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悪魔と野犬ノ仔 9話

 拓水はよく焼けた筋肉質の腕を組むと軽く溜息をついた。
 昔から要には従順にしている節のあった水無月だが、拓水から見ればそれは不自然に見えた。要も変わり者だった為、変わり者同士の付き合いはあんな感じなのかと思っていたが、やはり常軌を逸している。
 普通の兄弟や友達は、ああいった様子を窺いながら陶酔したような態度を取らない。何か怖い思いでもして苛められる等しないとそういう態度にはならないんじゃないかと拓水の懸念は深まっていた。

(水無月の犬っぽさが治らないのは要が面白がって強要しているからなんじゃないのか)

 兄の目から見ても昔から要はそれは可愛かった。可愛いというよりも生まれながらにして持っている色気というものがあった。まだ言葉もあまり話せない程幼い頃の要を、拓水は観察するように要の顔をずっと見ていた記憶がある。まだほんの小さな子供なのに、要の作る何気ない表情や仕草、目線などには既に妖艶さの欠片が備わっていた。
 黒々とした髪と睫毛が要の肌をより白く強調しているようだった。可愛くて幼い要を膝の上に乗せると、特に反応もなくじっと下から拓水を見上げていた。あの時要は何を考えていたのかは知らないが、どこの時点からおかしくなってしまったかが分からない。
 拓水は一度要とゆっくり話し合いをしないといけないなと思った。

 拓水は家族には言っていなかったが、先月少し腰を痛めてしまっていた。
 プロのスポーツ選手になろうと本腰を入れ、将来の道筋も見えていただけあってその不安は予想以上に大きいものだった。単身赴任中の父親にだけ相談はしたが、やんわりと別の道も勧められた。
 拓水は身体作りをしながらも人一倍勉強をして成績を上位に留める努力家だ。要がいい成績を取り周りから褒められているのを見ても動じる事はなかった。というのも、山で訳の分からない事をしながらそれ以外は家に引き籠って勉強をしていた要がいい成績を取るのは当たり前の事だと思っていたからだ。
 社交性もなく、簡単に人や生き物を傷付ける事の出来る問題児を拓水は若干厄介にすら感じていた。
 男子高だった拓水の高校は町はずれにある為通学には少し時間がかかった。
 むさ苦しい高校生たちは皆体格もよく、今時珍しい程爽やかに目標に向かって頑張る生徒で溢れていた。

「拓水、お前今日練習大丈夫なん?」
 仲の良い同じクラスメイトの山田が拓水の身体を気遣う。
「ああ。暫くは一応試験期間だしな」
「あー俺全く勉強してねぇからヤベェわ。拓水教えてくんね?」
 山田は大袈裟に嘆く様な格好をして頼ってきた。そんな明るい彼が拓水は好きだった。
 だが今日は別の約束があった。
「悪い、また今度教えるよ。今日はちょっと先約があって」
 拓水は気恥ずかしげに視線を横にずらし頭を掻いた。その様子に感づいた山田はニヤけ顔をグイと近づけてきた。
「はー……分かった。あの告白してきた子だろ? 何、もう付き合ってんの?」
「まぁ……そんなところだ。また詳しくは今度話すよ」
 この間別の学校に通う公立の高校の女子生徒から帰り道に声を掛けられたのだ。清楚な感じの女子生徒は高山さんといった。
 高山さん曰く、毎日同じ電車に乗る度に見かける拓水が気になりだし、偶に校庭で練習する拓水を見ているうちに好きになったのだという。
 まともな恋愛などした事のない拓水は浮足立った。精神的に落ち込んでいた時期というのもあってか、高山さんと一緒にいると嫌な事を忘れられた。そんな経緯から付き合う事になった。
 リハビリ程度の軽い練習を終えた拓水を待っていた高山さんが笑顔で手を振っているのが見えた。

「拓水くんっ、お疲れさま」
「ごめんね、待たせて」
「ううん」
 女の子と話す話題のよく分かっていない拓水はいつも高山さんの話しを聞く役に回っている。とにかく小鳥の囀りのような女子の声が新鮮だった。
 高山さんの家は拓水の駅より一つ先だ。いつも時間のある時は拓水の最寄り駅で降りて少し話して別れている。ただ、今日は母親が祖母の具合が悪いからと家を空ける日だった事を思い出した。
「高山さん、ちょっとうちでお茶でもしていかない? 丁度親もいなくて」
「えっ」
「あっ、いやっ、兄弟は二人いるから別に誰もいないって訳じゃないんだ! ごめん、変な言い方して! ただ、もう少しゆっくり話しが出来るかなって! 親とか居ない方が気も楽だろうし!」
 焦って大きな身体を動かす拓水が可笑しくて高山さんはクスクスと笑った。そして少し恥ずかしそうに言った。
「私、嫌じゃないよ」
「……え?」
「拓水くんとだったら……いいよ」
「……!」
 ここから先は殆ど会話はせずにただ手を繋いで家に向かった。




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