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悪魔と野犬ノ仔 1話

 拾って来たのは要だった。

 五年前の夏休みの日だった。当時十歳だった進藤要は自分の背丈の半分程もある太い木の棒を持って庭先から表へ出た。要の細く白い腕はとてもそんな重い物を持てる様には見えなかった。小さな身体と細い腕の少年、そして太い木の棒はとてもアンバランスだった。棍棒は傷だらけで、黒ずんだ気味の悪い色をしていた。
 太陽のフレアを一層感じるような熱さはジリジリと要の小さな身体を焼いた。
 要はズシリと重い棍棒を左手に持ち、引きずるようにして舗装されていない土壌の道を歩いていた。
 まるで時代に取り残されてしまったような壮大な山々に囲まれたその村には、意外と立派な学校や施設が点々とあった。
 明るく優しい兄の拓水と違って口数の少ない何を考えているか分からない要は、こうして一人で自然の中にいるのが好きな子供だった。
 要は川辺でギィギィ鳴いている小さな蛙を見つけると、それに近づき棍棒を思い切り地面スレスレにビュンと振り切った。黄緑色の蛙は一瞬にして鳴き声を消され、木端微塵に吹き飛ばされた。そしてその小さな生命の破片は、棍棒の側面にくっついた。
「あっはっはっは」
 ゾクゾクとした快感に、要はいつも高らかな笑い声を上げた。標的にとって自分が圧倒的な強さを振りかざした時の快楽を知ったのはいつだったかすら覚えていない。声変わりすらしていないこの時でさえ、既にこの遊びには手慣れたものだった。こうした要の奇行を目撃した近所の子供は要を悪魔、若しくはその白い肌と黒く艶やかな髪のコントラストのイメージから吸血鬼と呼んで近づこうとしなかった。
 要はいつものように草木を棍棒で削いでいると、真っ青な空に浮かぶ酷く白い雲に目を痛めて薄暗い山の中へと吸い込まれて行った。
 噎せ返るような深緑の匂いとコケと土の混ざった濃い匂いが息をする度、要の肺の毛細血管一杯に入ってきた。
 森の中では木々の葉が直射日光を遮ってくれるお陰で随分と涼しかったが、耳を劈くような蝉の叫び声が強烈で、要は「うるせぇッ」と無数に点在している蝉に向かって叫びながら木々を棍棒で殴った。
 要が“それ”を拾ったのはその時だった。
 大分奥地へと進んだ時、太い木の根元に大きな塊があるのを見つけた。大木の影が夜のような暗闇を作り出していて本能的な恐怖心からか、無意識にひんやりとした汗が出た。
 要は今でもよく覚えている。
 音を立てないようになるべく土の部分を選んで黒い塊にゆっくり近づくと、その黒い塊の大体が細い糸状の物である事が分かった。全体の大きさは粗要と同じ位ありそうだが、半分は未だ木の根元にある穴の中に入っていた。その汚い糸状のものは表に出ている部分を繭のように覆っていた。
 要は今までに感じた事のない恐怖感で、走ってもいないのに軽く息が上がった。
 恐怖と期待と好奇心で若干ハイになりながら、要はその長く酷く絡まった土塗れの糸の塊を棍棒で突いてみた。
「何だコレ」
 突いても尚動かないその塊に少し落胆した要は、少しずつ手で掻き分けその全貌を曝け出した。土色に汚れていたが細い首と肩が出てくると、それが人間だと認識できた。
「死体か?!」
 要の興奮は頂点を極めた。その喜々とした表情は、大きなカブト虫を捕まえた普通の小学生の表情と変わりない。
 要は“それ”を穴から引っ張りだすと、自分と同じ形の手足が出てきてそれが要と同い年位の人間の子供だという事が分かった。服は一切着ておらず、ひっくり返して見ると自分と同じ男性器が見えた事で男児だという事も分かった。
「きったね」
 ガリガリにやせ細った身体は骨の形が全体的に浮き出て、足の指の爪が異様に鋭く伸びているのに目を奪われた。主に使っていたのか、親指から薬指にかけては太く鋭くなっており、あまり使わない小指は伸び過ぎていて丸みを帯びたようにカーブしていた。何より奇妙だったのは、足が要よりも遥かに大きかった事だ。
 要は“それ”を担いで山を降りた。心境はまさにでっかいカブト虫を捕まえて持って帰るのと同じだ。
 家に持って帰ると拓水も親も当然驚いた顔をしていた。要はうろ覚えだが警察が来たりその子供を病院に連れて行ったりと皆困惑していたを覚えている。そしてそれの意識が戻るのならとその騒動を苛々しながら我慢していた。ただ、テレビ局が嗅ぎつけて来た時は五月蠅くて我慢が効かず、例の棍棒を持ち出しては襲い掛かろうとする要を拓水に後ろから身体を抱き抱えられて玄関の中に引きずり込まれた。メディア関係者たちはその異様な雰囲気の子供に気味の悪い恐怖を感じ、それ以上騒ぐのを自粛した。まるで理性のない動物が檻から出てきたかのように、狙いを定めた要の目を直視した大人たちは無暗に近づかなくなった代わりに一家を嘲弄し、記事にした。




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連載再開しましたぁ~!
初旬ギリって感じでしょうか(汗
なるべく(←強調)日を空けずに今までと同じ夜中0時にUP予定でございます。
今回はちょっと頭のイっちゃってるシリアスものですが楽しんで頂けたらと思います♪
また、ストーリー上若干事実では難しい設定の為ファンタジーテイストが入っておりますが生温かい目で見守って頂けると幸いです(´∀`*)
そして今更ですが、予告記事にまで沢山の拍手頂いてしまってありがとうございましたッ(涙

22:00 | 悪魔と野犬ノ仔 | comments (2) | trackbacks (1) | edit | page top↑
悪魔と野犬ノ仔 2話 | top | 悪魔と野犬ノ仔

コメント

秘コメSさま Re: はじめまして。本当に楽しみにしておりました。
初めまして!いらっしゃいませ。゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚

おぉぉ…Sさま首を長くして待って下さっていたので!!
ありがとうございます!!(涙
そんな事仰って頂けて本当に嬉しいです!
がんばって良かった。。(しくしく

はい!
取り敢えずはこの作品を完結させられるように頑張ってゆきます!

コメントどうもありがとうございました
e-415
桔梗.Dさん | 2013/05/20 21:45 | URL [編集] | page top↑
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さん | 2013/05/20 02:10 | URL [編集] | page top↑

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真夜中のユートピア 悪魔と野犬ノ仔 1話
2013/10/19 (Sat) 18:40 | グッチ バッグ
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