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悪魔と野犬ノ仔 46話

 水無月は狭い部屋でウロウロしながら要の帰りを待っていた。時折気を紛らわす為に蹲ってみたり水を飲んでみたりしていた。
 いつ帰って来るか分からなかったが、毎日毎日家の中にいる間はこうしてウロウロと落ち着かない様子で待っていた。学校やお店に行っている間は帰って来た事を想定してちゃんと置き手紙も置いていた。だが、電話を貰ってから要は未だ家には帰って来ていなかった。東京にはいる筈だったが、なかなか戻って来ない要をただ只管信じて待っていた。
 この日も、水無月は夜中になっていたがベッドには入らずリビングの所でブランケットに包まりながらウトウトして待っていた。物音が聞こえる度にパッと顔を上げて神経を集中させる。
 遠くから微かな足音が聞こえてきた。とても静かな足音で、普通の人間では気付かない程の音だ。自然と気配を消す様にして歩く水無月と同じような歩き方は、水無月の中で一人しか知らなかった。
 水無月はバッと起きて玄関まで走ると、全神経をドアの向こうに集中させて息を止めた。
 カチャリ、とドアが開くと、懐かしい要の顔が覗いて「ただいま」と声が聞こえた。
 水無月は全身で喜びを表すように四つん這いになってキュンキュン鼻を鳴らしながらグルグルとその場で回った。抱きついてはいけないと思っているので喜びを発散させるように物凄い勢いで一旦リビングまで駆けると、また玄関まで勢いよく戻った。
「ミナ。近所にうるさいから走るなって」
「に、兄ちゃんっ!」
 水無月は嬉しくて静かに這い寄りながら要のつま先辺りで“伏せ”をしながら鼻先を少しだけ要の踝辺りに付けた。
「心配かけて悪かった……拓水の所に行ってたんだ」
 水無月はそのままの体勢で静かに要の声を聞いていた。
「ミナ」
 要は水無月の頭に触れようとした自分の左手を途中で止めてスッと水無月から離れた。
 水無月は不安そうな目で要を見上げた。
「お土産、買って来たから」
 要はそう言ってリビングへ向かうと、水無月はそのまま静かに立ち上がって要の後ろへついていった。
 要は北海道のお菓子や海の幸の食べ物を並べて、ついでに途中で買って来たビールも一緒に並べた。
「お前、酒は飲んだ事あるのか?」
 要が水無月に向かって聞くと、水無月は「ない」と少し興味深気にビールの缶を覗いた。
「少し、飲んでみるか?」
「うん」
 要がビールの缶を開けて水無月の前に置くと、水無月はクンクンと開いた口の所から匂いを嗅いだ。
「なんか、良い匂いがする」
「ホップ好きの犬か。変わってんな」
「ほっぷ?」
「まあいい。乾杯」
「かんぱい」
 要の真似をして水無月も缶を持ってコツリと缶を当てて一口飲んだ。
 甘くもなく、辛くもないが飲んだ後に少し苦みが舌に残る感じがして顔を歪めたが、鼻にホップの爽やかな香が広がるとそれが意外と気に入って水無月は少しずつ飲み続けた。
「お前、結構酒好きかもな」
「なんか……おいしくないけど、キライじゃない気がする」
 水無月は両手で缶を持って一生懸命味わっていた。
 要はそんな水無月が可愛くて抱きしめたい衝動に駆られたがグッと堪えた。
「俺、お前にまだ触れないんだ」
「……」
 水無月は缶についた水滴を指先につけながら何も言わずに黙っていた。
「でも、本当は抱きたくて狂いそうなくらいなんだ……それに、一緒にいないと多分、駄目なんだ……矛盾しててよく分かんねぇけど」
 要はグッと残りのビールを飲み干すとグシャっと缶を潰した。
「兄ちゃんは汚れてないよ」
 要は水無月を見た。透明感の強い茶色い瞳は宝石のように綺麗だった。
「大丈夫。僕が兄ちゃんを綺麗にしてあげるし、僕はこれから動物も、兄ちゃんも助けてあげる」
 水無月の白い手が要の頭に伸びると、要は思わず身を引こうとした。
「逃げちゃだめだよ」
 力強い水無月の声が要の身体を縛り、固まった。水無月の柔らかい掌が要の頭に触れると、水無月の腕に黒い蛇のようなものが撒き付いて行く様なイメージが見えて途端に水無月の手を振り払おうとした。
「兄ちゃん。ほら。僕が触った所から段々黒いのが薄くなって消えていくよ? 分かる? ……大丈夫。僕の手はこんなに白いよ」
 水無月の笑顔で要の心臓の鼓動が落ち着きを取り戻した。水無月の腕を見るととても白く綺麗なままだった。
 水無月は「ね?」と太陽のような笑顔のまま優しく要の頭を撫でた。




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00:00 | 悪魔と野犬ノ仔 | comments (2) | trackbacks (0) | edit | page top↑
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コメント

秘コメMさま Re: 一気読み→放心(゜o゜)
Mさまあああ!!+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
覚えていますとも!!
ご無沙汰しております!
またお会い出来て本当嬉しいです。
この猛暑日の続く最中しかも一気読みまでして頂いてありがとうございます(涙

この暑さですもの。
私もぼんやりとしていてヨダレたらしそうになります(笑)
この秘境の館にコメントが遅れるなど時間の概念はございませんので
ご心配なさらず(*´∀`*)
頂けただけで十二分に嬉しいです!

ああ……あぁ……
やはりこのコメント、Mさまだなあって思います。.。゚+.(*´д`*) ゜+.゚
私の作品をいつも素敵過ぎる程リニューアルさせて頂けるその能力。。
拝借したいです(笑)
思わず「そう! 伝えたいのはそういうところ! ああ! なぜこのように表現しなかったかワタシめ!」
と唸りました(笑)

今回は秘コメなので頂いた内容を引用出来ないのが寧ろ勿体ない程ですが(>_<)
でもそうですね。
記憶の抜け落ちた部分に無意識に悪魔が巣食っていたのだと思います。
そして人の恐ろしさで歪んでしまった彼が人以外として育った水無月によって救われる事を私も願っています。

私もミナが犬式にじゃれる所がとても好きです(´∀`*)
Mさまにも好きだと思って頂けて良かったです。

犬は相手がどんな見た目でも、過去に何があろうとも関係なく今の雰囲気を察知して来るのが時には人にとって救いだったりしますよね。
おお。Mさまもずっと犬を飼われていたのですね!
私も日本にいる間は犬を飼っていました。外国では猫科の大型猫という例外もりましたが。。
犬がずっといると本当に家族という感覚になりますよね。

昨年末にですか…。
それはお辛いですね。
身近な者を亡くす悲しみは記憶が濃い程いつでも強烈に襲ってきますよね。
何事にも身が入らないようなそんな感じは少し理解が出来る気がします。
私も、私ごとですが昨夜祖母が亡くなりました。
普通祖母というと、あまり関わりのない感じですが私の場合生まれた時からずっと共に暮らしてきて、
親が外国にいる間はずっと祖母と二人暮らしだったんです。社会人になってからも。
世界で一番嫌いな時期も長くありましたし、本当に親と同じ位関わりの深い人でした。
だから意識が朦朧としていた時も只管私を呼んでいましたし、顔を見れば苦しい筈なのに嬉しそうに笑顔を見せるという少し変わった関係でした。
こういうタイミングでMさまからこのようなお話を頂いて何だか偶然だけではないものすら感じました。
確かに悲しむ時間も必要ですが、楽しかった時間を思い出し、憎たらしかった時間を思い出し、前向きに生きて行く事も大切なのかなと思います。
時間が経てば傷が癒えるというのは人間の特権だと聞いた事があります。
Mさまもまだまだ悲しみが癒えたとは言い難い時期だと思いますが、共に今を楽しんで生きれるように頑張りましょうね。

ブログ村、今どうなっているのやら…[壁]д・)
と、思う程全く訪れずそんなに様変わりしているとは!(°ロ°*)
何だかそれも寂しいですね。
今は今でまた良いのかもしれませんが、自分の知ってる村の感じや人間関係があっただけについそう思ってしまいますね(^_^;)
そんな中で心弾ませて頂けて本当に嬉しいです(涙
なにか、今回随分と間を開けてからの連載だからか、物語中心であまりBLの要素が少ないなと思いますが生温かく見守って頂けたらと思います(*´∀`*)

沢山のお話書いて下さって久々にお話出来た事もあり、私もとても嬉しく思っております!
またお時間のある時いつでも遊びにいらして下さいね♪

まだまだ猛暑日が続きそうですのでお身体ご自愛なさって下さい(*´∀`*)

コメントどうもありがとうございましたe-415
桔梗.Dさん | 2013/07/16 19:06 | URL [編集] | page top↑
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
さん | 2013/07/16 12:00 | URL [編集] | page top↑

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