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悪魔と野犬ノ仔 14話

「要くん……あの……進路の事なんだけど、どうするのかしら。あなたの実力だったら都内の良い所へ行けるし……先生、推薦もしてあげるわよ」
 媚びるようないやらしい目つきで、担任である女教師は座る要の前でモジモジしていた。最近めっきり飽きられた女教師は、この年下の子供に調教された事がいつまでも忘れられずにいるようだった。
 そろそろ中学の卒業というイベントと同時に高校受験に取り組まないといけない時期に差し掛かった。見渡せば周りは必死に参考書を持ち歩いて眼の下にクマを作っている。まるでゾンビの集団だ。
「そうですね。東京の高校へ行こうかと思います」
「え……東京に……そう……。じゃあ親御さんともお話しないとだね」
 女教師は少し寂しそうに諦めた表情を作った。
 
 要は違和感を感じていた。早く自立をしたいという焦燥感が成長するにつれ強くなってきていた。今まで親の庇護の下暮らし、一応に感謝の気持ちはあれど早く離れたいという思いが日に日に募っていた。自分でもハッキリとした理由は分からず、取り敢えずの理由として社会を学び自立した大人になりたいからと言う事にした。

(拓水も俺がいない方がいいだろう)

 要は、水無月はきっとこのまま住み慣れた田舎でゆっくり余生を過ごすだろうと思っていた。要が偶に帰って来た時に水無月が居て、自然に囲まれたこの空気が吸えるのも案外幸せかもしれないなどとサラリーマンの様な事を考えていた。
 勿論水無月と離れたくなかったが、同時に離れないとならないという強迫概念にも似た感情が胸の奥に水蒸気のようにモワモワと渦巻いていた。
 家族の事も結構好きだ。それを自覚する度に感じる罪悪感と内側から冷却されるような冷めた自分がいた。内側が寒い時は、水無月に触れて温まっていたが離れてしまえば寒さは通り超せるのか、それとも麻痺してしまうのか、要にも分からなかった。

 家に帰ると、母親に高校は東京の方を受験したいと打ち明けた。
「え……。ダメよ、どうして? そんな遠くに行かなくてもいいじゃない! まだ高校生でそんな東京なんて……ダメよ!」
 意外だった。普段心配性な位ではあったが、こんなに要の事で反対する事は無かった。話し合いをしていると、丁度単身赴任から帰って来ていた父親が母親と話し合いをすると、要はリビングを追い出された。
「ねぇ、アナタ。駄目よやっぱり。心配だわ」
「いや、大丈夫だろう。もう高校生にもなるし、近頃は随分と落ち着いて大人になってきた。気性だって昔程荒くはない」
「でもッ……東京には色んな人や、危ない場所だってあるし!」
「母さん。要は男の子だ。自立しないといけない時は必ず来る。ちょっと早いけど、何かあれば俺たちが直ぐ行ってやればいい」
 母親は深い溜息をついた。俯く様な姿には疲れが滲みが出ていた。
「お兄ちゃんもね……あんなになっちゃうなんて思ってなかったら……要がきちんと高校へ行ってくれるのは嬉しいけど……」
 拓水はあれきり部屋を出ない生活を続け、学校にも行かなくなってしまった。
 今時珍しく真っ直ぐ育った拓水を知っているだけに、親としては余りにショックな事だったようだ。
 だが要には罪悪感など一切無かった。寧ろ愛着の念すら湧いていた。違う自分と向き合って煩悶する人を好きだと思う。そこから人間の色気の様なものが出てくると思うからだ。
 母親を説得した父親が要を呼びにきた。
 許しが出たついでに少し拓水の事も話題になったので、要は穏やかな笑みを浮かべて言った。
「拓水は大丈夫だよ、母さん」
「要……」
 要からそんな労いの言葉が出てくるとは思っていなかった母親は感動するような眼をして涙を薄く浮かべた。
「まだ先だけど……本当、気を付けてね……たまに帰って来るのよ?」
「早いよ……母さん」
 要と父親が苦笑いをしながら母親を宥める。こんな穏やかな空間の時でも、要は幸せだと感じると決まってその場から逃げたくなる。
「そういえば水無月には俺が東京へ行くって事は内緒にしておいてくれない?」
「え、どうして?」
「ほら、アイツ俺にべったりだろ? 騒ぐかもしれないからさ。俺が東京に行ってから言ってよ。暫く元気ないかもしれないけど、慣れると思うからさ」
 水無月のいない生活を考えただけで要自身も少しガッカリする。水無月程面白いものが果たして東京や社会にあるのか分からなかったが、それを確かめる良い機会だと思った。 そしてこれで水無月に固執して壊してしまないで済むという安堵感も少しあった。




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拍手コメントして下さったJさま
大変申し訳ございません!
ちょっと機能の一部の不具合によりメッセージが飛ばず至急直して頂きました!(>ω<)
応援メッセージ下さったのに直ぐにお返事返せなくてすみませんでした。
しかも14万Hitまで教えて下さったのに…。゚(。ノωヽ。)゚。
遅ればせながらお返事書かせて頂きました!
そして驚愕のHit数に本当に感謝しております!!!皆さまありがとうございます!!


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