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悪魔と野犬ノ仔 2話

“それ”は人だったが、山に捨てられた子だった。
 後に調べで分かった事だが、水商売をしていた母親が客の子供を妊娠して生んでしまったとの事だった。女は子供を幼稚園にも行かせず家に置いていたが、小学校に上がる前に新しい男が出来て、つい「子供はいない」と言ってしまった手前、山に置いて来たのだという。
 豊かな自然に囲まれている要たちの村は、大きな森の中に人間が住まわせて貰っているような場所だった為、山奥に捨てられたら探すのは容易ではない。
 その子供は幸か不幸か野犬に見つけられた。
 子犬を産んだばかりの母犬に見つけられたのが良かったのだろう。その母犬は腹を空かしたその子の前で、乳の張った腹を見せる様にゆっくりと横になったという。
 子供は目の前で乳を旨そうに吸う他の子犬を見て、夢中で自分もそれに吸いついた。そこから、母犬はその子も自分の子犬と一緒に育て始めた。たまにニュースでやる事件でそういうのがある。“それ”も例外ではなかった。
 普通なら、保護をしてもストレスや無理強いですぐに死んでしまう例が多い。だが、“それ”の場合は人間形成に必要な時期を多少なりとも人間社会で過ごしたお陰なのか少しは違ったようで、意識が回復して元気になると、最初は怯えて部屋をうろつき隅で丸くなったり歯を剥きだして警戒もしていたが、時折助けを求める様に人の顔を窺う一面も見せるようになった。
 何より驚いたのは、ある程度言葉を理解出来ていた事だった。犬に会うまでコミュニケーションを取っていた事と、犬と過ごした期間が二年弱という短さだったからではないかという専門医の見解だった。

 暫くして、“それ”が元気になってから病院に会いに行った時だった。未だ隔離室でガラス張りの部屋でしか見れなかったが、要が単純に驚いて目を奪われたのは、“それ”の顔だった。
 見つけた時は、泥に塗れ、長く伸びきった髪の毛は絡まって幾つも玉のように固まって妖怪のようだったのが、それは想像だにしない美しい顔になっていた。
 泥と垢で真っ黒だった皮膚は人並みに白くなっていた。色素の薄い赤茶色の大きいハッキリとした二重の瞳は誰もが魅入ってしまう力強さがあった。丸みのある額からスッと伸びた形の良い鼻筋とふっくらとした頬が一瞬性別を勘違いしそうだ。その違いに要だけでなく拓水も両親も、そして誰もが驚くものだった。
 多くの人間がガラスの向こうに現れた事で驚いた“それ”だったが、一瞬要と目が合った途端、大きな瞳を一層大きくしてからサッと視線を逸らして部屋の隅へ逃げた。
「へぇ」
 要は黒々とした切れ長の眼を“それ”に痛い程突き刺しながら口角を上げた。

 大人たちが“それ”をどうするか揉めていたが、要は何としても『アレ』を手に入れたくてその時だけは要自身、笑える程よく喋ったのを覚えている。
 要は珍しく自分から拓水の部屋に訪れ、
「あの子がうちに来てくれたら、俺きっと明るくなると思う」
「本当か? 要……」
「うん。俺アイツと友達になれると思う。それに、犬とか欲しかったし」
「要、あの子は犬じゃないぞ」
「あ、うん。そういう意味じゃなくて」

(おっと、いけね)

 要は誤魔化しながらもいつもの死んだような目ではなく、ごく普通の弟の目をして拓水に頼った。
 要が初めて兄を慕うような態度を取ってみると、拓水はいとも簡単に感動すらし出した為、拓水から親に頼むようにお願いした。
 その時に限っては、要は自身、役者にでも向いてるんじゃないかと思った程だ。
 その甲斐もあってか、結局暫く病院に預けた後にどうにかこうにか要の家で養子として引き取る事になった。
そして要は自分が拾って来た“それ”に名前を付けた。

“水無月”。

 七月に入っているのに何故水無月と名付けたかと親にも聞かれた要は、「だって梅雨明けだし……丁度雨が日上がってる時にコイツ拾ったから。ぴったりだと思って」と答えた。
「本当に変なところに変な知識のある子ねぇ」
 そう要の母親は呟いていたが名前が可愛いと単純に気に入った。
 小学四年生にしては野山で遊ぶ以外にやたらと本を読み漁っていた要は下手をすれば拓水と同じ位に漢字も読めた。
 そして程無く、水無月は要たち進藤家の一員となった。





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次の予約投稿したつもりが日付間違えて前倒しに公開されるという…orz
久々過ぎてうまくコントロールができない。。

00:00 | 悪魔と野犬ノ仔 | comments (2) | trackbacks (1) | edit | page top↑
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コメント

けいったんさま Re: 連載開始~♪
> 要が持つ狂気さに 怖さより不気味さを感じた!
>
> 要が拾った「アレ」が、今後 要や 要の家族と どんな風な関係を築くのか すっごく興味魅かれますね。
> そして 要の狂気が どうなって行くのかも!

不気味な男児が初っ端からやらかしてまして冷や汗です(笑)
彼の広いものの「アレ」。
どう家族に関わってくるか興味を持って頂けて嬉しいです☆
要たんの怖い性格、私も心配です(笑)


> 5月の開始との事で いつから?いつから?と、何度も訪問しながら 待ってました!
> 嬉しい~♪v(≧∇≦)v イェェ~イ♪...byebye☆

お待たせしてすみません!
何度も訪問して頂いてありがとうございます(涙
やっと開始出来る事が出来て私も嬉しいです!
がんばります^^

コメントどうもありがとうございました
e-415
桔梗.Dさん | 2013/05/11 17:24 | URL [編集] | page top↑
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さん | 2013/05/11 10:25 | URL [編集] | page top↑

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真夜中のユートピア 悪魔と野犬ノ仔 2話
2013/10/19 (Sat) 18:40 | gucci 財布
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