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貴方の狂気が、欲しい 64最終話

 それから半年経った。
 時枝は以前と同じ木戸の秘書として機敏に仕事をこなしていた。
 昔よりまっとうに新規事業を立ち上げ順調にホテルやマンション経営を回していた。

「木戸様。一時間後に本村さんとの会食がございます」
「車か?」
「いえ、近いので歩きです」
 カチャリと銀縁の眼鏡を上げた。
「以前のようには参りませんから……経費もなるべく抑えないといけません」
 まるで真面目が取り柄の教師のような面持ちでそう言った。
 側にいる他の社員が真面目とは裏腹なその眼鏡の奥にある艶っぽい時枝の瞳に釘付けになるが、直ぐさま溜息をついた。
 上役の社員の中では、時枝が木戸のお気に入りか、それ以上の関係なのではないかという噂が広がっている。
 だがそれよりも確かな印が男女共に寄せ付けない。
「おい、着替えるから席を外してくれ」
 木戸が低い声で言った。
「あっ、はいっ! 失礼します!」
 若い社員は慌てて部屋を出て行った。そして木戸が企むような笑みを浮かべながら時枝に近づき、徐にその細い顎を上げて唇を吸った。
「木戸様……社内では……ん」
「いいだろう、少しくらい……今気分がいいんだ。見たかあの若い社員の落胆した顔」
 木戸は時枝の舌を絡め取った。
「んっ……っふ……ダメです……って」
「ああいう普通の男でさえお前に見惚れる。色気を出し過ぎだ」
「あ……んっ」
 木戸が深く舌を入れ込み時枝の腰を引き寄せた。
「でもこう出来るのは俺だけだ」
「あっ……もう……っ……いけませんッ」
 柔らかく逃げる時枝の口端から銀色の糸が垂れる。名残惜しそうな表情を浮かべながらも時計を気にする気真面目で変わらない時枝が、木戸は大好きだった。
「全く……ピアスをしたばかりでまだセックス出来ないんだからいいじゃねぇか」
「あとで口でして差しあげますから……もう用意して下さい。行きますよ」
「分かったよ。全く仕事には厳しい嫁だよ」
 二人は颯爽と会社を出ると、暖かい春風の舞う街中へ溶け込んだ。

  * * *

 広い東京の一角に、素朴な格好した青年が二人迷い込んでいた。
「おい、健太多分こっちだ!」
「東京……広過ぎてわかんね……」
 健太は春休みに友達と遊びに行く話しをしていた際、つい東京に行ってみようと提案した。
 若い健太の同級生は目を輝かせてそれに賛同した。
 元々健太も含め、田舎にいる同世代の子たちは皆東京に憧れを持っている。何がなかったとしても健太自身も東京に遊びに行きたいと思っていただろう。
 だが、今回は少しだけ、絶対にないと分かっていたが期待している事があった。
「どっかですれ違ったりしないかなぁ」
「そんなすぐ会えないだろ、芸能人には」
 健太の独り言に友人はそう答えた。
「うん……」
 曖昧な答えを口にしながら呆けた顔で高いビルの森を見上げた。
 ビルは四角いものだと思っていたが、美しい曲線や不思議な形をしたものもあって圧倒される。
 健太は上を見上げながらたどたどしく歩いていると、ドンと人にぶつかってしまった。
「いてっ……!」
 手に持っていた地図が地面に落ちた。
 随分と大柄な男にぶつかったようで衝撃があってよろけた。
「すいません」
 顔を上げると、ピシッとスーツの決まった出来る大人という印象の男がいた。
 とても普通では近づけそうにない怖い雰囲気だと思った。だがその顔を見て健太は止まった。
 田舎に居た時と雰囲気は大分違うが、その整った鋭い顔は知っていた。
「あ……っ!!」
 健太が声を出した瞬間、「落としましたよ」と地図を手渡された。
 聞き覚えのある透明な声の方を振り向くと、大分雰囲気の変わった美しい人が健太を真っ直ぐ見据えていた。
「あ……あ……っ……!!」
「気を付けて下さいね」
 溢れて零れそうになる言葉を纏められないでいる健太の頭に、美しい人はポンと優しく手を置いた。
「じゃあな」と大きな男も健太の肩に手を置いてた。とても熱く大きな手だった。
 左指に静かに光る指輪が見えた。
 大きな男が光沢のあるスーツを翻し、都会に似合う靴の音を響かせて歩くと、黒髪のよく似合う美しい男は寄りそうようにして並んだ。
 その左指にも同じプラチナ色に光る指輪があった。

「健太! 何やってんだよ? 何?! 今の芸能人!?」
 ただならぬ雰囲気に興奮した友人がチラチラと過ぎ去った男たちを見る。
「うん……名前……忘れたけど……大好きな人たち」
「はぁ? 好きなのに名前忘れたのかよ!」
 呆れる友人の声を聞きながら、健太は泣きそうな自分を堪えて遠くなった二人を見ていた。
「まぁいいや。行こうぜ」
 その友人の声に、健太は漸く反対に歩き出した。
 数歩歩いてから、後ろ髪を引かれる思いでもう一度だけ振り向くと、遠くで二人が微笑み合っているのが見えた。
 それを見て、健太は何だか無償に嬉しさが込み上げた。
「よし! 次、原宿行こうぜ!」
 そう叫ぶと、健太は勢いよく走りだした。
 急に元気になった健太を不思議な目で見ていた友人も、結局つられて一緒に走りだした。




END


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最終話までお読み下さいまして本当にありがとうございました。゚(。ノωヽ。)゚。
なかなかきちんと毎日UP出来ずにいた私をいつも励まし応援し、
そしてそれでも楽しみに読んで下さった皆様、本当に愛してますっっ
(*´-ω(    )チュゥ♪
いやぁ、長くなるとは思っていたんです。
でもこんなに長くなるとは思っていませんでした(笑)
途中どうなるかと思う程エライ事態になりましたが乗り越えてくれて良かったです!
最後は「すれ違ったあとで」「それから」の路線なのでそんな雰囲気で終わりましたv

今度はキュンキュンするのが書きたいなぁ、なんて思ってます(*´∀`*)
軽いエロにたくさんのキュンキュン…って考えていたんですが、
まぁ、無理です(笑)
私に軽いエロは無理です(笑)我慢できないものーっ
という事で少しまた構想を練り、書きだしたら再びUP致します♪
本当にありがとうございました(*´∇`*)

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00:00 | 貴方の狂気が、欲しい | comments (15) | trackbacks (0) | edit | page top↑

貴方の狂気が、欲しい 63話

「じんじんします」
 目を覚ました時枝は目の前で目を瞑っている木戸に呟いた。その声に木戸の睫毛がそっと上がった。
 木戸の唇がそっと時枝のおでこに触れる。
「少し経ったら楽になる」
 そう言って首の下に腕を入れ込まれると木戸の胸に引き寄せられた。身体中に木戸の体温を感じるとこの上ない安心感で溢れた。
「慶介さん」
「……ん?」
「愛してる」
「ん」
「……言ってくれないんですか」
 木戸は少し照れて黙っていたが、きちんと言わないとと腹を括った。
「俺も愛してるよ」
 少し声を押さえて言った事が返って甘く聞こえて時枝はドキドキした。
 恥ずかしさも手伝って、時枝は何だか可笑しくて木戸の胸の中でクスクス笑った。
「笑うな」
「だって……ふふふ……ふっ…あっ…んっん」
 笑う時枝の顔をグイと上げるとその可愛い唇を塞いだ。
 そんなふわふわと暖かく甘い日々を過ごした。

 時枝の髪が伸び、頭の根元の黒い部分が目立ってきたので漸く髪を切り黒く染めた。昔の時枝と同じにしたつもりだったが、昔よりずっと美しく見えた。
 銀色の時も綺麗だったが、黒髪は一層神秘的に見える。時枝の涼しげな目元を引き立てているようにも見えた。
 相変わらず時枝が台所に立つと、木戸が時枝を持ち上げてリビングへと戻した。まるで悪戯をする猫を無理矢理部屋へ戻すようだ。今となっては木戸の方が料理の腕が上がってしまったのだから仕方がない。
 掃除も頑張ってみようとするが、時枝にかかると一番効率よくしようと最新の機械に拘りだすので大変だった。
 取り敢えず木戸の床にはいつも小さな自動掃除機が走っている。
 それに、掃除をする時枝の姿がどうも木戸には色っぽく映るようで、すぐに掃除どころではなくなってしまう。
 そんな他愛ない生活をして暫く経つと、段々と刺青の入った部分も落ち着いてきた。

「そのまま見ていても綺麗だな」
「はい……ですが……あの、は、恥ずかしいです……」
 時枝はベッドの上で裸体になっていた。
 まだ大きく立ち上がっていない中心には美しいトライバルの刺青が刻まれている。
 棘の鎖のようなリングに、見た事のない幻想的な蝶や華が目立たないようにひっそりとそこに生息している。
「見ているだけで感じるのか? もう大きくなってきた」
 時枝は立ち上がってきたそこを手で隠す。
「香。自分で足を持って広げて見せてくれ」
 恥ずかしさで顔を桜色に染めながら、時枝は従順にベッドの上で足を広げ、膝裏を持って開いた。すると中心部分は目一杯大きく硬く膨らんだ。
「なるほど……そこに血液が溜まって熱くなると熱によって色が一層濃く浮かび上がるようになっている」
 薄く色づいていたリングはその色を鮮やかに発色させていた。どういう素材を使ったか分からないが、単調な赤や青だけでなく、時枝の肌色にあった様々な色を駆使されていた。
 それも、幾重も混ぜ合わせて作りだされたような黄色や桜色、緑や青などが見事に織り混ざっている。
「確かに……綺麗です……ありがとうございます。慶介さん」
 時枝はお礼を言うと、少し考え込むように俯いた。
「あの……やはり私も貴方に何か差し上げたい」
「俺にか? 別にいい」
 時枝は少しムキになった顔をして木戸に近づいた。
「いいえ。差しあげます。私だって、貴方を縛りたいし私のものだという証が欲しい」
 木戸は少し嬉しそうに口角を上げて時枝の頭に手を置いた。
「分かったよ。好きにすればいい」
 木戸は優しく微笑みながら時枝をベッドに押し倒した。
 木戸の吐息が耳に掛り、そのまま首に熱い舌が這うと、途端に時枝の胸の粒が硬く尖った。
 そこに木戸の舌先が絡みつき甘噛みをしてくる。
「はんっ……」
 吐息の混じる高い声が漏れて木戸を興奮させる。
「最近ダメだな……すぐに我慢が出来なくなる……」
 そう言って木戸はカチャカチャとベルトを外した。
 時枝が頭を持ち上げて見ると、既に赤く腫れあがった肉棒を掴んだ木戸が見えた。これからされる事を想像してゾクゾクと鳥肌が立つ。
 ローションを垂らされたそこに太く熱い肉棒が挿し込まれると、時枝はそこから溶けてしまいそうになった。
「あんっ…あんっ……熱……ぃっ」
 上から時枝の手首をベッドに押しつけ、木戸は大きく腰をうねらせる様にして動く。
 互いにギュッと指を絡め合う。
「今度……っ……指輪も買うか……」
「あっ…あんっ……はっ……ぃ」
「お前は俺のものだと沢山印を付けておきたい。誰にも取られないように。誰が見ても直ぐに諦められるように……俺の印だらけにしておかないと……!」
 木戸の腰が更に速さを増してベッドが激しく上下した。
「してっ……貴方の……印で一杯にしてぇっ」
 時枝の中心は木戸のピストンで激しく動き、刻まれたリングは一層色濃く浮かび上がっていた。
「ひっ……でちゃぅぅ……もっとゆっくりっ」
「ダメ……だ……もう出したい……っ」
「やっ……やあっ……!」
 時枝の唇を塞ぐと、木戸は波打つような動きで腰を打ち付け時枝の中に精液を飛ばした。時枝も木戸と自身の腹の間に白い液体を激しく撒き散らす。時枝は中の気持ち良さに浸るように射精した後も暫く下から腰を動かしていた。
 息を整えて終わると、時枝がそっと話かけた。
「ピアス」
「ん?」
「私が自分で貴方のそこにピアスしてもいいですか?」
「……それがしたいのか?」
「はい……貴方が弘夢くんにしているのを……ずっと羨ましく思っていたんです」
 時枝がちょっと眉をひそめて言うと、木戸が長い指を時枝の髪の間に入れ込んだ。
「そんな事思ってたのか。可愛いな……いいぞ、何しても……それに多分ピアスしてヤったらお前すぐイっちゃうんじゃないか? 気持ち良くて」
 本当はそれがしたくて言ったんじゃないか、と木戸がからかうと、時枝は不機嫌そうな顔して「違いますっ」と焦っていた。





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ラブいなぁ(*ノノ)キャ

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貴方の狂気が、欲しい 62話

若干痛そうなシーンも含まれていますので苦手な方は閲覧をご注意下さい。



「なっ……待って下さいっ……それはちょっと」
 さすがに少し怖がる時枝は逃げ腰になったが、後ろから木戸がしっかりと時枝の身体を固定して逃げられない。
「逃げるなよ」
 木戸はわざと甘い囁きのように優しく言うが、時枝の両腕を掴む力は痛い程だ。
「気持ち良くしてやるから」
 その隙にもサクラは手際よく用意をし下書きを始めようとしていた。それに合わせて木戸が後ろからまだ柔らかい時枝の肉棒を扱きだした。
「ぁ……ん……」
 初対面の若い子の目の前で痴態を晒すのが今更ながら妙に時枝の羞恥心を煽った。だがそれは余計にその中心に血液を集め、硬く育てるのを速めただけだった。
「こんなに綺麗な性器は初めて見ました」
 サクラが静かにそういうと、時枝は少し身を捩った。
「恥ずかしいのか? ちゃんと見せないとダメだ。ほら、足を広げろ」
 木戸の手により真っ直ぐに立ち上がった時枝の肉棒は、その先端から透明な液体が沁み出ていた。
 サクラはそんな事を気にもせず、冷たい指先で肉棒を掴むと素早く下書きを施した。
 その手つきには一点の下心もないように感じた。
 下書きだけでも相当な時間が掛るように思える細かいデザインは見事だった。慎重に描くというよりは予め描いてある絵の上をなぞるような素早さで、木戸も時枝も見入ってしまった。
「では、墨を入れていきます」
 サクラがそう言って取り出したのは針だった。
 医者が手術をするようにゴム手袋を装着し、直径十五センチはある針と清潔なタオルを持った。それを見て時枝は身を硬くした。
 段々と針が近づくと、時枝は無言で後ろにいる木戸にどんどん自分の身体を押しつけて逃げた。
「時枝」
「……」
「大丈夫だから」
「……」
「こっち、向いてろ」
 木戸は無理矢理時枝の顔を後ろに向けさせ、唇を塞いだ。
「んんっ」
 そして同時にツプリと何かが刺さった感触がし、途端に脳にまで突き抜けるような鋭い痛みが走った。
「んあああァァーッ……んんッ…んんーッ」
 叫ぶ時枝をあやすように、木戸は優しくて甘ったるいキスをくれた。
 漏れる悲痛な喘ぎに混ざってクチュクチュと淫靡な水音が響く。
 激しい痛みと優しいキスに、時枝は妙な興奮状態に陥り始めた。痛い程に、手を上げ、後ろにいる木戸の首に腕を回して縋るように唇をねだった。
「ぃ……いた…ぃぃ……んん」
 木戸に唇をつけながら言う。
 時枝は頬を赤らめ、うっすらと汗をかいていた。
「可愛いよ」
 そう言って木戸は時枝の乳首を爪で引っ掻いた。
「はぁっんっ」
 身体の中心には絶え間なく激痛が走っているのに、こうして木戸が与える快感はその都度敏感になっていった。
 今刻まれている痛みと色が、木戸からの愛の証だと考えると途端に愛おしい痛みに変わった。
 だが、時枝はふと視線を落としてしまった。
 長い針が性器に刺し込まれ、絶え間ない流血で真っ白なタオルに付いた痛々しい鮮血の赤がショッキングだった。
 身体で感じるのと、目で認識するのとでは衝撃が違うようで、時枝の性器はあっと言う間に硬さが失われていってしまった。
「ああっ! ダメです時枝さん!」
 焦るサクラに、木戸が「ローションをよこせ」と命令した。
 木戸はローションを指に絡ませると、それを時枝の蕾にヌルリと挿入した。
「やっ……こんな……所でっ」
 小さく抵抗する時枝を押さえつけながら、木戸は直ぐに時枝の内側に潜む快楽のボタンを探し当てた。そこを見つけられて、「んっ」と時枝は身体を震わせ、再び中心を硬く立たせた。
「良い子だ」
 木戸は時枝の白い首筋をキツく吸って真っ赤な花びらを付けた。そして指を三本に増やし、中へ入れ込んだ。
「あっあっ……ダメっ……です」
 我慢の出来ない時枝が腰を揺らすとサクラに「動かないで下さい」と注意された。
 再び始まった激痛だったが、それと比例するように木戸は容赦なく時枝の一番クる場所を掻き回し絶え間なく指で弾いた。
「痛いか? 時枝」
 時枝は涙を溜めた目でコクっと頷いた。
 時枝の鮮血の香りと時枝の涙目に煽られたのか、木戸の目は明らかに興奮していた。
「もっと欲しいだろう」
 木戸の指がどんどん奥へ入り、残る小指がすんなり入ったあとに親指がキツそうに入り口を広げてきた。
「あっ……う……そ……っ……ぜんぶ入っちゃ……っ」
 さすがのサクラも一瞬その光景に目を奪われたが、それは本当に一瞬で、また直ぐに針を刺して墨を垂らした。
 針の痛みは鋭い快感へと変わる。
 止まらない欲望に駆られた木戸の獣のような横顔が時枝の肩の辺りにあった。
 時枝はその横顔が舌舐めずりしたのを見た。
 途端に時枝の肉棒が激しくヒクついた。
 サクラがそれをしっかりと冷たい手で固定し、作業を続ける。
「もっ……と……っ」
 掠れる時枝の声が木戸の手を欲した。
「いいよ」
 木戸は大量のローションを手首まで垂らした。
 木戸の親指が強く入り口をこじ開け、掌がゆっくりと奥へ飲みこまれていく。
「あっ……ああっ……あ――……」
 ゆっくりと進んだ掌は見えなくなり、木戸の手首まですっかり飲みこんでいた。
 木戸は傷がつかない様にゆっくりと、快感だけを感じるように中で拳を作り回転させた。
「すご……っぃぃぃっ」
「たまんねぇよ……針で刺されながら俺の手まで飲みこんで……俺までイきそうだ」
 木戸が硬く尖った自分の肉棒を押しつける。
「凄い絡みついてきてる。でも後ろからだからあまり奥に入らないな。……また今度腕まで入れてやるよ」
「も……イ……くぅぅぅぅんんっっ!」
 そして時枝の先端から勢いよく白濁の液体が飛び出し、時枝自身の胸に飛び散った。
 射精した後も、木戸は時枝の中で半強制的に勃起状態を保つようにした。
 我慢出来なくなってはオルガズムに達す事を繰り返しているうちに、時枝は意識朦朧としだした。そんな矢先、 サクラが「終わりました」と告げると、時枝は疲労と解けた緊張で意識を手放した。




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狂気、貰えたようです(;・∀・)
苦手だった方すみません!

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貴方の狂気が、欲しい 61話

 由朗の会社はほぼ吸収されており、木戸は早々にそれを見越して新しく会社を立ち上げる為に動いていた。
 今となってはもう使い物にならなくなった由朗は、あれからずっと屋敷で療養している状態だ。
 時枝が顔を見せに行ってもあまり反応しなかったが、屋敷にいる女中の子供を見かけては「香」と呼んでいた。
 それだけで、時枝はやはり自分も少しは愛されていたんだと感じて切なくなった。
「また、会いに来ます」
 それだけ言って時枝と木戸は屋敷を離れた。

 人の本音や大きな感情に触れて来なかった時枝は、今漸く色んな人の本心が見えた気がした。
 時枝は正直に言えば、もっとこれからも話しをしてみたかったと思った。
 見慣れた道のりを車で飛ばす。運転も久し振りだが腕は鈍ってはいないようだ。
 自分の自宅という訳ではないが、木戸のマンションに帰って来るとホッとした。
「私は、私の知らない間に憎まれ、疎まれ、そして愛されて育ってきたのですね」
 久し振りに戻った木戸のマンションで、時枝は静かにそう言った。
 
「今は分かるだろ」
「……そうですね。貴方がその口で伝えて下されば」
 時枝の涼しげな瞳が木戸の唇を見た。
「言わないと分からないのか?」
 木戸の親指がスッと時枝の下唇を触る。
「肌で伝えて下さっても、構いません」
 時枝は艶っぽい目で木戸を見上げる。
 木戸は舌舐めずりをしながら時枝の口の中に親指を入れ込んだ。木戸の指に熱くヌルついたものが親指に絡みつく。
 木戸が目を細めて口角を上げると、時枝は唇を窄めて親指を吸ったままゆっくりとそれを前後に出し入れした。
「……上手だ」
 木戸はそう言って親指を抜いた。
「俺達はまた一から二人で新しくやっていく。新しい門出にお前にプレゼントをやろうと思う」
 突然の木戸の申し出に時枝は切れ長の瞳を丸くした。
「え……プレゼント? ……私にですか?」
「そうだ」
 時枝は驚きで言葉が出なかった。
「う、嬉しいです……が、私は何も買っておりませんし……どうしましょう……」
 口調は落ち着いているが、木戸には時枝がとても焦っているのが分かってそれがとても可愛く見えた。
「いや、別に何か買った訳じゃない。それにプレゼントというよりも……俺のエゴであり、命令だ」
 木戸がそう意味深な事を言うとどこかへ電話をした。
 暫く時間を潰していろと言われ、時枝は落ち着かないまま荷物をまとめたり掃除をしたりしていた。
 するとチャイムが鳴り、招き入れられたのは不思議な空気を纏った中性的な男だった。
 外見は十代にも見えるがその落ち着いた雰囲気は五十代程のものだ。日本的な顔立ちはとても理知的で無表情なところが時枝と少し似ている。
「ご無沙汰しております、木戸様。今回は時枝様ので宜しいでしょうか」
「ああ。頼むよ」
 木戸は彼をサクラと呼んでいた。
「桜……さん?」
「いや、ハンドルネームだ。ただのサクラなんだと」
「はい。私の事はサクラとお呼び下さい」
 どこで知り合ったのか、ただ仕事絡みでたまたま知り合ったこのサクラという男を自宅へ呼んだ木戸に、時枝は少なからずとも警戒した。
 そんな時枝を余所に、サクラはテキパキと何やら寝室で用意を始めた。
 ベッドにタオルを敷き、道具を揃えているのを見てもしやエステでもしてくれるのかと思った時枝は少し安心した。
「時枝様。こちらへどうぞ」
 呼ばれて木戸を見ると、目で行けと言われたので素直にベッドへ向かった。
「お召し物を脱いで下さい」
「はい?」
 急に服を脱げと言われて静かな殺気を出した時枝を、木戸が後ろからそっと服を脱がしにかかった。
「いいから。脱げって。大丈夫だから」
 納得いかないまま服を脱ぎベッドへ上がる。
「では下書きをして参りますので勃起して頂けますか」
 時枝の目が据わった。
「木戸さま。この方の骨を一、二本やっても宜しいでしょうか」
「待て待てっ。実はこのサクラは刺青師なんだ。それもあの伊風山イフウザンの孫なんだと!」
「え……しかし彼は後継者はいないと」
 伊風山はあまりに美しく描く刺青故に世界各地から依頼を受け、それが刺青ではなく別のアートであれば人間国宝になってもおかしくない程の芸術性を持っていた。
 彼に描いて貰う事が一種のステータスと言っても過言ではなかった。
 悪趣味な収集家は彼が亡くなった後、彼の描いた絵を集める為に絵の描かれた皮膚を採取する人もいた程だ。
 彼は職種が職種なだけに必然的に組織の相手をする間に色々な情報を得てしまい、巻き込まれて亡くなった。
 その事実は世間的には表沙汰になっていない。
 彼には息子も孫もいたが、敢えて後継者として育てはしなかったとされていた。だが事実は、やはりこの伝統をどうしても絶やしたくはなかったようだ。
 彼は孫にひっそりとその技術を叩き込んでいた。その孫がサクラだ。
「私は昔から爺さまの絵が好きでした。父は嫌がって逃げましたが、私は掘りたくて仕方が無かったのです。手が勝手にデザインするんです。人を見て、その人に合うものを勝手に頭の中でデザインする。掘らせて貰っている時が一番生を感じます」
 サクラの言葉は本心に聞こえた。そもそも嘘をついた事がないような印象すらある。
 あくまでも淡々と自分の好きな事を極める為だけに生きている目をしている。
「サクラの刺青は凄いぞ。じいさんのも見た事があるが、それはもう芸術の域だ。だがサクラのはもっと美しい。まるで生命を宿しているかのようなんだ。絵を刻まれた人は何倍にも美しさを引き出されるんだ」
「ですが、私は私の美しいと思った人にしか掘りません」
 サクラがサラリと我儘な事を言った。
「時枝はどうだ」
 木戸が聞く。
「はい。木戸様が以前より仰っていたより遥かに美しいと思いました。今までにない程やる気が出ております」
 時枝はそうまで言われては観念せざるを得なかった。
「分かりました。ではお任せします」
「ありがとうございます」
「あの……因みにどこに……どのようなものを?」
 ベッドの上でサクラに問う時枝の後ろに、木戸が抱き抱える様にして座ってきた。
「お前の大事な所にリングを描いて貰おうと思ってな。永久に外れないエンゲージリングだ」




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Σ(゚∀゚ノ)ノキャー

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貴方の狂気が、欲しい 60話

 久々に訪れた街は少し前と何も変わらず喧騒を作り出していた。
 二人は御用達にしていたお気に入りのブランド店へ入りスーツを買った。仕事がある訳でもないが、そのままのラフな格好で挨拶に行きたくない場所があったからだ。
 時枝は木戸のスーツ姿は久し振りに見た気がした。以前より引き締まったせいか、やけに男らしく見えて時枝は静かに胸を高鳴らせた。
 木戸はついでに下ろしっ放しだった前髪を整える。時枝も長くなった髪を一つにまとめた。
 そして二人は暁明シャオミンの元へ向かった。
 時枝の元気な姿を見た暁明シャオミンは涙を溜めて抱擁をしてきた。

「兄さん……とお呼びしても……」
「当たり前だ、香。嬉しいよ……こんな日が来るのをずっと待っていた……!」

 暁明シャオミンはあれからずっと父親に説得を続けていた。
 父の気持ちや母の気持ち、そして惨状を理解はしているが、生まれてきた時枝に罪はなく、それどころか如何に時枝が心に傷を負ったか、杉下に渡してどうなってしまったかを伝えた。
 懸命な暁明シャオミンの説得により、今後は時枝に一切手を出さないと約束する事が出来た。

「香を恨むのはお門違いだと言ったんだ」
「ありがとう……本当に何もかも」
「何を言ってるんだ! 私たちは兄弟なんだ! いっそここに一緒に住めばいい!」
 暁明シャオミンがそう言うと、側にいた愛人アイレンが少しだけ顔を曇らせた。
「いや。気持ちは嬉しいけど、私は木戸さまとまた一からやっていくつもりなんだ」
「……そうか。それなら仕方ない。またいつでも遊びに戻っておいで。いいね?」
 暁明シャオミンが寂しげな表情で時枝の頬を撫でる。
暁明シャオミン、時枝もいいが横に居る小さいのが妬くからよく面倒みてやれよ?」
「ちっ、違っ」
 慌てて赤くなった愛人アイレンの方を向いた暁明シャオミンは微笑みながら優しくキスをした。
「妬いてるこの子も可愛いでしょう?」
 人前でキスなどしない暁明シャオミンが可愛いとまで言った事に、愛人アイレンは更に顔を赤くして下を向いてしまった。
「で、だ。杉下はまだうちの病院にいて延命させてはいるが……どうする?」
 暁明シャオミンが時枝を見た。
「会わせて貰って……いいですか」
「おい」
 木戸が時枝の肩に手を置いた。
 だが時枝の顔は眉一つ動かずいつもの無表情のままだ。
「分かった。では病院へ案内しよう」
 時枝たちはその足で病院へと向かった。

 病院にしてはこ洒落た外観の建物は、多くの患者で賑わっていた。ここらでは有名な大きな病院にまさか警察沙汰の男を延命しているとは誰も思わない。
 杉下はその病院の奥にある個室にいた。
 身体中ガーゼが貼られているのは木戸が穴を空けた場所だ。未だ動けずにベッドの上で沢山の線に繋がれて生きていた。
 痩せてはいるが、ギラついた目で時枝を見つけると酸素マスクの下で涎を垂らして喜んだ。
「二人きりにして貰えないだろうか」
 時枝は静かに言った。その言葉に杉下は興奮して下卑た言葉を喚いている。
「大丈夫か?」
 木戸は杉下から目を逸らさないまま時枝に言った。
「はい。何かあれば呼びます……ドアの前に居て下さい」
「分かった」
 そう言って時枝は杉下と二人きりになった。
 容易に近づけば腕を食い千切りそうな表情をしている。血走った目は黒目が小さく、痩せこけた顔は蒼白で気味が悪い。以前見た美しさは失われていた。
 それでも、これが自分の父親だと認めざるを得ない屈辱に、時枝は拳を強く握った。

「なんだよぉ。また犯されたいってのかぁ? 早く上に乗れよぉ」
 杉下はベッドをキシキシと鳴らしながら下品に下半身を上下させている。
「貴方は……何がしたかったのですか?」
「はぁ?」
「何故……母さんを酷い目に遭わせたのですか」
 杉下は拍子抜けしたように小さな黒目を天井に向けた。
「あー……。分かんね。気が付いたら物でも人でも、何でも壊したい衝動に駆られてたからな。頭がどっかおかしいんだろ。壊した時しか快感が得られねぇんだ。だからあの女も壊した。あれは良かったぜぇ。あ、お前も良かったけどよ。へへ…へへ……」
 狂人特有の不気味な笑いを浮かべた後、杉下は急にげんなりとした表情に変わった。
「でもよぉ……。お前の男にたーっくさん穴空けられちまって……動かねぇんだわ。身体も。俺の大事な所まで撃ったんだぜ? アイツ。お前、あんなのと付き合ってたらきっと殺されるぜェ?」
「構いません。彼になら」
 時枝は涼しい表情で言ったが本心だった。
「へぇ……お前もイカれてんだなぁ。さすがに俺の息子だァ! あはっあはっ」
 さも楽しげに響く笑い声が何だか痛々しかった。

「さぁ。お父さん。親子の楽しい団欒はもう終わりですよ。どうしたいですか?」
 時枝の言葉に、杉下は一秒止まって唾を飲み込んだ。そして軽く溜息をついて、初めてまともな表情をした。
「ハァ。分かってるよ。俺にはもう楽しみがない……終わりだよ。もう終わりがいい」
 時枝はスッと立ち上がって杉下の真横に立った。
 杉下は指一つ動かそうとはしなかった。視線も自分のつま先の方から動かさない。
「分かりました」
 時枝は無表情のまま、点滴の中に違う液体を入れた。
「貴方が間違って作った命ですが、私は今とても幸せです」
 杉下の額に汗が浮かび始めた。
「なん……か……俺も良い事した……みたいな気分だ……イイ気分だァ……ぅっ」
 杉下はベッドの上で七転八倒し始める。
「さようなら。お父さん」
 時枝は眉一つ動かさず、杉下という男を見送った。

 ガラガラとドアを開けて廊下へ出ると、すぐ横に木戸が立っていた。
「お前が終わらせなければ、俺が終わらせていた」
 そう言って木戸が抱き締めてくれて初めて、時枝は自分が泣きそうな顔をしていた事に気付いた。




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貴方の狂気が、欲しい 59話

 木戸が目を開けると、いつの間にか辺りは暗くなっていた。
 二人ともそのまま快楽の渦に飲み込まれるようにして気を飛ばしてしまった。
 隣で寝ている時枝の肩を触るととても冷たかった。風邪を引いてはいけないと布団を掛けようとしたが、身体も綺麗にするついでと思い、木戸は時枝を起こしてもう一度風呂へ入った。
 風呂から出て来ても時枝は夢現で蕩けた表情のままだった。そんな時枝が可愛くて、木戸は何度も頬にも瞼にも唇にもキスをした。

 記憶が戻ってから暫く何も考えず、二人は激しく抱き合った。時には優しくゆっくりと抱き合い、時には獣同士の交尾のように挑発的に抱き合った。
 毎日茹だるような暑さの中、確かめ合うように肌を重ねる生活をしていた頃だった。
 懐かしい顔が玄関のチャイムを鳴らした。

「健太……」
「あ……時枝さん……」
 どうしても黙っていてくれと頼まれた事を裏切ってしまった事が気がかりで、ずっと謝りたかったとの事だった。
 何度も来ようとしたが、二人が喧嘩でもしていたらと考えると怖くて来れなかったと健太は言った。
「時枝さんに恨まれてるんじゃないかって思って僕……ごめんなさい」
 健太が涙目になった。
 時枝はそんな健太の頭を優しく撫でた。
「いえ。君のお陰で、君が居たから私は元に戻れました。今まで色々とありがとうございました」
 そう言う時枝の顔を見て、健太は少しだけ寂しそうに言った。
「時枝さん……本当はそういう顔をするんですね」
 健太の知っている時枝はまるで何も知らない子供か動物のようだった。故に落ち着いている大人な時枝を見て寂しく思った。
「本当はもっと口数が少なくて無表情だったんだが、お陰でこんなに色っぽくなった」
 木戸が茶々を入れる様に人差し指で時枝の顎をクイと上げたが、「健太の前です」と厳しく言われてムスッとした。
「時枝さんに叱られる木戸さんて……何かおかしいのっ」
 と、健太は無邪気に笑い、その場が和んだ。
 そして健太が何かを見つけたように目を丸くして時枝の頭を指した。
「あっ! 時枝さんの髪……根元が少し黒くなってる!」
「うん……髪も戻って来たようなんだ」
 時枝も嬉しそうに微笑んだ。そして他愛ない話しで時間が過ぎた。

「こうして健太とたまに話すのも最後ですね」
 夕飯も終わり、談笑の途中でサラリと言った時枝の言葉は突然だった。
「え……?」
 驚いたのは健太だけではなかった。木戸も動きを止めた。
「だって、いつまでもこうしている訳にはいきませんし……まだカタもついていませんから」
「お前、それってもしかして」
「ええ。東京に戻りたいと思います」
「い、嫌だよッ! 何で? 別に東京に仕事で行ってもまたここに帰って来ればいいじゃん!!」
 何とか思いを留まらせようと騒ぐ健太の横で、難しい顔をしていた木戸が溜息をついた。
「健太。俺達の夏休みは終わったらしい」
「木戸さ……いやだよぉ」
 健太は駄々をこねる子供のように涙を瞳に溜めた。
「もう、これきりにしましょうね」
 時枝が静かにそう言うと、健太が顔を赤くして声を荒げた。
「どうして!? また会えるでしょ!?」
「私たちは……あまり良い事をしてきませんでした。残念ながらもう会えません。偶然会っても、もう他人として接します」
 こんな時に寂しそうだがとても優しい笑顔を向けた。
「なんで……酷いよ……」
 泣き崩れる健太の横で、木戸がタバコに火を点けた。
「時枝はお前を想って言ってるんだ。分かれよガキ。俺たちと知り合いだって分かったら結構面倒な事に巻き込まれる率が高いんだよ」
 暫く黙って鼻を啜っていた健太だったが、懸命に表情を戻した。

「分かった……でも……忘れないから。初恋の時枝さんも……意地悪でライバルだった木戸さんも……」
 健太は表情が崩れるのを我慢出来ずポロポロと涙を零した。
「元気でいて下さい。あんな状態の私でも好きになってくれて、ありがとう」
 時枝は心から健太という少年にお礼を言った。
 健太の純粋無垢な心に触れていた事は決して時枝の心に影響が無かったとは言えない。
「お前とは無関係になるが……俺達も忘れてはやらねーから。元気でやれよ」
 木戸がポンと健太の頭に手をやった。
「うぅぅぅ……っ」
 そして二人は泣きながら帰って行く健太の後ろ姿を見送った。

「本当にもう、いいのか?」
「はい……もう、大丈夫です。東京へ、行きましょう」

 次の日、二人は荷物を纏めて出て行った。




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ばいばい。健太(ノ△・。)

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貴方の狂気が、欲しい 58話

「慶介さんっ……まだ身体が濡れてっ」
 軽く拭いただけの身体のまま、木戸は時枝を抱えて寝室へ移動した。
 押し入れから布団を引っ張り出して無造作に出し広げると、その上に時枝を押し倒した。
 まだ身体に残る水滴が布団にすぐさま吸いとられる。
「あっ……やっ……」
 時枝はグイと仰向けに腰を上げられ、大きく足を広げさせられた。赤みが差した恥ずかしい部分をじっと木戸に凝視されて思わず涙ぐむ。
「恥ずかしい……慶介さ……っ」
 木戸の大きな手で玉袋を揉まれながら、後ろの蕾を舌先で解される。
 時枝は、時折感じ過ぎてビクッと身体が反応するのが恥ずかしくてシーツを強く掴んだ。
 だが木戸はわざと時枝が反応するように敏感な部分を舌で突いた。
「ぃ…や……ぁ」
「今からここに生で入れてやるからな」
「生でなんてっ……いけませ……ん」
「バカだな。ゴム付けてたらお前の中で精子出せねぇだろうが」
 木戸が上からギュウと時枝の赤い乳首を強く摘まんで引っ張り上げた。
「はぁあんっ……痛ぃぃんっ」
 胸にジンと痺れるような気持ち良さが広がる。
「前から挿されんのと後ろから挿されんの、どっちがいいんだ」
「う……後ろ……からぁ」
「理由は?」
 木戸にゆっくりと四つん這いにさせられると、時枝は従順に尻を突き上げた。
「貴方に……酷く犯されたい……からです」
「お前、それ以上煽るな。壊したくなる」
 木戸の目に妖しい光が宿る。思わず時枝の柔らかな尻の肉に爪を喰い込ませると、時枝は切ない声を上げた。
「本当は……今までお前に触れた奴全員殺したいくらいなんだ」
 木戸は赤黒く腫れあがった肉棒を時枝の小さな蕾に突き立てた。
「はっ…ぅんん……太……っ」
「分かってんのか?」
「あっ……んっ…ごめんなさ……ぃぃ」
 木戸は側にあったローションを大量に結合部分に垂らし、そしてゆっくりと奥へと挿し込んだ。
「んああぁあぁーっ」
 時枝の身体にビリッと電気が走る。ほんの少し傷ついたのが分かったが、その痛みが時枝に精神的快感をもたらした。
「もっ……と…下さ……ぃ……根元……までぇ」
 木戸は息を吐きながら肉棒を奥へと入れ込む。時枝の内側は、襞が絡みつき、更に奥へ引き込もうと動いていた。
「ほら、根元までいったぜ? もうこれ以上は行けない」
 互いの我慢は限界に達し、木戸の脈と時枝の脈が体内で一緒に溶けあった。
 そして木戸は我慢の限界点を超した。
 木戸は一気に肉棒を引き抜くと、そこからまた更に深くまで突き入れた。
「ひっぁぁあああぁっ」
 内側の襞たちが木戸の肉棒に貼り着くようにして追いかけてくる。
 その吸引と締め付けに耐えきれず、木戸の腰が止まらなくなった。
 バチンッ、バチンッと肌が渇いた衝突音を和室に響かせて二人の興奮を煽る。
 時枝の白く丸い尻がほんのりと桜色に色づいてくるのが堪らなかった。
「あっ、あんっ! すごっ……いっ……ぃんっ」
 木戸は後ろから時枝の両乳首を抓り上げた。
「っやあっ……やあぁぁっ」
 空中で上下に揺れていた時枝の肉棒の先から白くネバついた液体が布団の上に撒かれた。
 気持ち良過ぎて時枝の口端からだらしなく唾液が流れ出る。
 木戸は振り乱した長い銀色の髪を掴んだ。
 木戸はいつも髪を縛ってやる為にゴムを手首に掛けて持っている。時枝に肉棒を出し入れしながらそのゴムで髪を高い位置で縛ってやる。
 そういえば髪を切ってやると言いつつも、綺麗な髪が勿体なくて切れずにいた事を想う。
 すっきりと髪を縛り上げると、綺麗な項が露わになって余計木戸を興奮させた。
 遅れ毛がとても艶めかしい。
 木戸の腰が激しくピストンを繰り返した。
 シャワーの水滴と汗が混ざって時枝の背中に落ちる。振り向いた時枝の唇をさかさず塞いで口内を犯した。
「可愛いよ……今度こうして犯しながら俺の印をつけてやろう」
「んっ……あの子と同じ……もの?」
 時枝の入り口がギュッと硬く締まる。
「いや、違う。もっといいものだ」
 木戸がこじ開ける様に強く奥まで突いた。
「あんんっ」
「お前の顔を見てイきたい。横を向け」
 木戸が時枝の身体を横にすると、時枝が恥ずかしそうに上目遣いをした。
 その顔に木戸は我慢出来なくなり舌打ちをしながら思い切り腰を打ち付け始めた。
「あッ、あッ! すご……っ……またイっちゃ……ぃますっ」
 畳の上で時枝の身体ごと布団が激しく上下に動き、捩れた。
 障子の向こうでひぐらしの泣き声が夕方を告げていた。何もない田舎の片隅で誰もいないのを良い事に、二人は声を張り上げた。

 獣に食い散らかされているような気がした。それ程に木戸は理性を飛ばして時枝の上で暴れていた。
 時枝の中で再び快感が膨らみ始める。
 突かれる度にどんどん膨らみ頭が痺れて真っ白になってきた。
 木戸の荒い声が耳に入ってきたと思った瞬間、耳を強く齧られた。
 時枝が木戸の頭に手を回す。「もっと……もっと強く……してください」そう言って頭を擡げると視線の先に濡れてくっきりとした木戸の腹筋が艶めかしくうねっているのが見えた。
 そして中の快感が爆発した。
「アッッ……ダ…メ…くるッ……ダメぇええぇんっ」
「香ッ……今出してやるから待ってろッ」
 言う事の聞けない時枝は木戸が射精する少し前にドライオルガズムへと達した。
「はぁああぁんんっ! ケイスケえぇっ」
 木戸は名前を叫ばれると一層時枝の奥に大量の精子を飛ばした。
 時枝は断続的にオルガズムを引き起こし腰を何度も大きく跳ね上がらせていた。
 中の襞が木戸の肉棒を押し潰しそうな程強く吸いついてきて、精子を一滴残らず吸い取りにかかる。
 木戸は気を失いそうな程の快感で、跳ねる時枝の上で自分も小刻みに腰を痙攣させた。



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ももも、申し訳ありません!
前回と同じものをUPしてしまいました~っ(>ω<)
急いで変えました!
失礼致しました(-"-;A ...アセアセ

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貴方の狂気が、欲しい 57話

 木戸は丁寧に時枝の服を脱がせ、「熱くないか?」と言って湯を足下に掛けた。
「大丈夫です」
 よく見ると、いつもピシッと整えていた髪は自然に前髪を伸ばしたままの状態になっている。以前より大分若く見えた。
 それにスーツではなく黒いTシャツとジーンズというのもまるで別人のようだ。
 改めて感じる違和感にドキドキする。
 時枝はゆっくりと湯船に浸かると、体温が下がっていた身体が生き返るように感じた。
「はぁ……」
「気持ちいいか?」
「はい……とても……」
 心が癒される。
 この瞬間程お湯にこんな癒しの効果がある感じた時はなかった。
 時枝が目を瞑っていると、木戸も中へ入ってきた。幸い、男二人が入ってもゆったりと出来るかなりの広さの湯船だ。
 木戸は時枝の後ろに座り、時枝を後ろから抱いた。
 お互い何も言葉は話さなかったが、気持ちの良い沈黙だ。
 時枝は木戸の胸に身体を寄りかからせたまま甘える様に顔を上に上げた。それに応える様に木戸も時枝の唇をそっと吸う。

 互いの舌が優しく絡み合い、愛してると言い合っているようにゆっくり動いた。
 時枝は信じ難い程の愛に溢れて鼓動を限界まで速めた。
 自分が今まで酷い状態だった時も、木戸がどれほど献身的に尽くしてくれたかを思い出すだけで恥ずかしさと嬉しさでどうしていいか分からなくなった。
 もう何度も言われていた「愛している」という言葉を思い出す度に胸の中が熱くなる。
 時枝がそんな事を一人思って恥ずかしがっていても、木戸は構わず後ろから頬や首筋や肩にキスをする。
「木戸さま……私は……嬉し過ぎて、きっと溶けてなくなってしまいます」
 聞き心地の良い水音がピチャピチャと可愛く響く。
「やっと戻ったな」
「?」
「木戸“さま”って呼び方になってる」
「あっ、今まで申し訳ありませんでしたっ」
「いや、別にいい。寧ろ、慶介でも構わない」
「そっ、そんなっ」
「俺は香って呼ぶ……ただし、二人きりの時か、ベッドの中でだけだ」
 時枝の顔がみるみる桜色に染まっていく。
「で、では……私もそう致します……」
「香」
 急に呼ばれて時枝は固まった。恥ずかしさで何も言葉が浮かばない。
「あのっ……こういう時、何て言い返せば……」
「香」
 木戸の手がスッと時枝の脇を通り、時枝の胸を掴んだ。
「あっ……木戸さま」
「違うだろ?」
 木戸の艶めいた声が風呂場に響く。それだけで時枝の後ろの蕾がヒクつく。
「慶介……さん」
 平らな胸を無理矢理強く揉まれると、そこは直ぐに、女よりも敏感な性感帯へと変わった。
 敢えて乳首を避けて揉まれていると、余計にその先端を触って欲しくて仕方なくなる。
「どうして欲しい?」
 木戸が横から意地の悪い目つきで時枝を覗き込む。
「ハァっ……乳首も……っ…触ってくださっ」
 時枝がねだると、木戸は人差し指でそっと時枝の乳首を捏ねた。水中で優しく捏ねられると、余計に焦らされる様で時枝の息は更に荒くなっていった。
「こっち向け、香」
 時枝はゆっくりと木戸と向かい合った。
 最初は木戸の足の間に入ったが、木戸が無理矢理時枝を自分の上に乗せた。
 自然と互いの立ち上がったものがお湯の中で触れ合って焦れる。
「慶介さん。どうしよう……」
 時枝が崩れる様に木戸の首に腕を回し、抱きついた。
「どうした」
「好きで堪りません……」
「今、嬉しいか?」
「はい」
「幸せか?」
「はい、とても」
「どうしたらもっと嬉しい?」
「もう、これ以上は……」
 時枝は少し焼けた木戸の首筋に唇を付けた。
「お前はもっと幸せになるべきだ。今まで俺が悲しませた分も、ずっと寂しいって思って来た分も、全部だ」
「もう十分です」
「ならこれはどうだ」
 木戸が時枝の立ち上がった下半身を握り、水中で扱きだした。
「あっ、あっ、いけませんっ……すぐイって……しまいますからぁっ」
 言葉とは裏腹に、時枝の腰は上下の動きに合わせてすぐに前後動きだした。水が大きく時枝の動きに合わせて揺れ、湯船から溢れ落ちた。
「あんっ、あんっ……あんんッ!」
 時枝は透き通った高い声を反響させながら木戸にしがみ付き、お湯の中で射精した。
 白濁の液体がゆらゆらと湯の中で泳ぐ。
 時枝はとろりとした目で木戸を見つめると、「貴方のを舐めたい」と懇願した。
 時枝のその顔とセリフで、木戸のモノは限界まで硬くなった。
 ザバッと湯船から立ち上がった木戸は湯船の縁に座って足を広げた。時枝はその間へ吸い込まれるように入り込むと、水で濡れ切った木戸の肉棒を口に含んだ。
 お湯の味と、ヌルついたしょっぱさが混ざって興奮した。
 チュプチュプといやらしい水温が響く。
 木戸は自身の肉棒を掴むと激しく扱いた。亀頭部分は時枝がしゃぶったままだ。
 一番敏感な亀頭を時枝がきつく吸い上げる。
「ハッ……ハッ……ハッ……」
 木戸は時枝の長い前髪を掴むと、「んっ」と片目を瞑り切なげな表情をした。
 木戸の肉棒がはち切れる程硬く膨らんだ瞬間、木戸は時枝の口から肉棒を抜いた。
 時枝は分かっていたように、木戸を見つめながら舌を出した。
 すると木戸の先端から勢いよく真っ白な液体が爆ぜた。液体は時枝の白い頬や瞳の近く、鼻の上から唇に、そして差し出された赤い舌の上にたくさん掛った。
 木戸は息を荒げながらその後も続いて出る精子を時枝の舌の上に擦りつけるようにして出した。
「いやらしいな……」
 精子に塗れた時枝の綺麗な顔を見て、木戸は再び硬さを取り戻した。




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ヾ(*ΦωΦ)ノ ヒャッホゥ ←

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貴方の狂気が、欲しい 56話

――何を聞いた?
 
 耳鳴りがした。
 いやにバカでかい耳鳴りだ。
 一つの音階の音が頭の中で長く続いている。不快だ。
 ドアもクローゼットも木戸も横向きになって見える。
 時枝が倒れたからだ。
 木戸の唇が何か動いているが聞こえない。ビニール袋が口と鼻を覆う様に被された。
 その中で、時枝は思い出した。

 時枝の視点が激しく動きだした。黒目が左右上下に激しく動き、何かを見ていた。
 時枝の身体中から一気に冷や汗が吹き出して濡れてきた。顔は真っ青だ。
 時枝は故意的に蓋をしてきた過去を一気に見ているような視点の動きをしていた。
「ぁ……ぁ……う……あ!!」
 奇声を発しそうなのが分かった。パニックを起こしている。

(マズイ! 今度こそ時枝が壊れる!!)

 木戸は思い切り時枝の頬を引っ叩いた。時枝が少し止まる。
「時枝ッ……こっち見ろッ!」
 そしてもう二、三発叩いて痛みを送る。
「俺を見ろよッ!」
 木戸の目に涙が浮かぶ。
「戻ってきて……くれよ……」
 もう他に何をすればいいか分からなかった。
「愛してるんだ……」
 木戸は自分の無力さと過去に犯した後悔の数々を恨んだ。

「木戸……さま……」
 絞り出すような声に、木戸はハッと顔を上げた。口元にあったビニールを取る。
「私は……悪魔の子でした……」
 時枝の四肢がガタガタと震えていた。
「時枝……大丈夫だ。お前とアイツは別だ」
「血が……繋がっています……怖い……あんな気の狂った血が入っているなんて……」
「大丈夫だ。その血はお前の母親や、暁明シャオミンの血が浄化してくれている。そうだろう? あんなにいい奴が兄貴だったんだ。お前に兄弟が居たんだ」
「兄……あの方が私の……」
「そうだ」
 木戸は流れ続けている時枝の涙を拭った。
「由朗さまも……皆本当は誰も私を見てなかった」
「俺は見てる」
 木戸の言葉に時枝は顔を歪めた。
「貴方はッ……弘夢くんを愛したように私を愛した事は一度もなかったッ」
 感情の昂った時枝は再び嗚咽混じりに叫んだ。
 木戸が時枝の肩を押さえつけ背けた顔を正面に向けた。
「当たり前だろッ! アイツとお前は別人だ。でも今はお前を一番愛していると言っている!」
 涙で覆われた時枝の目が座り、真っ直ぐ見返してきた。
「なら……彼にしたように……私にも痛みを下さい。あの狂気は貴方の愛の形なのでしょう? 私はそれがずっと欲しかった。貴方の狂気が……欲しい」
 木戸を試す様な眼差しだ。きっとこれが最後の本心なのだと木戸には分かった。ここで宥める為とか、取り敢えずの誤魔化しをすればきっとこれから先何を言っても信じて貰えない。

 木戸は小さく溜息をついた。
「多分……いや、確信を持って言うが、俺の事を一番よく知っているのはお前だ。よく考えてみろ。俺は元々そういう痛めつけるのが好きな方だ。その俺がだ。こんなに人に尽くすとか有り得るか?」
 時枝は小さく頭を振った。
「だろう? 今の俺こそ正気の沙汰とは思えないんだが?」
 木戸は力なく笑みを浮かべたが、本心からそう言った。
「そう……かもしれませんね」
 時枝もほんの少し笑った。
 その笑顔に木戸はやはり時枝の笑顔はいいなと胸を熱くした。
「お前はあんな風に傷つけたくない。それにあんな生ぬるい独り善がりな痛みは与えてやらないよ」
 木戸が優しく時枝の頬を撫でると、時枝はゆっくり瞼を閉じた。
「私は……貴方にあの悪魔に犯され喜ぶ姿を見られました……どうしても思い出してしまうし……貴方だって忘れられる筈がない……いっそ死にたい」
 時枝は恥じと後悔で顔を歪ませて涙した。
 顔を覆う時枝の手を木戸はゆっくりとどける。
「そうだな……その姿は悪いが忘れない。一生妬き持ち妬かせて貰うから覚悟しろよ?」
 木戸は意地悪く口角を上げた。
「ああァァッ――……」
 それを見て、時枝は堰が切れたように咽び泣いた。
 木戸の言葉が、時枝のそういう過去もとっくに全て受け入れているのだと伝わった瞬間だった。
 木戸は時枝を包み込むようにして抱き締め、耳元で「全部愛してるから」と囁いた。そして気の済むまで泣かせた。
 時枝は今まで生きてきた中で泣いた事が無かった。泣きたい場面は幾らでもあった。その分まで、全部吐き出すように悲しくて苦しい感情を涙に溶かして流した。
 暫く泣き続けた後、木戸が全てを吐き出し切って力尽き、目を赤くした時枝を抱き抱えて立ち上がった。
「風呂でも入ろう。少し楽になる」
 木戸に抱き抱えられながら、時枝はまるで雲の上にでもいるかのようにフワフワと良い気持ちになった。




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ウ・・・━━(。・ω・)ウワ━(。-ω-)ァァ━・゚・(。>ω<)・゚・━━ン!!!

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貴方の狂気が、欲しい 55話

「貴方は? 何故私を知っているのですか?」
「え……何でって……僕ですよ? 弘夢です」
「……分かりません」
 “弘夢”の声を聞く度に目の奥がキリキリと痛む。

――私はこの子を知っている?

「おーい、時枝! 用意出来たぞー」
 木戸の声が少し遠くから響く。
「時枝さん、どうしたんですか? 僕が分からないんですか?」

――弘夢……弘夢……弘夢。

「時枝―!」
 木戸が時枝を呼ぶ声で、懐かしい響きが耳奥で再生された。

『弘夢』

 その声は確かに木戸の声で、何度も弘夢を呼んでいた。その事を時枝は知っていた。何故忘れていたのか不思議なくらい大きな過去だ。

――木戸さまは弘夢くんを愛していた。どうして今更思い出したのでしょう。

 今まで気持ち良く浴びていた太陽の光を急に避けたい気持ちになった。
 いっそ雨戸も、障子も、カーテンも、ドアも、全て閉めてしまいたい気分だ。
「あの、時枝さん……伝えて貰えますか? もうお金を振り込むのは止めて下さいって」

――お金って? あぁ。罪滅ぼしのつもりかまだ少しでも忘れられたくないという意識からか振り込みしていたやつ……。あれ……でも……木戸さまと弘夢くんは確か……。

 そして時枝は最後に目に焼き付いた二人の姿を思い出した。

――ああ……そうでした……木戸さまはやっぱりずっと彼を愛していたんでした。

 時枝の目に涙が浮かび上がり、次から次へと頬へ流れ落ちた。
 胸がキリキリと痛んだ。
 声を押し殺していても、我慢の効かない悲しみが襲ってくる。
 電話口から弘夢の声が微かに聞こえるが、時枝の手からは既に携帯は離れていた。
「時枝!」
 後ろから木戸が胸を押さえて蹲る時枝に駆け寄った。
「どうした!? どこか痛いのか?!」
 青くなって時枝の肩を包んだ時、未だ通話中になっている携帯電話が視界に入って木戸は血の気が引いた。
「お前、携帯に出たのか!? 何か……思い出したのか!?」
 木戸は急いで通話を切った。
「ぅ……ぅ……」
 時枝は漏れる泣き声を手で強く押さえつけているが、それがかえって悲痛な呻き声に聞こえて木戸も胸が痛んだ。
「おい、よく聞け時枝。俺と弘夢は別にどうにもなってない。俺が好きなのはお前だけだ」
 時枝はかぶりを振った。

――違う。貴方は優しいから。

「お前、最後俺と弘夢が抱き合ってたの、見たんだろ?」

――そうだ……あの時の木戸さまの優しい顔、覚えている。

「あれは……あの時、まだ自分がお前を好きなんだって自覚出来てなくて、むしゃくしゃしてたのもあって弘夢に会いに行ったんだ。会いに行ったのは悪かった。でもそのお陰で俺はお前が好きなんだって自覚できたんだ。本当だッ」

――私はあの後どうした……何故こんな形になった? 何故素直に木戸さまの言葉を喜べない?

 時枝はクラリと眩暈を感じた。何だか空気が薄く感じる。

――あの後私は自棄になって……何故? 何かショックな事を聞いた……誰に? 木戸さまに似た……あ……由朗さまだ……何を聞いた?

 空気が足りない。吸っても吸っても苦しくなるばかりだ。
 時枝は激しくヒューヒューと気管を鳴らして肩で息を吸いだした。
「おいッ、もういい! もういいから時枝! 思い出すなッ」
 木戸は直ぐに時枝が過呼吸になりだしたのに気付き、慌てて紙袋を探した。




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思い出してきちゃった(>_<)!

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貴方の狂気が、欲しい 54話

 時枝たちはおぼつかない足取りで何度もキスをしながら歩いて帰った。
 二人は何度も立ち止まり、少し歩いてはまた木戸が時枝の頭を強引に引き寄せた。
 縺れ込むようにして家へ入ると、中の空気が外より少しひんやりと感じた。もしかしたら二人の体温が異常に熱を持っていたからそう感じたのかもしれない。
 木戸は細い糸が切れてしまったように我慢が限界を超え、乱暴に時枝を廊下の壁に押し付けて服の中へ熱い手を滑り込ませた。
「あっ」
 時枝から焦る様な声が漏れる。
 木戸の指先は直ぐさま小さな硬い尖りを見つけて摘まみ上げた。
「や……ぁ」
 時枝は涙が薄く滲む程気持ち良かった。
「俺達はもう何度もこうしてここでヤってたんだよ」
 木戸が時枝の白い首を軽く噛みながら言った。
「え……うそ……」
 木戸の歯が食い込む度に胸の尖りは更に硬さを増す。
「覚えてないか?」
「じゃ……あれは夢じゃないのですか……?!」
「現実だ。よく思い出せ。俺のモノがどういう風にお前の中で動き回っていたか」
 木戸は時枝の身体を反転させ、壁に胸を押しつけるような体制にさせた。
 木戸はカチカチになった自分の下半身を服の上から時枝のふっくらとした尻の間へ押し付けた。
 時枝の全身が総毛立つ。
「ここでこうして後ろから突いてやったのも忘れたか?」
 後ろから耳に舌先を忍ばせながら木戸が言う。腰をしっかり持たれ、ゆっくりと突くように卑猥な動きに時枝の身体が上下に揺れる。
 そして時枝の脳内にフラッシュバックのように夢だと思っていた情事が蘇る。
「ああぁぁ……」

(そうだ……私は……以前ここで……こんな風に……他にもたくさん……!)

 今触られている感触で、更にその時の快感や感度までが蘇って立っていられなくなった。
「こら。座るんじゃない。こっち来い……もう一度最初から抱いてやる」
 時枝の脳内では既に何度も射精しているかのような快感が押し寄せていた。
 トロトロと寝むそうな瞳は木戸でなくても簡単に人をその気にさせる目になっていた。
 木戸は性急に寝室へ気だるそうな時枝を引っ張っていく。
 その時、ポタリと木戸の髪から汗の雫が顔に落ちた。木戸の足が止まる。
「時枝、部屋で待ってろ。シャワー浴びて風呂の用意してくる」
 木戸はつい焦らしたくなった。気紛れという方が近い。
「え……」
 盛り上がっていただけに、時枝はつい寂しそうな声を出してしまった。
「一人で触っていてもいいが、性器以外だ。出来るな? 俺が呼んだら風呂場へ来い」
 時枝はそう言われて既に身体中が疼いた。
 木戸が意地の悪い笑みを零しながらシャワー室へ消えると、時枝は自分の肩を抱いた。
 色々と身体を触りたいが妙に恥ずかしくて出来ないでいた。
 すると、突然聞き慣れない高音が部屋に響いた。
 時枝は反射的に身体が強張る。
 それは妙に久し振りに聞いた電話の音だった。それが電話だと気付くのに少し時間がかかった。
 音は何かで覆われているのか、直接的なけたたましさはなかった。
 時枝は部屋に掛っている木戸の服のポケットを探ると、薄く四角い携帯電話がある一部分だけを点滅させて音を発していた。
 画面を開くと、そこには『弘夢』と名前が出ていた。

(弘夢……弘夢……)

 頭の中で繰り返してみると、胸に圧迫感を感じた。
 時枝は無意識に通話ボタンを押し、携帯を耳に当てた。
「はい」
「あ! 木戸さんですか? あの、弘夢ですけどお金の事で」
 大人しそうだが意思の強そうな可愛い声だ。
「弘夢……」
 実際に声に出して呟くと更に胸が苦しくなる。
「あれ? 木戸さんの携帯じゃないですか?!」
「あ……いや、木戸の携帯ですが……申し訳ありません、今木戸は手が離せないので私が代わりに……」
「あれ? 時枝さん?」
 突然名前を当てられて息苦しい布に包まれたような気持ちの悪さになった。




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ヾ(:´Д`●)ノアワワワヾ(●´Д`;)ノ

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貴方の狂気が、欲しい 53話

「最近、健太は来ませんね」
「ああ……そうだな」
 近頃ぱったりと姿を見せなくなった健太を思い出して庭先に立ってみる。
「きっと試験期間なんだろう。そのうち来る」
「そうですか」
 夏休み前だというのに今年は既に蒸し暑さが本格的だ。
 この家にクーラーなどというものはない。昔ながらの団扇か扇風機か風鈴か、だ。
「少し散歩でもするか?」
 木戸に誘われてだだっ広い野原を歩いた。
 沢山の原色の花々が無造作に咲き誇り、その間を左右にユラユラと蜂が飛び交っていた。
 草木には嬉しい太陽の直射日光が時枝たちの肌をジリジリと焼く。
 互いに無言でひたすら歩き、目標の大きな木に向かった。
 時枝は何となく立ち止まり、振り返ってみた。後ろはまるで花の絨毯のようにグラデーションが広がっていた。
 不気味な程のどかな光景だ。
「時枝。こっちに来い」
 横に大きく広がった木は、深緑の葉を傘の様にして木陰を作り出していた。
 その根元に木戸は座り時枝を呼んでいた。
 時枝は目線を上手く会わせないようにしながら自然に隣に腰かけた。
「やっぱ外は暑いな」
 汗を拭う木戸の逞しい腕が視界の端に入る。
 木戸は持って来たペットボトルの水を喉を鳴らしながら飲んだ。その口端からスルスルと水が流れ落ちて喉を伝う。
 木戸の肌は健康的に日焼けしていて艶めいていた。汗で濡れた肌は、引き締まった筋肉の形をくっきりと浮き彫りにして時枝は思わず見惚れた。
「暑くないか? 大丈夫か?」
 突然話しかけられて目が合ってしまった。
 心臓を鷲掴みされるような鋭く危険な視線だ。
 木戸というとても優しい男の所々垣間見えるこの危険な香りに、時枝はいつも心が震えた。

(もし、この人に意地悪な事をされたら……)

 考えただけでどうにかなってしまいそうだ。

(私は何を考えているんだ! こんな良い人に対して……)

「時枝?」
「あっ、大丈夫です。ありがとうございます」
 思い出したように時枝も持って来た水で喉を潤した。
 しばらく二人で黙ったまま木陰で休んでいると、木戸が残り最後のタバコを一本咥えた。
 時枝は咄嗟に胸ポケットに手をやり、目的の物を探してズボンのポケットにも手を入れてた。
「何してんだ」
「あ、火をお点けしようとライターを……」
「え?」
「あれ……すみません、何故そんな事をしたのか私……」

(ライター? 何故そんな事を私が……。でも今自然と……)

 木戸は急に真剣な表情になってタバコを口から外した。そして木戸の顔がゆっくりと近づいてきた。

「時枝……」

(え? 何……!?)

 思わず後ろに上半身をしならせるが後ろの木でそれ以上逃げられない。
 木戸は尚も近づいて、ついに木戸の吐息が頬にかかった。
 胸の辺りがぞわっとする。
 だが木戸の唇は時枝の耳に触れるか触れないかの距離で止まった。だが木戸の暖かい吐息が耳の中へ入り込むと身体が金縛りのように動けなくなった。
 たったそれだけの事で時枝の全身の性感帯が目覚める。

「キスするけど……いいか?」
 木戸の低く艶っぽい声の震動が直接鼓膜を愛撫した。
「ひっ……あっ」
 思わず逃げようとするが抱きすくめられてしまった。心臓が飛び上がる。
 そして嬉しいのに無償に逃げたくなった。
 本気で逃げたい訳じゃない。逃げようとする自分を羽交い絞めして欲しいのだ。
 時枝が逃げようともがくと、木戸は時枝の両腕を後ろへ持って行き痛い程強く纏めた。
「っ……」
 木戸の目が意地悪く笑った気がした。
「木戸……さんっ……」
 木戸は時枝の柔らかな唇を啄ばんだ。
「あっ」
 そして尚も啄ばむ。
「んっ」
 それはキスとは言えない一方的な啄ばみだった。唇に痛みが走る度に時枝の口内に甘ったるい唾液が沸いてくる。
 木戸は赤く腫れてきた時枝の唇を、今度は舐めた。
 ジンジンと残る痛みの上に舌が這う度にそこが熱く感じる。
「や……ァ……」
 思わず漏れた時枝の声を塞ぐように、木戸は唇を重ねた。
「んーっ……ん……んっ」
 力強くて喰われているようなキスに、時枝は全身の力が抜けた。
 木戸の肉厚な舌は、時枝の性感帯を知り尽くしているかのように焦らし、痛めつけ、そして吸い上げてきた。
「あっ……あっ……木戸さっ」
 いつの間にか解かれた両手は、後ろで木戸の指に自分の指を絡ませていた。
「何だ」
「好きっ……好きです……んんっ」
 想いが溢れて止まらない。
「知ってるよ」
 そう言って木戸は媚薬のような唾液を喉奥に流し込んできた。




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[壁]*ノノ) キャ-ハズカシー

そして昨日は1200件を超える拍手を頂きまして…
ボク……_| ̄|○、;'.・ グハァッ(吐血)
驚きでポックリいきそうでした。
ありがとうございます!!+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜

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貴方の狂気が、欲しい 52話

「時枝。起きろ。飯出来たぞ」
 目を開けると起きぬけにでもドキッとするような整った顔があった。
「あ、はい……」
 着替えようと服を探していると、木戸が浴衣に着かえさせようと時枝の服に手をかけた。
「あ、大丈夫です。じ、自分で……」
「あぁ……そうか。つい。悪ィ」
 自分が異常に木戸を意識しているのが分かる。今までどうして平然と世話をして貰っていたのか、何で記憶がところどころ欠けているのか分からないが、それでも今は木戸に意識が集中していた。
 取り敢えず洗面所に向かう。
 そして流しの前に立って唖然とした。
 ガタンッと大きな音を立てて後ろにぶつかると、その音で木戸がすぐに駆けつけた。
「どうした時枝!?」
「あの……あの……これは……」
 鏡の中を指さす。
 突然伸びた髪は銀色に近い白に変わり、顔も若干痩せて細くなっていた。
 何が起こったのか、本当に自分なのか分からず言葉が出ない。
「あぁ……そうか。そんな色になっちまって、びっくりしたよな。大丈夫だ。すぐ元に戻る。ちょっと体調が悪かったからそうなっただけだ」
 木戸がゆっくりと腕を掴んで立たせ、パニックになった頭を優しく撫で、サラサラと流れる髪の間に指を滑らせる。
 それが何だかこそばゆくて嬉しかった。
「本当に?」
 破裂しそうな程暴れていた心臓が静まっていく。
「ああ。久々に鏡見たから髪も伸びてるけど、嫌なら切ってやる」
「では……あとでお願いします」
「分かった。さぁ、顔洗ったら飯だぞ」
 木戸の言葉で時枝の心は直ぐに落ち着いた。木戸が大丈夫だと言ったのであれば、大丈夫なのだと、素直に心が受け入れる事ができた。

 無理に色々と思い出そうとすると頭痛がする。
 木戸は絶対に無理矢理思い出そうとするなと言ったが、少し逸る気持ちもある。
 何故この田舎で木戸と二人で暮らしているか、木戸に聞いても答えてはくれなかった。
 不可思議な事は沢山あったが、どうやら病気になったらしいとの事だった。
 今はこうして療養するのが仕事だと言われ、やっとこの時間を楽しむ事が出来る様になった。
 時枝の時間が少しずつ動きだした。
 だが困った事に時枝は昔から知っているようで、記憶が曖昧な分よく知らないこの木戸という男に惹かれてしまっていた。
 あの妙にリアルな夢のせいもあるのか、実際夜にそういう夢もよく見る。

「時枝、買物行くぞ」
「あ、はい」
 夕飯の買い出しを二人でなどまるで恋人か夫婦のように思ってしまう。
 チラチラと自分よりも目線の上にいる木戸の横顔を盗み見る。他を寄せ付けないかのような雰囲気の筋の通った高い鼻と鋭い目を何度も見る。
 何度見ても飽きない。
 買物のように外にいる時の方がこうして木戸の事を見る機会が多くて好きだと思った。
 家の中も嬉しいが、あまりに近くてかえって緊張して顔がまともに見られない。
 木戸は休んでいろと言ったが、何かしていないと手持ち無沙汰になるので最近ではよく掃除をするようになった。
 世話になっていた事を思い出す度に申し訳ない気持ちになるからだ。
 だが時枝が自分も一度料理を頑張ってみたいと申し出た時、何故か木戸は頑なにそんな事をしなくていいと断ってきた。
 しかし、時枝は木戸の為にもっと何かしたいと説得し、煮物に挑戦してみた。
 自分では何故か上手く出来そうな気がしたのだが、完成したのは大量の、恐ろしく色の黒い物体だった。
 木戸はそれを見て可笑しそうに笑って、そして嬉しそうだけど少し寂しそうに「だから言ったろ」とだけ言った。

 その時、今度図書館へ行って煮物の参考資料を手に入れなければという使命を持った。




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料理の腕は相変わらず( ´艸`)ムププ

そして先日も沢山の拍手をありがとうございます!
過去にまで…(号泣
いつも本当に嬉しく思っております。゚(。ノωヽ。)゚。

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貴方の狂気が、欲しい 51話

 時枝は寝ていると少し頭が軽く靄が晴れてきた。頭痛もない。

(今、何時だ……)

 目を開けようとするがまだ瞼だけは重い。

(周りが静かだからまだ夜中……だろうか……喉が渇いたな……)

 時枝はやっと瞼を持ち上げ、ベッドから降りようと足を下ろそうとした。

(あれ……)

 下ろそうとした足はそのまま平行に投げ出された。踵にザラザラとした感触が当たって少し混乱する。

(私はベッドに寝ていた筈なのに……これは……畳?)

 視線を上げるとクローゼットとドアがない。代わりに障子が目立つ和室がある。
 するとスッと血の気が引いて身を硬くした。

(私はどこにいるんだ? 連れ去られたのか? あの方は無事なのか!?)

 時枝は「あの方」と思ってから不思議な気持ちになった。

(あの方って……誰だっただろうか?)

 何かをど忘れしたかのように思い出せそうで思い出せない。気持ちが悪い。
 その時ふと指先に暖かい息が掛って反射的に手を引っ込めた。
 振り向くと、そこに男が寝ていた。

(この男は……あぁ……最近いつも一緒にいる……何でだ? 私はいつからこの人と一緒に……何故私の世話を? ……私は一体どうしたと言うのだ)

 じっと木戸の寝顔を見る。
 とても切ない気持ちが込み上げて嬉しいような、悲しい様な気分だった。

(たしか健太が言っていた……)

「キド……さん」

 名前を確かめる様にそっと囁いたつもりだった。だからまさか木戸が目を開けるとは思いもよらなかった。
「お前……やっぱり……! 記憶、戻ったのか!?」
 急に腕を掴まれて咄嗟に起き上った木戸を押し退けた。
「離して下さいっ」
「なっ……どうしてだ!? 俺が分からないのか!? 時枝ッ」
 豹変したように激しく押し倒され、時枝は身の危険を感じた。身に付いた護身術で押し倒された体勢から相手をひっくり返す自信はあった。だがそれすらも容易に封じられている。
 必死に逃げだす事を考えていると、上から絞り出すような声で名前を呼ばれた。
「時枝……俺の事、思い出してないのか?」
 その声が何だかとても痛々しくて、時枝は抵抗するのを止めた。
「すみません……あなたがキドさんという名前だと健太に教えて貰いました……よく、分からないのですが、私は以前あなたと知り合いだったのでしょうか? どうして自分がここにいるのか、どうしてあなたが私の面倒を見ているのか、以前の事もチラチラとしか思い出せず……」
 時枝がそう話すと、木戸は「そうか」と言って離れた。押さえられていた手首に痛みが残る。
「あの……教えて貰えませんか」
 大きな背中に向かって言う。
 木戸は振り向くと、優しく頬と頭を撫でてきた。何故か妙に嬉しさが込み上げてくる。
「ゆっくりでいい。今は別に思い出さなくてもいい。こうしてまたお前と話が出来るようになって、俺は嬉しいから」
 頬に触れる木戸の暖かい指先の感触で、身体の芯がふと熱を感じた。

(あれ……私はこの感触を知っている……今まで何か……)

 記憶が沸々と沸き上がる。

(え……?)

 この居間でも、別の寝室でも、風呂場でも廊下でも。至る場所でこの男に激しく抱かれている記憶が生々しく映画のように映し出された。
「どうした?」
 木戸の声にすら耳奥が反応する。

(何ですか……これは……)

「汗かいてるぞ? 具合、悪いのか?」
 何度も身体の奥に突かれる感覚が蘇ってあらぬ場所が疼く。
 心配した木戸の手が時枝の汗を拭った時、身体に電気が走った。
「あっっ!」
 それはあまりにも艶を含んだ声で、感じていますと言わんばかりの声だった。
「お前……俺と今まで何して来たか覚えているのか」
 木戸の目が肉食獣のような目に変わった。その視線だけで身体中がゾクゾクと興奮する。
 だが本当に自分がそんな事をしたのか分からず、恥ずかしさとパニックから思わず「覚えていない」と答えてしまった。
 すると木戸の目は先程までの普通の目に戻った。
「そうか……まだ夜中だから寝ろよ。明日またゆっくり話そう」
「はい……」
 妙な興奮とあらぬ記憶で目の前の木戸に心臓がバクバクと五月蠅い。
「あ。俺、ここで一緒に寝ててもいいか? 嫌なら隣に行くが」
「だ、大丈夫……です」
 木戸は「そうか」と微笑んで目を閉じた。
 時枝はキュッと胸に心地良い痛みを感じる。

(この人は誰なんだろうか……あの淫らな記憶は本当にあった事なのか?)

 時枝はしばらく身体の熱を抱えたまま眠れぬ時間を過ごした。




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。.:*・゚キャ(*ノω〃)ノキャ゚・*:.。 ←喜

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貴方の狂気が、欲しい 50話

「ただいま」

 低いが玄関から響き、健太は身を硬くした。
 それなりの体重だと分かる廊下の軋む音が近づく度に鼓動が速まった。
 スッと木戸が居間へ現れると、案の定怪訝そうな顔をして居間に寝る時枝を見た。
「どうした? 何かあったのか?」
 健太はゴクリと生唾を嚥下した。
「いや……別に。何か、途中で時枝さんがウトウトしちゃって、だから俺が布団を敷いてやったんだっ」
「そうか。世話をかけたな……ほら、小遣いをやる」
 木戸の差し出す金を目の前にして健太は首を大きく振った。
「いいよッ」
「何でだ。いつも喜んで貰うじゃないか」
「いいんだってばッ。俺別に何もしてないし」
 頑なに拒む健太に「そうか……じゃあこれ」と木戸は少し大きめの紙袋を差し出した。
「なにそれ」
「土産だ。人に聞いたら東京の高校生の大半は皆これに夢中だと言うから」
 木戸はいつも偉そうだ。まるでどこかの王様のような目つきと態度に加えて意地が悪い。
 そして怖い。何が、とは健太にはよく分からなかったが、本能的に怖いと感じる事が多々ある。逆らえない絶対的な空気という方が分かりやすいかもしれない。
 だが、木戸は優しかった。もしかしたら普段の怖さから比べているのでちょっとした気遣いがやたら優しく思えるのかもしれないが、でも健太は木戸にはとても深過ぎる優しさを知っている。
 時枝を本当に必要としているのだと間近で見ていて思う。
「ありがと……」
 健太は手を伸ばして土産を受け取った。
「何だお前……嬉し泣きか?」
 そう言われて初めて健太は自分が涙を浮かべている事に気付いて顔を背けた。
「ちっ、違うよッ」
 時枝に関して深い愛情を持っている木戸を知っているだけに、時枝が話せるようになった事を言えないのが辛かった。
 健太にも、木戸が時枝と話せるようになる事を期待しているのが痛い程分かるからだ。
 だが時枝の言った「こわい」という言葉が引っ掛かって言えずにいた。
「何だ、もう帰るのか?」
「うん……お土産、ありがとう」
「気を付けて帰れよ。一日ご苦労だったな」
 健太は少し間を空けてから木戸の方を向いた。
「ねぇ、時枝さんてさ、前は普通に話せてたり……したの?」
「あぁ。話せてた」
 木戸は変に誤魔化しもせず、普通に答えた。
「恋人だったんだよね?」
 健太はどうして恋人だった相手を怖いと感じるのかが理解できず、つい探るような質問をした。
「……厳密に言うと、違う」
「え?」
「最初はアイツが俺を一方的に好きだった。だが俺は他の奴が好きだったからアイツの気持ちに気付きもしないで……結構酷い事をした。俺がアイツを愛していると気付いた時には、もう今の状態だよ」
 木戸は皮肉な笑みを浮かべて机の上に置いてあったタバコに火を点けた。
「何それ……時枝さん、可哀想だよ」
「あぁ。分かってる。だからちゃんと伝えたいんだ」

 少しの間沈黙が流れ、ただ部屋にフワフワと紫煙が漂った。
 健太はギュッと拳を握る。
「時枝さん、今日少し思い出したよ」健太はそれだけ言い残すと、勢いよく庭から出て行った。
「どういう……事だ!? おいッ」
 木戸が叫んだ時には健太は既に駆けて行ってしまっていた。木戸はタバコを揉み消して立ち上がった。

(思い出した? 嘘だろ? まさか本当に……)

 ドクドクと鼓動が大きくなる。
 健太がわざわざこんな意味のない嘘をつくとも思えなかった。
 目の前で眠る時枝の顔を別段変わってもいなく、それだけに信じ難かった。
 木戸は洗面所へ行き顔を洗い、そしてまた居間へ戻った。
 今直ぐ時枝を起こして確かめたい気持ちを抑える。

(焦るな……きっとほんの少し話せただけに違いない……でも…それでも……)

 寝ている時枝の頬を撫で、そっと口付けをした。





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子供は黙ってはいられません……。
∑d(ゝω・´*)グッ☆!

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