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貴方の狂気が、欲しい 61話

 由朗の会社はほぼ吸収されており、木戸は早々にそれを見越して新しく会社を立ち上げる為に動いていた。
 今となってはもう使い物にならなくなった由朗は、あれからずっと屋敷で療養している状態だ。
 時枝が顔を見せに行ってもあまり反応しなかったが、屋敷にいる女中の子供を見かけては「香」と呼んでいた。
 それだけで、時枝はやはり自分も少しは愛されていたんだと感じて切なくなった。
「また、会いに来ます」
 それだけ言って時枝と木戸は屋敷を離れた。

 人の本音や大きな感情に触れて来なかった時枝は、今漸く色んな人の本心が見えた気がした。
 時枝は正直に言えば、もっとこれからも話しをしてみたかったと思った。
 見慣れた道のりを車で飛ばす。運転も久し振りだが腕は鈍ってはいないようだ。
 自分の自宅という訳ではないが、木戸のマンションに帰って来るとホッとした。
「私は、私の知らない間に憎まれ、疎まれ、そして愛されて育ってきたのですね」
 久し振りに戻った木戸のマンションで、時枝は静かにそう言った。
 
「今は分かるだろ」
「……そうですね。貴方がその口で伝えて下されば」
 時枝の涼しげな瞳が木戸の唇を見た。
「言わないと分からないのか?」
 木戸の親指がスッと時枝の下唇を触る。
「肌で伝えて下さっても、構いません」
 時枝は艶っぽい目で木戸を見上げる。
 木戸は舌舐めずりをしながら時枝の口の中に親指を入れ込んだ。木戸の指に熱くヌルついたものが親指に絡みつく。
 木戸が目を細めて口角を上げると、時枝は唇を窄めて親指を吸ったままゆっくりとそれを前後に出し入れした。
「……上手だ」
 木戸はそう言って親指を抜いた。
「俺達はまた一から二人で新しくやっていく。新しい門出にお前にプレゼントをやろうと思う」
 突然の木戸の申し出に時枝は切れ長の瞳を丸くした。
「え……プレゼント? ……私にですか?」
「そうだ」
 時枝は驚きで言葉が出なかった。
「う、嬉しいです……が、私は何も買っておりませんし……どうしましょう……」
 口調は落ち着いているが、木戸には時枝がとても焦っているのが分かってそれがとても可愛く見えた。
「いや、別に何か買った訳じゃない。それにプレゼントというよりも……俺のエゴであり、命令だ」
 木戸がそう意味深な事を言うとどこかへ電話をした。
 暫く時間を潰していろと言われ、時枝は落ち着かないまま荷物をまとめたり掃除をしたりしていた。
 するとチャイムが鳴り、招き入れられたのは不思議な空気を纏った中性的な男だった。
 外見は十代にも見えるがその落ち着いた雰囲気は五十代程のものだ。日本的な顔立ちはとても理知的で無表情なところが時枝と少し似ている。
「ご無沙汰しております、木戸様。今回は時枝様ので宜しいでしょうか」
「ああ。頼むよ」
 木戸は彼をサクラと呼んでいた。
「桜……さん?」
「いや、ハンドルネームだ。ただのサクラなんだと」
「はい。私の事はサクラとお呼び下さい」
 どこで知り合ったのか、ただ仕事絡みでたまたま知り合ったこのサクラという男を自宅へ呼んだ木戸に、時枝は少なからずとも警戒した。
 そんな時枝を余所に、サクラはテキパキと何やら寝室で用意を始めた。
 ベッドにタオルを敷き、道具を揃えているのを見てもしやエステでもしてくれるのかと思った時枝は少し安心した。
「時枝様。こちらへどうぞ」
 呼ばれて木戸を見ると、目で行けと言われたので素直にベッドへ向かった。
「お召し物を脱いで下さい」
「はい?」
 急に服を脱げと言われて静かな殺気を出した時枝を、木戸が後ろからそっと服を脱がしにかかった。
「いいから。脱げって。大丈夫だから」
 納得いかないまま服を脱ぎベッドへ上がる。
「では下書きをして参りますので勃起して頂けますか」
 時枝の目が据わった。
「木戸さま。この方の骨を一、二本やっても宜しいでしょうか」
「待て待てっ。実はこのサクラは刺青師なんだ。それもあの伊風山イフウザンの孫なんだと!」
「え……しかし彼は後継者はいないと」
 伊風山はあまりに美しく描く刺青故に世界各地から依頼を受け、それが刺青ではなく別のアートであれば人間国宝になってもおかしくない程の芸術性を持っていた。
 彼に描いて貰う事が一種のステータスと言っても過言ではなかった。
 悪趣味な収集家は彼が亡くなった後、彼の描いた絵を集める為に絵の描かれた皮膚を採取する人もいた程だ。
 彼は職種が職種なだけに必然的に組織の相手をする間に色々な情報を得てしまい、巻き込まれて亡くなった。
 その事実は世間的には表沙汰になっていない。
 彼には息子も孫もいたが、敢えて後継者として育てはしなかったとされていた。だが事実は、やはりこの伝統をどうしても絶やしたくはなかったようだ。
 彼は孫にひっそりとその技術を叩き込んでいた。その孫がサクラだ。
「私は昔から爺さまの絵が好きでした。父は嫌がって逃げましたが、私は掘りたくて仕方が無かったのです。手が勝手にデザインするんです。人を見て、その人に合うものを勝手に頭の中でデザインする。掘らせて貰っている時が一番生を感じます」
 サクラの言葉は本心に聞こえた。そもそも嘘をついた事がないような印象すらある。
 あくまでも淡々と自分の好きな事を極める為だけに生きている目をしている。
「サクラの刺青は凄いぞ。じいさんのも見た事があるが、それはもう芸術の域だ。だがサクラのはもっと美しい。まるで生命を宿しているかのようなんだ。絵を刻まれた人は何倍にも美しさを引き出されるんだ」
「ですが、私は私の美しいと思った人にしか掘りません」
 サクラがサラリと我儘な事を言った。
「時枝はどうだ」
 木戸が聞く。
「はい。木戸様が以前より仰っていたより遥かに美しいと思いました。今までにない程やる気が出ております」
 時枝はそうまで言われては観念せざるを得なかった。
「分かりました。ではお任せします」
「ありがとうございます」
「あの……因みにどこに……どのようなものを?」
 ベッドの上でサクラに問う時枝の後ろに、木戸が抱き抱える様にして座ってきた。
「お前の大事な所にリングを描いて貰おうと思ってな。永久に外れないエンゲージリングだ」




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Σ(゚∀゚ノ)ノキャー

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コメント

みなとさま Re: うわぉ~
> 大事な所に大事なリングとな…それは確かに勃起が必要になりますね~((苦笑
> た、耐えられるのか!!?

勃起、必須です ァィ(。・Д・)ゞ ←
大事な所にでっかいリング(笑)
木戸くんには是非ノーマルに指にもリングを買ってあげて
欲しいものですね(笑)
耐えられるか……。
耐える彼を見守って頂けたらと思いますっ ( ̄  ̄)………( ̄ー ̄)ニヤ

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2012/04/03 22:45 | URL [編集] | page top↑
WLさま Re: くゃきゃあ~~(>▽<)
> キザいぞ木戸!!

バンバンヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆
確かにキザいです!!(笑)


> でも出来たの見た~い♪
> でも痛そ~~(>□<)。。。

私も見たいです~♪(え
残念ながら私にはその画力がなく…orz
そして次話に絵が間に合わないという…。
_l ̄l●lll ガクリ・・
すみません;;
いつかトライ出来たら致します!

はい、とても痛そうです(笑)
しかしきっと時枝なら喜んでくれるかと!(≧∀≦) ←

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2012/04/03 22:43 | URL [編集] | page top↑
拍手秘コメHさま
エライ成り行きになって参りました(;・∀・)
確かにとんでもなく痛そうです;;;
そしてご名答♪
そんなのが時枝くん、段々良くなってしまいそうです~( ´艸`)ムププ

あ、見てみたいですか!∑(°ロ°*)

しかし私の画力ではきっと表現しきれないかとぉー!(笑)
うおー私のバカヤロー!!
すみません(>ω<)
そういう時ササッと描ける絵師さん、すごいと思います。
ウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
次話には間に合いそうもないので、もしいつか挑戦出来たら……(*´∀`*)ゞ

拍手秘コメントどうもありがとうございましたe-415e-420
桔梗.Dさん | 2012/04/03 22:40 | URL [編集] | page top↑
にこらさま
> 普通にこわいっ(>_<)
>
> 刺青って痛いらしいのに…
>
> ぐろい……(*_*)

(-"-;A ...アセアセ
怖がらせてしまってすみませんっ;;
あまりグロっぽくは書かないつもりですが
もしダメそうでしたらスキップして頂いても大丈夫です!!


> しかし続きが楽しみだ(笑)
>
> こわいのは嫌だけどね(οдО;)

それでも続きを楽しみにして下さってありがとうございます(ノД`)・゜・
恐らく大丈夫かと!
時枝くん、木戸さんの前では一際ドM志望ですからっ!(笑)
でもご無理はなさらないで下さいね!!

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2012/04/03 22:31 | URL [編集] | page top↑
うわぉ~
大事な所に大事なリングとな…それは確かに勃起が必要になりますね~((苦笑
た、耐えられるのか!!?
みなとさん | 2012/04/03 12:03 | URL [編集] | page top↑
くゃきゃあ~~(>▽<)
キザいぞ木戸!!

でも出来たの見た~い♪
でも痛そ~~(>□<)。。。
WLさん | 2012/04/03 12:03 | URL [編集] | page top↑

普通にこわいっ(>_<)

刺青って痛いらしいのに…

ぐろい……(*_*)

しかし続きが楽しみだ(笑)

こわいのは嫌だけどね(οдО;)


にこらさん | 2012/04/03 00:53 | URL [編集] | page top↑

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