝わって結果の出る日にお見舞いに行く事を許された。

 検査の結果は白血病の再発だった。
 武は昔小児白血病になった事があった。それも良くなり、高校生になる頃には雅人の知っているように、非常に元気に過ごせるようになってきていた矢先だった。
 確かに雅人の目から見ても身体の弱い所があったが、それでも元気に過ごしていた。
 まさか病気の再発だなんて夢にも思わなかった。

 そして武の闘病生活が始まった。武の若さはみるみる病原体を活発化させているようだった。
 日に日にやせ細り、目の下まで窪んで細くなった身体を隠すように、そして申し訳なさそうに両腕を抱き締める武を、雅人はそっと壊れない様に抱き締めた。
「愛してる。武。もう少しだけ頑張ってくれ。俺が医者になってお前を治してやるから。な?」
「雅人……待ってる」
 乾いた武の唇を雅人は唇を重ねて濡らしてやる。
 嬉しそうに微笑む武の顔は昔と変わらず、雅人を温かく包み込んでくれた。

 そして雅人は医者になろうと決意した。



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雅人にも辛い過去はありました。
今回は雅人視点でした。

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アネモネ 2話

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 その日はいつも夕方には帰るはずの武がなかなか帰る気配がしなかった。
 リビングで意識をテレビに集中させて気を紛らわしていても、透は心配でチラチラと二階を見ていた。
 テレビの音を少し小さくして廊下に出ると、何やら武が帰ると言っているところに雅人がしつこく引きとめているような会話が聞こえてきた。
 一歩ずつ階段を這う様にして音を立てずに二階へ上がっていくと、突然くぐもった声が聞こえてきた。

「ああっ……ダメったら……雅人っ……下には透くんがっ……やあっ」

「大丈夫だから」

 今までに聞いた事のない優しく囁くような雅人の声にドキリとした。
 そしてそんな切羽詰まった武の声はそのうち甘く短い喘ぎに変わっていった。
 
 透はドンドンと狂ったように胸の中で鳴る心臓を抱えながら、ゆっくりと音を立てないように銀色の冷たいドアノブを回した。
 ノブが最後まで回る頃には、掌が汗で濡れていた。
 そっと一ミリずつドアを開けていくと、中の声が突然ハッキリと聞こえてきた。

「いやああっ……入れちゃっ……ダメぇっ」

「もう、入るよ……ほらッ」

「ああああんッ……!!」

 武の高い声と同時に、透に激しい耳鳴りが襲って来た。狂気じみた心臓はドンドンと強過ぎる鼓動を打って胸を突き破って出て来てしまいそうだった。
 透は胸に走る刺し込むような痛みが、狂った心臓のせいなのかどうかは分からなかった。
 ただ痛くて痛くて息が出来なかった。

 目の前で優し過ぎるキスをしながら武を後ろから抱えて気持ち良さそうに腰を振る雅人がいた。

 そんな優しい目で見た相手は今まで一人もいなかった。

 そんな気持ち良さそうに相手を気遣いながら腰を振る雅人も見た事がなかった。

 ウソみたいに「愛してる」なんて言う言葉は雅人の口から聞いた事が、無かった。


 ヌルリと掌から滑って回ったドアノブはガチャッと金属音を立てたが、ギシギシと激しく鳴るベッドの軋みであっけなく消された。
 透は兄弟という細胞レベルで深く唯一無二の絆で結ばれていた事に溺れ過ぎていた事に気付いた。

 そして初めて夢中で人を愛する雅人に、もう一度痛い程恋をした。




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短めスミマセン。

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小悪魔番外編「アネモネ」1話

 「じっとしていてごらん」そう言われて透は雅人が近づいて来るのをじっと見ていた。
 次に、ふわりと唇に当たった柔らかい感触に感動した。

「どうだった?」
「すごく、柔らかくて、気持ちが良かった」
「もう一度してみる?」
「うん」

 そして雅人にキスの美味しさを教えて貰った。

 今にして思うと、透はこの時から雅人を意識するようになっていたような気がした。
 雅人のように格好良くモテて男にも女にも満足できる、そんな人になりたいなんて憧れをずっと抱いて真似ばかりしていた。
 父子家庭だった透の家は、その父も漁師の仕事をしていた為に、一度漁に出てしまうと何カ月も帰宅しない事が多々あった。

 雅人はしっかりしていて、透に家事を教え込み、二人で器用に暮らしていた。
 物心ついた頃には、透の中で既に雅人と二人暮らしが普通の状態となっていた。たまに父が帰宅して来る方が気を使ってしまう程に雅人との暮らしは居心地が良かった。
 だが、雅人の元来の性に開放的な性格はこの家庭環境を嬉々として利用していった。
 透も元々好きな方だったのか、少しずつ雅人のしている事を理解していき、そして興味を膨らませていった。

 好奇心旺盛な透は、コッソリと雅人がセックスする所を盗み見たりもしていた。
 雅人は昔から変な色気があって男女に事欠かいた事がなかった。
 思春期の男子には可笑しな敬慕の念があるものだ。透はいつも羨望の眼差しを雅人に注いでいた。

 男子の中でもズバ抜けてそういった知識を身につけ始めた透は学校でも一目置かれる存在になった。
 まだ経験のない幼い男子たちはそういった事に敏感で、いつの日か自分が雅人に向けるような眼差しと感情を向けられる事に快感を得ていった。

 そんな雅人に触れられる度に、透はどこか兄を独り占め出来ているような気になって心が浮き立つようになっていった。
 雅人は兄弟だからなのか、指や玩具で透を満足させる事はあっても、決して身体は繋げようとはしなかった。
 それは透にとっても暗黙の了解のようで、自分からは求める事はしなかった。
 そもそも八歳も年が離れている事もあって、身体を繋げる事が透の中でまだ現実味が持てなかったというのもあった。
 雅人が高校最後の年になる頃、変化は訪れた。
 雅人がパッタリと色んな人を家に連れこむ事が無くなったのだ。

 ある日の夜、透が雅人の膝の上に乗り向かい合わせで乳首を弄って貰っている時に何気なく聞いてみた。
「ねぇ、兄ちゃん、最近人をうちに呼ばなくなったね。どうして?……あんっ」
 雅人はふと見た事のない嬉しそうな顔をして信じられない言葉を言った。

「好きな人が出来たからね」

 透には意味が分からなかった。
 透は、今まで連れこんでセックスをしていた相手を、全て雅人の“好きな人”だと思い込んでいたからだ。
 動悸が激しくなり、弄られている部分が快感を失ってただくすぐったく不快に感じてきた。

「やだっ……!」

 ドンッと雅人の胸を跳ね退けて床に転げ落ちた。驚いた雅人が心配そうに近づくと、透は急いで這って逃げた。
 透は兄の今までの行動を変える程の“好きな人”の脅威に怯えた。
 思っていたよりもずっと独り占めしていたという気持ちが強かったようだ。
 数秒前まであまりに当たり前に近く感じていた雅人が、心配そうな顔で近づくにつれて遠く離れていくような感覚に陥った。
 雅人にとっての“好きな人”とは一体何なのだろうと、幾つもの眠れぬ夜を過ごした。

 そして暫くぶりに家に一人の青年が雅人に連れて来られた。
 青年は線の柔らかな美しい男の子だった。同級生の武(タケル)だと紹介された。
 その時の少しどこか気恥ずかしげな雅人の顔と、キリッとした聡明な眼差しの青年が見せた、あまりに柔らかな真綿のような笑顔が印象的だった。

 それから頻繁に何度も武を連れてくる雅人に、透は危機感のようなものが芽生え始めた。
 部屋で一体何をしているのか想像出来ても、見て確かめるのが怖かった。今まで見てきたものと同じ筈なのに、全く違う何かを見てしまいそうで恐ろしかった。



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もっと早くUPするはずがあー!
スミマセン(汗)こちらはお昼UPにしていこうかと思います。
そんなに長くはならない予定です!

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12:00 | アネモネ(東城兄弟) | comments (14) | trackbacks (0) | edit | page top↑