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ミルフィーユ 3

「へぇ、結構きれいにしてんなぁ」
 というか、大分綺麗にしている。俺の一人暮らしの部屋とは大違いだ。
 8畳ほどの広さの1DKはシンプルに整頓されており、なんの匂いか分からないがいい香りがした。
 俺たちは買い込んだ酒とつまみを机に広げてテレビをつけ、再び飲み出した。
「ねぇ、俺が爽太お持ち帰りしちゃって女子に悪いことしちゃったね」
 悪戯っ子みたいに笑う江角はアルコールで頬が桜色になっていた。

ーーあぁ……もう、可愛いな!

「なぁ、江角は彼女いんの?」
「んー、今はいないよ。三年前くらいはいたけど」
「へぇ」
 江角が彼女と付き合う想像をすると、どうしても女同士のお買い物のイメージが浮かんでちょっと笑えた。
「何笑ってんの」
「いや、別に」
 かと言って、オカマ、と言ったら偏見になるだろうが、女みたいだとも思えない絶妙な中性感がある。不思議な奴だ。
「そういえば俺ら、大学の時は別に仲良いって程仲良くはなかったよな」
 俺はふと思い出して言った。
 そうだ。適度に喋るが特に仲が良かったわけじゃない。
「そうだね……でも俺、今日はなんだか爽太ともう少し一緒に居たい、って思った」
 江角はそう言ってビールを一口飲むんで間を置き、そして俺をチラリと見た。

(ヤバい。ヤバいヤバい。これはおかしいだろ……。よく考えろ、相手は男だ)

 女だったらもう有無を言わさずキスしている雰囲気だ。江角の表情も態度も、誘っているとしか思えない。
 俺自身、期待してたとしか言いようがない行動だ。故意的に別の路線に乗った自分をイメージした。
 だが、抗えない引力が江角にはある気がした。それは6年前より遥かに強大な魅力となっていた。消えそうな理性を手繰り寄せる為に、俺は胸のポケットのタバコを掴んだ。
「悪い、換気扇の下貸して」
 そう言って立ち上がると、ふとラックの上に同じ銘柄のタバコを見つけた。
「それ、友達が忘れてったやつなんだ」
 俺の視線に気づいた江角が俺の疑問に答えた。
「ああ」

(落ち着け。一先ず一服して、なにか楽しい話をしよう。そうだ。それで寝ちまおう)

 俺は少し冷静になるとまた江角の隣に座った。
 他愛のない話をしているのに、楽しい。それに、横で笑う江角がやっぱり可愛くてずっと見ていて飽きない。
 江角も先程まで時折見せていた色気のある顔を見せなくなった。普通に話していも趣味も合う事がわかり、話がとても盛り上がった。江角は思っていたよりもサッパリとした性格で、ノリもよく普通に男っぽかった。

ーー俺は本当に今までコイツの事をよく知らなかったんだな。

 もっと早く中身を知っていれば大学時代から仲良くなれたかもしれないと、少し後悔した。

 そして丁度変な緊張も取れた時だった。俺は悪ノリをしたんだと思う。さっきまでだったら絶対にしないような質問をしてしまった。
「江角ってさ、男イケるの?」
 俺は、江角はてっきり笑いながら去なす事を想像していた。だが、江角は口に笑みを浮かべたまま、目は合わせずに答えた。
「そうだね。俺は、男も女も愛せるよ」

(え……え?!)

「え……あー…そうなの? え、バイ…ってこと?」
 何となくマズイ質問をしてしまったと焦り始めた。
「うん。そうみたい」
 江角はずっと視線を酒の缶にだけ合わせて答えていた。
「そうみたいって……」
「大学の時は違ったんだ。多分ね。気づかなかったというか。卒業して少ししてからかな。気づいた…っていうか、気づかされたというかね。へへ」
 俺の方を漸く向いて笑った顔がとても寂しそうに見えた。俺は表現できない衝動に駆られそうになった。
「びっくり? ……それともやっぱり、って感じ?」
 今度はまっすぐ俺を見た。
 嫌悪感はーー全くなかった。
「驚いた、けど。でも納得というか……そんな感じかな」
 俺は正直に答えた。





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